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陸遜は高校生だった。2年生の6月、陸遜は一人別荘のある県に来ていた。

陸家と言えば代々優秀な医者が誕生する名家である。いくつも別荘を抱えているが、毎年夏に訪れる避暑地を陸遜は最も気に入っていた。夏に快適に過ごすために掃除をしに行きたいと両親に懇願し、一人で向かうことにした。

テスト終わりの金曜に発ち、日暮れ手前で着いた。年に3回外注しているプロの手により綺麗に整えられた別荘は、ちっとも汚れていない。さっと埃を払って、表向きの目的は達成されたが好奇心旺盛な年頃である。一人というだけで楽しいものだ。電気もガスも水道も完備の家で、陸遜は明日に備えていそいそと早寝をした。

早朝。散策の開始である。食料や水など最低限必要な物はリュックに詰め込んできた。茸や草花の観察を続ける内に登山口に出た。この辺りでは有名は独峰だが、一度も登ったことがない。登山靴ではないものの性能の良い運動靴である。一瞬ためらったものの陸遜は足を踏み入れた。

陸遜は勉学を好むが、運動神経も良い方だ。体を動かすことは好きで、体力もある。難なく6合目の水場に到達し、休憩していると熊鈴の音が聞こえてくるようになった。視線を向けると、一人の登山客が水場に現れた。

「おはよう。一人か?」

爽やかに微笑みながら挨拶され、陸遜は慌てて立ち上がった。陸地ではなかなか行きずりの人と会話することはないが、相手はとても気さくそうに見えて力が抜けた。大自然の中の解放感も相まって、そのまま陸遜も柔らかく呼吸する。

「はい。実は勢いでして、初めて登っています」
「はは、若いな。高校生か?」
「高2です」
「そうか。俺は大学3年だ。部員と登る予定だったんだが、急遽一人になってな……ドタキャンの怒りでそのまま荷物を持ってきてしまった。見てくれ、このザック」

男が背負っていた大きなリュックを下ろす。着地の時にずっしりとした鈍い音が鳴る。興味本位で陸遜が指をさすと朗らかに笑って頷かれた。試しに背負って見て、ひっくり返りそうになり妙な声が出た。

「お、重たいです」
「2泊分の手分けして持つものを、全部詰めてしまったからな」
「これで上まで行かれるのですか」
「トレーニングと思うことにする」

陸遜が必死に下ろした荷を、男は軽々背負い直した。捲り上げた腕の筋肉や体毛が自分にないもので、陸遜は同性としてその肉体を羨ましく思った。なかなか日に焼けず、筋肉も付きづらく、体毛も薄い自身が少し気になっていたのもある。
男は豪快に水を飲んだのち、おっさんの独り言に付き合わせて悪かったな、と先に行こうとしていた。それを、ザックの紐を勝手に掴んで引き留める。

「一緒に登ってもよろしいですか?」

初対面の人ともう少しいたいと思ったのは初めてのことだった。だが、優しい顔つきと朗らかな声かけ、何より山に詳しそうなところに惹かれた。より見地が広がりそうだという好奇心もある。
男はきょとんとしたようにまばたきしていたが、すぐにくしゃっと顔を崩して笑った。手を差し出してくれ、慌てて握手をする。

「俺は呂蒙だ。荷は重いが、登るのは早いぞ。付いて来れるか?」
「呂蒙殿……ありがとうございます!陸遜と申します。精一杯、頑張ります」
「まあ、そう身構えるな。景色や空気を楽しみながら行こう」

呂蒙はあの重たい荷物を持っているとは思えないほど軽々と足を運んだ。陸遜こそ身軽なのでついていくのに苦労はないが、登りながら動植物のことを教えてくれて素直に驚いた。自分より博識な大人は、時々振り向いて陸遜の様子を確認するように歩いたり止まったりしてくれる。しっかり者だと言われることの多い陸遜にとって、ここまでまめに気にかけてくれる人は貴重だった。父親とも教師とも違う、頼れる年上の男性。あっさり懐いた自分にも驚く一方である。

