SSまとめ(健全)
甘寧は基本的に凌統の動向に興味がない。関わると面倒なことになると分かっているからだ。凌統がやけに突っかかって来るのは嫌がらせの一種だと思っている。素っ気なく返していればじきに飽きるだろうと思っていた。
「甘寧。あんたの奇襲は鈴鳴らしながら堂々と正面から入ることなのかい?」
幕舎で今日も背後から皮肉が飛んでくる。飽きるどころかますます悪化する凌統からの接触に呆れる一方である。
じっとりとした低い声に苛立ちながら振り向いて、さすがの甘寧も一瞬固まった。長身の垂れ目の片目がない。正確には、瞼の流血がおびただしく目を開けていられないらしい。
「お前、傷の手当より俺への嫌味かよ。頭おかしいんじゃねえの?」
「拭っても止まんないんだから仕方ないっつの」
仕方ないの意味が分からない。甘寧は痛みを覚える程眉間にしわを寄せた。武技は器用なくせにその他のことが不器用で心底腹が立った。
舎内にあったそこそこ清潔な布を掴み取り、黙って己の額当てを外し、凌統の前に立つ。皮肉屋は黙って頭を少し下げた。
「珍しいねえ。あんたも人の世話焼くんだ」
すぐ近くで聞こえる低音が甘寧の腹を熱くする。通常よりもだいぶ強く縛ってやると、痛みに呻く声がした。そんな声にも滾るようになって、いよいよ終わりだと嘆きたくなった。応急処置を終えてそのまま唇に噛みつくと、おや、とでも言うように無事な方の眉が山を作った。大人しく開いて口内の蹂躙を受け入れている。それらの反応全てが気に入らない。高い位置にある髪束の根っこを掴んで無理やり距離を作って凄む。
「ヤラせろ」
凌統は片目だけで瞬きして、それを細めた。
「あんたが勝ったらね」
返り討ちにして何度喘がせたか分からないのに、凌統に懲りた試しがない。寄られて迷惑でうんざりするのに、体は勝手に熱を持つ。結局翻弄されている自身も、凌統の余裕の返しや上から目線も全て鬱陶しい。乱暴にその体を離し、無言で幕舎を立ち去った。
「甘寧。あんたの奇襲は鈴鳴らしながら堂々と正面から入ることなのかい?」
幕舎で今日も背後から皮肉が飛んでくる。飽きるどころかますます悪化する凌統からの接触に呆れる一方である。
じっとりとした低い声に苛立ちながら振り向いて、さすがの甘寧も一瞬固まった。長身の垂れ目の片目がない。正確には、瞼の流血がおびただしく目を開けていられないらしい。
「お前、傷の手当より俺への嫌味かよ。頭おかしいんじゃねえの?」
「拭っても止まんないんだから仕方ないっつの」
仕方ないの意味が分からない。甘寧は痛みを覚える程眉間にしわを寄せた。武技は器用なくせにその他のことが不器用で心底腹が立った。
舎内にあったそこそこ清潔な布を掴み取り、黙って己の額当てを外し、凌統の前に立つ。皮肉屋は黙って頭を少し下げた。
「珍しいねえ。あんたも人の世話焼くんだ」
すぐ近くで聞こえる低音が甘寧の腹を熱くする。通常よりもだいぶ強く縛ってやると、痛みに呻く声がした。そんな声にも滾るようになって、いよいよ終わりだと嘆きたくなった。応急処置を終えてそのまま唇に噛みつくと、おや、とでも言うように無事な方の眉が山を作った。大人しく開いて口内の蹂躙を受け入れている。それらの反応全てが気に入らない。高い位置にある髪束の根っこを掴んで無理やり距離を作って凄む。
「ヤラせろ」
凌統は片目だけで瞬きして、それを細めた。
「あんたが勝ったらね」
返り討ちにして何度喘がせたか分からないのに、凌統に懲りた試しがない。寄られて迷惑でうんざりするのに、体は勝手に熱を持つ。結局翻弄されている自身も、凌統の余裕の返しや上から目線も全て鬱陶しい。乱暴にその体を離し、無言で幕舎を立ち去った。