SSまとめ(健全)
フリルをふんわり揺らしてアリスは奇抜な色の椅子に腰かけた。派手なギンガムチェックのテーブルクロスが敷かれた卓上には、きんぴかの洒落たカップと一見豪華なフルーツタルトが見える。アリスは大きな目をぱちぱちさせて主催の言葉を待ってみた。
「素敵なお嬢さん。帽子屋のお茶会へようこそ」
「私、ウサギさんに付いてきただけよ。呼ばれてないわ」
「貴方がお茶会を願ったから連れてきたのです。貴方には参加の義務があります」
アリスは可愛い顔をくしゃくしゃにした。無理やり参加させられるパーティーなんてちっとも気乗りしない。少し味わったら帰ろうと決めて、カップを覗いてみると空っぽ。
不思議に思って首を傾けていると、カップはソーサーごと動いて逃げてしまった。そのまま帽子屋の手元に寄せられて、アリスの視線は自然と帽子屋に向いた。にっこり微笑まれているのに、どこか不気味で寒気がする。そんなアリスを置き去りに、帽子屋は琥珀色の液体を注ぎ入れた。なんと、袖から!
「紅茶はあつあつに限るってね。冷めないうちにどうぞ」
滑らかに布の上を走って、なみなみに満ちたカップが戻ってくる。アリスは慎重に覗きこんだ。透き通った美しい色で香りも良い。だけれど、手が動かない。ウサギが目を三日月みたいにして笑う。
「遠慮なさらず。帽子屋さんの紅茶は格別ですよ。まさか妙なものなど入っておりません。ええ。まさか、毒なんて」
「そうそう。毒なんざとんでもない。ストレートが苦手なら、砂糖やミルクをあげるよ」
花模様で彩られた入れ物には、変な色の角砂糖がいっぱい。小さなピッチャーには、白い液体が何故かぶくぶく泡立っている。アリスはぞわぞわ鳥肌が止まらなくなって、慌てて立ち上がった。
「ごめんなさい。私、用事を思い出しちゃった。義姉さま方が待ってるの」
「おっと。俺のお茶会を欠席するなんて、許されねえっつの」
「ここを通す訳には参りません」
帽子屋とウサギが武器を構えている!
アリスも圏を取り出してみたけれど、とても分が悪い。強気に二人を睨みながら後退する。そんなアリスの背後から鳴き声が聞こえた。武器を両手でしっかり握って振り向くと、さっき消えたはずのこれまた奇抜な猫が立っている。
「お急ぎみてえだが、俺とも遊んでくれねえか」
「いやよ。だって貴方、恐い顔してるもの」
「俺が? 俺なんか可愛いもんだろ。気の狂った帽子屋とウサギに比べりゃ。なあ」
猫が煽ると帽子屋とウサギはけたけたケラケラ笑っている。高笑いしながら詰め寄って来る三人に、アリスは腰を低くして得物を構えた。
「素敵なお嬢さん。帽子屋のお茶会へようこそ」
「私、ウサギさんに付いてきただけよ。呼ばれてないわ」
「貴方がお茶会を願ったから連れてきたのです。貴方には参加の義務があります」
アリスは可愛い顔をくしゃくしゃにした。無理やり参加させられるパーティーなんてちっとも気乗りしない。少し味わったら帰ろうと決めて、カップを覗いてみると空っぽ。
不思議に思って首を傾けていると、カップはソーサーごと動いて逃げてしまった。そのまま帽子屋の手元に寄せられて、アリスの視線は自然と帽子屋に向いた。にっこり微笑まれているのに、どこか不気味で寒気がする。そんなアリスを置き去りに、帽子屋は琥珀色の液体を注ぎ入れた。なんと、袖から!
「紅茶はあつあつに限るってね。冷めないうちにどうぞ」
滑らかに布の上を走って、なみなみに満ちたカップが戻ってくる。アリスは慎重に覗きこんだ。透き通った美しい色で香りも良い。だけれど、手が動かない。ウサギが目を三日月みたいにして笑う。
「遠慮なさらず。帽子屋さんの紅茶は格別ですよ。まさか妙なものなど入っておりません。ええ。まさか、毒なんて」
「そうそう。毒なんざとんでもない。ストレートが苦手なら、砂糖やミルクをあげるよ」
花模様で彩られた入れ物には、変な色の角砂糖がいっぱい。小さなピッチャーには、白い液体が何故かぶくぶく泡立っている。アリスはぞわぞわ鳥肌が止まらなくなって、慌てて立ち上がった。
「ごめんなさい。私、用事を思い出しちゃった。義姉さま方が待ってるの」
「おっと。俺のお茶会を欠席するなんて、許されねえっつの」
「ここを通す訳には参りません」
帽子屋とウサギが武器を構えている!
アリスも圏を取り出してみたけれど、とても分が悪い。強気に二人を睨みながら後退する。そんなアリスの背後から鳴き声が聞こえた。武器を両手でしっかり握って振り向くと、さっき消えたはずのこれまた奇抜な猫が立っている。
「お急ぎみてえだが、俺とも遊んでくれねえか」
「いやよ。だって貴方、恐い顔してるもの」
「俺が? 俺なんか可愛いもんだろ。気の狂った帽子屋とウサギに比べりゃ。なあ」
猫が煽ると帽子屋とウサギはけたけたケラケラ笑っている。高笑いしながら詰め寄って来る三人に、アリスは腰を低くして得物を構えた。