3度目の水場で休憩していると、スマートフォンを眺める呂蒙の顔つきが怪訝になった。

「天気図を取った時より、風が悪化している」
「確かに、下にいた時より随分強く感じます」
「森林限界も近いしなぁ。ガレ場は危険だろう。山頂を諦めて引き返すか」

経験の多い呂蒙の言葉を拒否できるわけがない。陸遜は内心で残念がっていることに気が付いた。山頂への心残りというより、この呂蒙という男ともう少しいたい、という率直な感想であった。

「呂蒙殿に従います」
「よし。陸遜、しっかり行動食は食べたか?下りは結構きついぞ」
「はい。摂りました」
「慎重に下りていこう」

本格的な登山をあまりしたこのなかった陸遜は、早々と呂蒙の言葉の意味が分かった。登るときよりじわじわと足に負荷がかかる。足の踏み場を考えながら進むのも大変だ。だが、呂蒙の大きなザックや頭を見下ろしながら行くのは、上りと違う景色で少し楽しかった。

「……下山したら、そのままお帰りになられるのでしょうか」
「結構な遠方から来たんだ。さすがに今日すぐ帰るのは難しいな。車中泊する」
「あの、でしたら」

今晩、陸遜は別荘に一人だ。絶好の機会を逃す訳にはいかない。
好機に気を取られた陸遜は、急激に視界が振れるのを感じた。

「陸遜!」

己に何が起こったのか、しばらくは分からなかった。体中に痛みが走り、地面にぶつかる鈍い音があちこちで鳴る。勾配のある法面を転がっていったのだと分かったのは音が止んでからだった。
下りは慎重に、と呂蒙から釘を刺されていたにも関わらず、浮ついた思考で滑落するとは情けない。陸遜は痛みに呻きながら泣きそうになった。

「陸遜、大丈夫か!」
「呂蒙殿、すみませ……」
「あぁ、良かった、無事か。謝るな。誰でも起こり得ることだぞ」

心底心配そうに言ってから、呂蒙は宥めるようにフォローした。優しい声色が沁みていく。呂蒙が次々と体の状態を気にかけてくるので、陸遜も少しずつ確認していった。頭や首は回しても大丈夫そうだ。手首をぷらぷら振り、無事なことに安心する。最後に足を持ち上げて足首を回すと、鋭い痛みが走った。

「左の足首を痛めてしまったかもしれません」
「むぅ、足か。少し触るぞ、いいな?」

陸遜が頷くとすぐに呂蒙はその足を取った。靴と靴下を脱がせる。空気に晒されて冷たく感じる足を陸遜も同様に眺めた。まだ腫れは見えないが、動かして痛むとなると捻挫は間違いない。骨折まではしていなさそうだと冷静に判断した。

「恐らく、捻挫です。痛みの程度を考えると、軽度ですが」
「今平気でも後から来るかもしれん。湿布があったはずだ。テーピングもしよう」
「ご迷惑をおかけします……」
「なに、気にするな。一人で登っていなくて本当に良かった」

朗らかに笑う顔に心臓が跳ねる。そこは痛くも痒くもないのになぜか疼くような感覚だ。滑落の恐怖も驚愕も終わったはずなのに、鼓動の音は落ち着かない。呂蒙が手際よくザックを漁るのを見ながら、陸遜は一人うろたえた。心機能に何かあったのではと疑うほど動悸が激しい。

落ち着くために、自身で出来る処置を取ることにした。汲んでおいた水を手持ちのタオルにかけ、靴を脱いで足に張り付ける。背負っていたリュックを足の置き場にして高くした。両親の職業柄か、日常の怪我の応急処置は常に頭にある。
大きなザックから救急セットを取り出した呂蒙が感心したように唸った。

「冷静だな。ライス処置も完璧だ。運動部か?」
「よく助っ人では行くのですが、帰宅部です」
「意外だな。サッカー顔してるぞ」
「ふふ、なんですか、サッカー顔って」
「ん?あるだろう。丸刈り焦げ顔は野球、真っ白ムキムキはバスケ、背が高くてシュッとした奴はバレー、といったところだ」

