SSまとめ(健全)
ただの雑音生成機になっているテレビ画面には、同じような顔のアイドルたちが並んでいる。耳を手で覆われていて歌はよく聞こえない。眼前の男から意識を反らしたくて興味のないダンスに目を向ける。
「へー」
甘寧が至近距離で呟くので反射的に睨み付けた。人の頭を掴み上げて、じろじろ無遠慮に見ておいて、それは感想なのか。何、と低く問う。
「お前の顔見てたら、ふーんって思ってよ」
「だから何それ」
甘寧は答えないまま唇を寄せてくる。ま、こいつにとっちゃまだ新鮮な面なのかもしれない。俺はあんたの顔なんざ見飽きてる、という言葉は飲み込んだ。
甘寧にとって俺は手を出せる飲み仲間の一人だ。俺だけが前世を鮮烈に記憶している。父を討たれた怨念も、仇が同朋になる絶望も、窮地を救われた恩義も、背を預け合う信頼も、ちょっと行きすぎた情も。俺だけが全てを覚えている。再会時、初めましての反応に覚えた失望は新しい感情だった。
こいつはあの甘寧とは違う。俺も違う。戦わないし武器なんて持たない。だから別人としてそれぞれ生きりゃ良かったのに、なんでだか飲み比べになって、気に入られて、たまに飲む仲になった。半年の間にあれこれ試してみたが、やはり前世の記憶はないらしい。甘寧のような顔で甘寧のような言動をするもんだから、つい離れられなくなった。
キスされるようになったのは一ヶ月前から。きっかけなんかない。あいつが勝手にしてきて俺が拒まなかっただけの話だ。今はごり押しに負けて、俺ん家で好き勝手されている。
嫌かと聞かれて無視した。別に嫌じゃない。かつて何度も甘寧とやってきたことだ。だがこいつはあいつじゃない。俺は、何を求めてこいつを許してるんだろう。
「凌統」
「……名前呼ぶなっつの」
「んじゃ、こっち見ろや」
画面が消される。最後に映っていたのはフワフワした衣装の女の子だった。目を閉じてその子が跳ねる姿を無理矢理再生する。甘寧の舌打ちが聞こえた。
「へー」
甘寧が至近距離で呟くので反射的に睨み付けた。人の頭を掴み上げて、じろじろ無遠慮に見ておいて、それは感想なのか。何、と低く問う。
「お前の顔見てたら、ふーんって思ってよ」
「だから何それ」
甘寧は答えないまま唇を寄せてくる。ま、こいつにとっちゃまだ新鮮な面なのかもしれない。俺はあんたの顔なんざ見飽きてる、という言葉は飲み込んだ。
甘寧にとって俺は手を出せる飲み仲間の一人だ。俺だけが前世を鮮烈に記憶している。父を討たれた怨念も、仇が同朋になる絶望も、窮地を救われた恩義も、背を預け合う信頼も、ちょっと行きすぎた情も。俺だけが全てを覚えている。再会時、初めましての反応に覚えた失望は新しい感情だった。
こいつはあの甘寧とは違う。俺も違う。戦わないし武器なんて持たない。だから別人としてそれぞれ生きりゃ良かったのに、なんでだか飲み比べになって、気に入られて、たまに飲む仲になった。半年の間にあれこれ試してみたが、やはり前世の記憶はないらしい。甘寧のような顔で甘寧のような言動をするもんだから、つい離れられなくなった。
キスされるようになったのは一ヶ月前から。きっかけなんかない。あいつが勝手にしてきて俺が拒まなかっただけの話だ。今はごり押しに負けて、俺ん家で好き勝手されている。
嫌かと聞かれて無視した。別に嫌じゃない。かつて何度も甘寧とやってきたことだ。だがこいつはあいつじゃない。俺は、何を求めてこいつを許してるんだろう。
「凌統」
「……名前呼ぶなっつの」
「んじゃ、こっち見ろや」
画面が消される。最後に映っていたのはフワフワした衣装の女の子だった。目を閉じてその子が跳ねる姿を無理矢理再生する。甘寧の舌打ちが聞こえた。