SSまとめ(健全)
全く気乗りのしない遺品整理は、足を踏み入れて更に気落ちさせられた。既に随分進められていて目につく範囲に私物がない。わざわざ依頼してきた甘寧の副将にまた苛立ちを覚えた。
息を大きく吐いてから籐箪笥に歩み寄る。隣の寝台は世話になったが、まさかこれを遺すわけにもいかない。乾いた軋みを聞きながら一つ一つ開けていくが、雑多なものばかりだった。綺麗すぎる筆に刀用の砥石、鈴を磨く布に鵝 の羽――どれも、結局あいつの代わりにはならない。それなら預かり済みの鈴で十分だ。
全捨てだな、と決め付けて最下の棚に手を掛けた。背の高い自分には辛く、使う頻度が低いのかなかなか開かない。力を込めてようやく引き摺り出し、目に飛び込んだ棒に息を飲んだ。
「……きざったらしいことしてくれるじゃないか」
散々言われた性格をそっくり返す。浮かれた声になってしまい、舌打ちした。
作った店を紹介したことがある。襟巻きの色も似合っているとか言われた気がする。橙の石が嵌められ、龍の意匠が刻まれた簪は、女に贈るには趣味が悪すぎるだろう。
仕方ないから貰っておいてやりますか。
髪留めに差し替えた後の頭上は、やけに熱く喧しい気がした。
息を大きく吐いてから籐箪笥に歩み寄る。隣の寝台は世話になったが、まさかこれを遺すわけにもいかない。乾いた軋みを聞きながら一つ一つ開けていくが、雑多なものばかりだった。綺麗すぎる筆に刀用の砥石、鈴を磨く布に
全捨てだな、と決め付けて最下の棚に手を掛けた。背の高い自分には辛く、使う頻度が低いのかなかなか開かない。力を込めてようやく引き摺り出し、目に飛び込んだ棒に息を飲んだ。
「……きざったらしいことしてくれるじゃないか」
散々言われた性格をそっくり返す。浮かれた声になってしまい、舌打ちした。
作った店を紹介したことがある。襟巻きの色も似合っているとか言われた気がする。橙の石が嵌められ、龍の意匠が刻まれた簪は、女に贈るには趣味が悪すぎるだろう。
仕方ないから貰っておいてやりますか。
髪留めに差し替えた後の頭上は、やけに熱く喧しい気がした。