呂蒙の軽快な話しぶりに陸遜は思わず空を見上げて口を開いて笑った。同級生との会話でもこんなに笑ったことはなかった。その間にも呂蒙は手際よく陸遜の足に湿布を貼り、テーピングテープを巻き付けた。軽口が不安がらせないようになのか、特に意図もないのか、その判断は陸遜には付かなかったが、呂蒙の温かさが足の痛みを忘れさせてくれた。

「よし。ガチガチに巻いてみたが、きつくて血が止まってはいないか?」
「絶妙な加減です。すごい。お上手なんですね」
「部活でよくやるからな。リュックは俺が持つとして、下山できるかどうかだが」

自力で歩けなければ山岳救助も辞さない、という提案に陸遜は慌てて首を振った。ヘリコプターを呼んだことが両親に発覚すれば、二度と一人で別荘に来ることは許されないだろう。試しに靴下と靴を履き直し、呂蒙の手を借りて立ってみると問題なく歩行できそうだった。

「行けます」
「よし、強いぞ。ゆっくり行こう。岩のところは手を貸すからな」
「本当にありがとうございます」

決して押しつけがましくない、初対面に対し誠実に心配してくれる呂蒙に惹かれていくのを、胸の弾む音で実感し始めた。

下山はじっくり進んだ。なるべく足首に負担がかからないよう慎重に歩き、こまめな休憩を挟み、時には手を借りて山道を下りていく。早朝に登ったにも関わらず、登山道の入口に戻った時にはすっかり夕方になっていた。二人とも行動食しか口にしていなかったので、腹の音が鳴って笑い合う。平地の安堵もあり、陸遜は柔らかく微笑んで思いを素直に口に出来た。

「呂蒙殿のおかげで帰ってこられました。命の恩人です」
「大げさな。お前が泣き事も言わずに歩いたからだぞ。頑張ったな」

頭をぽんぽんと叩かれて、普段ならそういった子供扱いをされたくない方なのに喜ばしく思う自分を陸遜はしっかり自覚した。呂蒙の手首を掴む。

「重ねてお願いがあります。今晩、共にいて下さいませんか」

夕日の強い日差しは雲に隠され、びゅうびゅう強い風が吹きつけて、声が届いたか心配になるほどうるさかった。騒音の中でどくどくと血流の音が聞こえる。掴んだ呂蒙の手首のものか自分のものか分からなかったが、陸遜は大きな瞳を目の前の人物から反らさないようにするのに必死だった。己の誘い方が少し勘違いを生みそうなことには気付く余地もなかった。呂蒙がしきりに瞬きしながら先に目を反らす。

「高校生は、健全であるべきだろう」

呂蒙は静かにそう言って、掴まれた手を下した。手首に絡む指を外させて、わざとらしく直立の姿勢を陸遜に取らせた。

「お嫌ですか」
「いや、なんというか、」
「満足いくよう努めます」
「陸遜、」
「調理実習の評価はまずまずでした。カレーの材料もあります」
「ん?」
「別荘の布団は年3回業者が変えていますし、昨日埃は払ってあります」
「別荘?業者?」
「浴槽は大きくありませんが、湯にも浸かれます」
「湯……」
「荷を持っていただき、身体を支えてくださり、呂蒙殿もさすがにお疲れではありませんか。恩人に車中泊させるなど、とうてい出来ません」

どんどん反応が悪くなっていく呂蒙にめげず、陸遜は畳みかけるように提案した。自宅と比べると貧相だが、車で寝泊まりするよりはましな一夜を過ごせるはずである。この程度で恩返しになるとも思えないが、高校生の自分に出来ることは少ない。別荘の設備頼りになってしまうのが情けないと思いつつも、気持ちを瞳に込めて食いついた。
呂蒙は大きなため息をひとつ吐き、自分の頭を乱暴に掻いた。結っていた髪が何本が解けていく。

