SSまとめ(健全)
ひねくれた男のどこに惚れたのかと聞かれると、むしろそこだと甘寧は断言できる。武を褒めれば親仇に見下されたと奮起し、窮地を救えば余計なお世話だとはね除けられ、惚れたと言えば大嫌いだと返される。発言は酷いが、態度は一致していない。視線を外した横顔の耳の赤みを見た瞬間、何がなんでもモノにすると決めた。
恋い焦がれた男は今、甘寧を見下ろして呆然と立っている。必死に鉛のような腕を持ち上げてみたが、声は出せなかった。会いたかったとか相変わらず美人だなとか、珍しく情熱的な言葉が浮かんだのに、喉から出るのは木枯らしのような音だけだ。
はっ、と鼻で笑うのが聞こえた。懸命に瞼をこじ開けて瞳を向ける。凌統が口元をひきつらせていた。笑っているつもりなのかもしれない。
「これで、あんたの尻拭いとはおさらばってわけか。精々するっての」
甘寧とは違って致命傷を負っていないのに、凌統の声は震え、掠れて、時々聞き取れなかった。
脳内で繋ぎ合わせて、お得意の皮肉を当てられていることに気付き甘寧は笑った。本音なら両手を叩いて喜べばいいのに、眉を下げて瞳を潤ませていては、最期まで期待するというものだ。
甘寧は背にしていた大木の根元に置いていた鈴の連なりを掴んだ。ゆるゆると引き摺る。時間をかけて眼前に掲げてやると、凌統が強引にそれをもぎ取った。続いて、顔面を鷲掴みにされる。耳元で乱暴に鳴る鈴がうるさい。
「あんたの息の音、しっかり止めてやるよ」
聞こえるか聞こえないか、ぎりぎりの声量で凌統が囁く。初めてひねくれていない本音が聞けたと直感した。
重なった唇は戦後の土埃でざらついていた。いつもなら舌を絡めて潤せるのに少しも動かすことが出来ない。諦めて瞼を下ろすと、ぬめりが温かく入ってきた。全身が寒くて震えるので口元がより熱く感じる。縋りつくことも出来ない体に失望しながら、ゆっくりと呼吸を預けていった。
恋い焦がれた男は今、甘寧を見下ろして呆然と立っている。必死に鉛のような腕を持ち上げてみたが、声は出せなかった。会いたかったとか相変わらず美人だなとか、珍しく情熱的な言葉が浮かんだのに、喉から出るのは木枯らしのような音だけだ。
はっ、と鼻で笑うのが聞こえた。懸命に瞼をこじ開けて瞳を向ける。凌統が口元をひきつらせていた。笑っているつもりなのかもしれない。
「これで、あんたの尻拭いとはおさらばってわけか。精々するっての」
甘寧とは違って致命傷を負っていないのに、凌統の声は震え、掠れて、時々聞き取れなかった。
脳内で繋ぎ合わせて、お得意の皮肉を当てられていることに気付き甘寧は笑った。本音なら両手を叩いて喜べばいいのに、眉を下げて瞳を潤ませていては、最期まで期待するというものだ。
甘寧は背にしていた大木の根元に置いていた鈴の連なりを掴んだ。ゆるゆると引き摺る。時間をかけて眼前に掲げてやると、凌統が強引にそれをもぎ取った。続いて、顔面を鷲掴みにされる。耳元で乱暴に鳴る鈴がうるさい。
「あんたの息の音、しっかり止めてやるよ」
聞こえるか聞こえないか、ぎりぎりの声量で凌統が囁く。初めてひねくれていない本音が聞けたと直感した。
重なった唇は戦後の土埃でざらついていた。いつもなら舌を絡めて潤せるのに少しも動かすことが出来ない。諦めて瞼を下ろすと、ぬめりが温かく入ってきた。全身が寒くて震えるので口元がより熱く感じる。縋りつくことも出来ない体に失望しながら、ゆっくりと呼吸を預けていった。