SSまとめ(健全)
乾いた音だけが室内に響く。俺が静かってだけで妙だ。凌統も同様の考えなのか、時々わざと音を立てて傍の杯を弄んでいる。石を盤に置いて一飲みし、ついに視線と言葉を向けてきた。
「今夜はいつもに増して雑ですねぇ、甘寧さんや」
あ、もう打つ手がねぇ。降参とばかりに盤上を崩すと、陰気くさい深いため息が降ってきた。限界を感じ取り、先程までの思考を言葉に出す。
「お前、前世って信じてるか」
「はっ?」
俺があまりに唐突に切り出したので、凌統が目を丸くして俺を凝視した。何度か瞬きした後、手を俺の額に乗せる。いつも冷たくて俺には丁度いい。
「熱はないね。なんだよ、俺が頭叩きすぎてイカれちまったのかい? 責任感じるっつの」
べらべら喋る凌統の手を額から外して掌に口付ける。されるがままの凌統は照れる様子も見せずに俺を見ていた。もう少しウブな反応の頃もあったような気がすんだけどな。
「なんとなく、お前とは前も一緒だった気がしてよ」
「あっそ」
どっちかと言えば喜ばしいことを言ったつもりだが、凌統はご立腹だ。
俺の手を強く弾いて凌統が立ち上がった。髪の尾が不機嫌に揺れている。
「あんたみたいなのと前世まで一緒だなんて、吐き気がするっつの」
「酷ぇ言い様だな」
「妄想する程暇じゃないんでね。今の俺は今のあんたで手一杯だよ」
――お。こりゃ嫉妬してんのか。今の俺だけ見てろってか。
見上げた顔はむくれて必死に苛立っている。ガキみてぇに拗ねてる男に欲情するたぁ、俺も本当にイカれたもんだ。
「集中しねぇなら終いだな。帰る」
「お前だけに集中してやるから、来いよ」
隣の寝台を叩いて名を呼ぶ。凌統の頬にやっと朱が差した。視線がかち合うと、照れを隠すためか不愉快とばかりに眉が寄せられ、唇がきつく結ばれる。
こんな顔まで好きになっちまったんだから、今世はもう手遅れだぜ。きっちり責任取ってもらうべく、固まった体を強く引き寄せた。
「今夜はいつもに増して雑ですねぇ、甘寧さんや」
あ、もう打つ手がねぇ。降参とばかりに盤上を崩すと、陰気くさい深いため息が降ってきた。限界を感じ取り、先程までの思考を言葉に出す。
「お前、前世って信じてるか」
「はっ?」
俺があまりに唐突に切り出したので、凌統が目を丸くして俺を凝視した。何度か瞬きした後、手を俺の額に乗せる。いつも冷たくて俺には丁度いい。
「熱はないね。なんだよ、俺が頭叩きすぎてイカれちまったのかい? 責任感じるっつの」
べらべら喋る凌統の手を額から外して掌に口付ける。されるがままの凌統は照れる様子も見せずに俺を見ていた。もう少しウブな反応の頃もあったような気がすんだけどな。
「なんとなく、お前とは前も一緒だった気がしてよ」
「あっそ」
どっちかと言えば喜ばしいことを言ったつもりだが、凌統はご立腹だ。
俺の手を強く弾いて凌統が立ち上がった。髪の尾が不機嫌に揺れている。
「あんたみたいなのと前世まで一緒だなんて、吐き気がするっつの」
「酷ぇ言い様だな」
「妄想する程暇じゃないんでね。今の俺は今のあんたで手一杯だよ」
――お。こりゃ嫉妬してんのか。今の俺だけ見てろってか。
見上げた顔はむくれて必死に苛立っている。ガキみてぇに拗ねてる男に欲情するたぁ、俺も本当にイカれたもんだ。
「集中しねぇなら終いだな。帰る」
「お前だけに集中してやるから、来いよ」
隣の寝台を叩いて名を呼ぶ。凌統の頬にやっと朱が差した。視線がかち合うと、照れを隠すためか不愉快とばかりに眉が寄せられ、唇がきつく結ばれる。
こんな顔まで好きになっちまったんだから、今世はもう手遅れだぜ。きっちり責任取ってもらうべく、固まった体を強く引き寄せた。