「……世話になろう……」
「本当ですか!嬉しいです。ありがとうございます!」

なぜか返事に覇気はないが、強風の中でもきちんと陸遜の耳に届いた。思わず跳ねてはしゃぎそうになったが、足首の違和感で留まる。下山中は気を遣っていたが、緩んできたのか熱と痛みをうっすら感じた。下を見て靴を眺めている陸遜に気が付いたのか、呂蒙は自分の頭にあった手を陸遜の背に添えた。

「お前の足も再度手当てが必要だろう。きちんと横になった方がいい。調理は俺がする」
「そんな。それでは恩返しになりません」
「雨風凌げる屋根があって、温かい飯と風呂があって、清潔な寝床まであるんだろう。貰い過ぎなくらいだ」

呂蒙が何でもないように言ってくれるのが、陸遜には殊更嬉しかった。
陸遜の指示通りに二人は歩を進めた。呂蒙が停めた車を通りすぎ、悪化していく向かい風に逆らいながら到着し、陸遜は胸を撫で下ろした。鍵を開けて案内する。

「この豪邸、お前の家だったのか……中まですごいな」
「狭い所ですが、くつろいで頂ければ幸いです」
「俺の今借りてる部屋が六つは入るな」
「呂蒙殿は本当にお優しいですね」

陸遜が笑むと呂蒙は眉を下げて笑った。

結局陸遜は頑として調理を譲り切らなかった。シャワーで汚れを流し、再度テーピングしてからキッチンに共に立つ。呂蒙も初めは遠慮していた様子だったが、設備の使い方や道具のありかをいちいち尋ねるのも大変だったのか、横に立つことを許してくれたようだった。

誰かと並んで調理したことは学校以外なかった。そのことも、時々呂蒙が呟く一人暮らしの様子もどれもが新鮮で楽しいものだった。卓に着いて向かい合わせで食べたカレーは、これまでの人生で一番美味しく感じた。

「食材がいいと俺でも美味いカレーが作れることが分かった」
「家にあったものなので、産地や品種は分かりませんが」
「俺のようなバカ舌でも分かる。間違いなく高級品だ」
「呂蒙殿の舌に合ったならなによりです」

強風が叩きつける音が陸遜の耳に入る。窓の外が荒れているのが中からも分かった。あのまま登っていたら大変な目に遭っていただろう。車中泊ではうるさくて眠れるはずもない。呂蒙が別荘に来てくれてよかった、と改めてほっとした。

呂蒙は食べ終えてから風呂へ行った。釘を刺された陸遜は洗い物をしたい気持ちを抑えてソファに横たわった。クッションを敷いて足を挙げる。怪我がなければ、呂蒙とは食事を共にすることも出来なかっただろう。うすら寒かったので掛けていたタオルケットを手繰り寄せる内に、口元を隠すまでになった。呂蒙とは今日初めて会ったばかりだ。知っていることも少ない。それなのに、考えているとじわじわと顔に熱が集まる。低い声をもっとたくさん聞いていたいと思ったし、大きな手で頭を撫ぜられたことが今になって嬉しくなった。

自分にない男らしさに惹かれただけではなく、人間として惹かれている。いわゆる、恋ではないか。
はっきり自覚すると恥ずかしくてたまらなくなり、遂には顔を布ですっぽり覆うはめになった。

「陸遜、寝るならソファは危ないぞ」

頭で再生していた呂蒙の声が上から降って来て、陸遜は跳ね上がった。変に筋が攣ったのか、足首まで痛む。大げさなまでの反応に、呂蒙は笑いながら心配の声を掛けた。

「すまん、そんなに驚かせるつもりはなかった」
「こちらこそすみません……少し考え事に耽っておりました」

上体を起こした陸遜の肩を押して、呂蒙がもう一度寝かせてくれた。軽くうなずいて受け入れると、呂蒙も満足そうに頷いている。離れてしまう背を残念がってしまうのは、自覚した以上仕方のないことだった。やがて台所に向かって洗い物をする音が聞こえる。何気ない生活音を今後も聞きたい。くっきりした欲が見えた。

