SS
瑜小
周瑜は青い顔で回廊を歩いていた。寝不足と心労が祟り、酷い頭痛がある。友の道を支えるべく、勉学を積み研鑽を続け、知略を練り老将らと交渉する日々に満足する一方で、周瑜の体は悲鳴を上げていた。
今しがた古参の文官から掛けられた言葉にも苛立っていた。曰く、奥方は落ち着きがないと。あのような幼子を娶るくらいであれば、せめて姉の方にすべきであった、その方が似合いだから取り替えてはどうか、などと宣うのである。
思い返すだけで足音が穏やかではなくなる。物騒な顔つきになっていく自覚を持ちながら止めることも出来ない。周瑜は乱暴な手つきで邸宅の戸を開けた。
「周瑜様、おかえりなさい!」
花のような笑顔を振りまいて、小喬が抱き着いてきた。その小さな体を支えてやると、周瑜はみるみる心身が労わっていくのが分かった。いつものゆったりとした笑みをたたえ、文官に投げた言葉をそっくり口にする。
「私は小喬を愛している」
小喬は一度まばたきをした。すぐに抱き着いている腕に力を込める。
「あたしも、周瑜様のこと愛してるよ! だーいすき!」
小喬は夫の突飛な言動にも深入りしない。笑顔が好きだと言えばずっとその表情でいる。
古い人間には、この慎ましさが分からない。いや、自分以外の誰もが理解できなくていい。常に心の太陽となる愛嬌ある妻を、周瑜は力強く抱擁して独占した。
周瑜は青い顔で回廊を歩いていた。寝不足と心労が祟り、酷い頭痛がある。友の道を支えるべく、勉学を積み研鑽を続け、知略を練り老将らと交渉する日々に満足する一方で、周瑜の体は悲鳴を上げていた。
今しがた古参の文官から掛けられた言葉にも苛立っていた。曰く、奥方は落ち着きがないと。あのような幼子を娶るくらいであれば、せめて姉の方にすべきであった、その方が似合いだから取り替えてはどうか、などと宣うのである。
思い返すだけで足音が穏やかではなくなる。物騒な顔つきになっていく自覚を持ちながら止めることも出来ない。周瑜は乱暴な手つきで邸宅の戸を開けた。
「周瑜様、おかえりなさい!」
花のような笑顔を振りまいて、小喬が抱き着いてきた。その小さな体を支えてやると、周瑜はみるみる心身が労わっていくのが分かった。いつものゆったりとした笑みをたたえ、文官に投げた言葉をそっくり口にする。
「私は小喬を愛している」
小喬は一度まばたきをした。すぐに抱き着いている腕に力を込める。
「あたしも、周瑜様のこと愛してるよ! だーいすき!」
小喬は夫の突飛な言動にも深入りしない。笑顔が好きだと言えばずっとその表情でいる。
古い人間には、この慎ましさが分からない。いや、自分以外の誰もが理解できなくていい。常に心の太陽となる愛嬌ある妻を、周瑜は力強く抱擁して独占した。
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