「寝室まで運んでやるか?」
「いえ、それはまだ。呂蒙殿に取って来てほしいものがあります」
「なんだ?」

陸遜が頼ることに対し、呂蒙は一切嫌な顔をしない。どころか少し嬉しそうだった。そのことに喜ばせながら、陸遜はサブの冷蔵庫の存在と位置を伝えた。大した礼にはならないが、どれか飲んでほしいと添えて。
瓶を2本手にして戻ってきた呂蒙の眉間には、深い皺が刻まれていた。

「俺の知っているビールと違う」
「そうなんですか?父の好む銘柄なので、合うものがなかったらすみません……」
「いや、すまない。違うんだ。こう、家柄の凄さを感じるというか。とにかく嫌なんじゃなくて、圧倒されてるだけだ」

世間知らずなところがあるのは分かっているが、やはりズレがあるようだ。そう悟った陸遜が恥を感じる前に、呂蒙は切り替えて笑顔になった。瓶を置いて台所へ行き、栓抜きとコップを持って戻って来る。呂蒙が物の位置を把握してきているのを嬉しく思った。

「お前にはオレンジジュースにしてみたぞ。瓶と言うだけで立派に見えるなぁ」
「いつか呂蒙殿とビールを飲んでみたいです」
「成人した頃また会ってくれるのか」
「必ず呂蒙殿に会いに行きます」

注いでくれたグラスに手を伸ばす。不透明なオレンジ色の向かいには、澄んだ琥珀色と白い泡のグラスがあった。一緒の中身を共に味わう日を心から願って見つめてみた。呂蒙はゆっくりと笑ってから、グラスをぶつけてくれる。

「では、約束しよう。次会えた時は、乾杯だ」

可能性を示されただけで胸中は歓喜に満ちている。一口泡を舐めただけの呂蒙がまた頭を撫でてくれると、全身にぞくぞくと痺れが走って陸遜は泣きそうになった。
絶対に叶えると決めた瞬間だった。

呂蒙はその後一本の瓶ビールを、時間をかけて飲み干した。陸遜が時間稼ぎのようにちびちび飲むのに付き合ってくれた形だった。その間、呂蒙は自身の大学の部活のことを面白おかしく話してくれた。

学生らしい名称を張り付けた、自由でアクティブな部活であること。先輩やOBがとても恐ろしいこと。賑やかな後輩たちに手を焼いていること。活動内容も知らない部員たちも、不思議と陸遜の中で憧れの対象になった。

「とても楽しそうです。大学とは勉学のための場所だと思っておりました」
「当然、勉学が一番だ。だが、人生の夏休みとも呼ばれる。この歳で、この身軽さでしか出来ないことがある。大人と子供の狭間でしか得られない経験は多くあるだろう」
「狭間でしか得られない経験……」
「うちの部活はいいぞ。やりたいと思ったことは何でも出来る。もちろん一般常識や法律は守った上でな」

酔って茶目っ気が出てきたのか、呂蒙が鈍くウインクした。うまく出来ていないそれにもときめきを感じて、陸遜はますます曖昧な約束を確約に変えていく。

「私も入部します」
「ははは。そうだな。我が部は、お前のように骨のある奴なら大歓迎だ」
「呂蒙殿も歓迎してくださいますか」
「もちろんだ。お前が入る頃には学部は卒業しているが、まあ多分院に行くから、いるだろうな」
「良かったです。呂蒙殿がいなければ意味がないですから」

ストレートに伝えてみたが、やはり呂蒙はアルコールに巻かれているようで、ただ楽しそうに笑っていた。それに便乗して、陸遜は大学の詳細を聞いていった。その場でスマートフォンで調べる。医学部がある。国の最高峰の大学に行ける学力のあった陸遜は、頭で瞬時に進路を変更した。教師や両親には、直前で伝えることも決めた。

「よろしくお願いいたします。呂蒙殿」

深々と頭を下げると、自然と頭を撫でてくれる。この動作を自分だけのものとすべく、陸遜は心の炎を燃やすのであった。

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