ごみ棄て場は何処


敵を斬る。弓で射る。戦場で生きていく上で当然のことを繰り返す。その結果、恨まれることはこれまた当然あるだろう。
投降した先に討った将の子がいて恨み辛みを抱いているそうだと聞かされても、そりゃしょうがねぇなとしか思わなかった。そういう世の中だから諦めろと、そいつも散々言われているはずだ。親仇が仲間になってしまうとは運が悪かっただろうが、乱世では何が起きてもおかしくないので普通のやつなら自我を収めて現状をただ受け入れる他ない。

そう、普通のやつなら。

「甘寧……今日という今日こそはっ」
「凌統、お前、本当にしつけぇな!」

長い脚を振り回して蹴りかかってくるのを屈んで避ける。身軽に反転し踵落としを決めようとしてくるので後ろに一方引いてからその顔に向かって殴りかかる。左手で受け止められ、右手で殴ろうとしてくるので同じように受け止めた。互いに手を握り合いながら膠着状態になる。

「放せっつの……あんたのムカつく顔ぶん殴らないと気がすまないんでね」
「お前の気すますのに毎日喧嘩ふっかけられてるこっちの身にもなってみろや」
「その首繋がせてやってるだけで感謝してほしいとこなんだけど」
「へぇへぇそりゃ感謝いたすぜ凌将軍様よぉ!」
「馬鹿にしやがって……!」

ぎゃあぎゃあ言い合う俺らを止める奴はいない。この場に誰もいないという訳ではなく、本当に誰も止めてくれねぇのだ。文官は皆忙しい振りをして立ち去り、武将らはまたやってると気にも留めていない。面倒ごとに巻き込まれたくないだけろう。

俺だって心底面倒に感じるはずだ。顔を合わせりゃこうやって絡まれ、殴る蹴るの小競り合いになるなど鬱陶しいことこの上ない。これまでの俺なら間違いなく斬っている。

それを出来ないでいるのは、少なくともこの孫呉軍を気に入っており余計な罪を抱えたくない理性と、何故か酔狂なことにこの目の前の男に惚れてしまった感情が混じったためだ。
俺もつくづく普通とはかけ離れている。というか、狂っている。

一人の人間にこんなにも執着されたことはなかった。それが例え負の感情であったとしても、この男が俺の存在だけを気にして日々生きているという事実にぐっと来てしまったのだ。あと、顔がわりと好みだったのもある。自覚しちまったものはしょうがねぇ。

今日も結局、絡んでくれたことを内心喜ばしく思ってしまい、その女々しさには自分でもげっそりする。だがこの想いをどうこうするつもりはないので毎日掴み合いをするくらいは許されるはずだ。

「喧嘩両成敗」

ゴン、と音がして視界に星が散る。痛ぇ。
頭を上げると呉の軍師、呂蒙改めおっさんが拳を下ろしながら呆れたように俺らを見ていた。大体、ここまでが毎日の茶番劇だ。

「呂蒙さん、容赦なさすぎませんか……痛ってぇ」
「凌統。大方お前が仕掛けたのだろう。全く、甘寧が嫌なら放っておけばよいのに、何故わざわざ絡むんだ?お前はもう少し冷静な奴だと思っていたが」
「こいつの極悪顔見ると体が勝手に動いちまうんですよ。俺は悪くありません」

こいつ、結構馬鹿だよな。つうか中身がガキっぽい。おっさんもますます呆れている。凌統にこんな面があったとは、と嘆いているのは孫呉の将のほとんどで、俺の影響で新たな凌統の一面が開かれたかと思うと無性に気分が良くなる。やっぱ狂ってんな。

「俺は別に構わねぇぜ。どうせ本気で殺す気があるわけじゃねぇし、分かってっから放置してんだろ?」
「そうは言うがな甘寧。毎日毎日騒がれてみろ、煩いことこの上ないぞ。周瑜殿がますますやつれておる」
「そんなに言うなら領地を放してくれって俺は言ってるんですけどね」

凌統が拗ねながら言う。そうだったのか。それは困るというか今更考えられねぇ。凌統に会えねぇ毎日など想像するだけでつまらなくて死にそうだ。

呂蒙はじっと凌統を見ていた。凌統がたじろぐ。

「……それがお前の本心だというなら、俺も尽力するんだがな」
「……勘弁してくださいよ。まるで俺が甘寧と一緒にいるのを望んでるみたいに」
「そうとまでは言わんが、こうやって毎日絡むことで発散される思いもあるだろう。煩いのは敵わんが、お前ら戦では相性いいからなぁ」
「だってよ、凌統」
「うるせぇっつの」

凌統がやや照れながら睨むその顔も好みだなと思う位にはおかしくなっているので、やはりこいつが近くにいないなんて考えられねぇ。

おっさんは用事を思い出したのか、もう喧嘩するなよと言い残してさっさと消えていった。妙な空気の俺らだけが残る。こいつこういう時何考えてんだろうな。少し知りたくなって、つい声をかける。

「じゃ、喧嘩じゃなくてイイコトすっか」
「はぁ?何それ」
「釣りでも行くか、酒でも飲むか……色々あんだろ」
「なんであんたと?」
「健全な憂さ晴らしだろ。それとも妓楼でも行くか?」
「それこそあんたとは行きたくないっつの」

そういうもんか?俺はこいつがどんな顔して女を抱くのか見てみてぇけどな。凌統はがしがしと首を掻いて何かを考えているようだったが、あ、と一声漏らしてこちらを見た。

「あのさ、あんた剣詳しいか?」
「刀程じゃねえけど」
「俺の部下二人、昇進させようと思ってて。剣一本ずつ作らせたいんだけど」
「へぇ、いいじゃねえか。あんだけいて大事にしてんだな」
「そりゃ、あんたもだろ」

凌統がそう答えるので驚いた。確かに俺は野郎共を賊時代から特に大事している方だが、それを凌統が知ってるのは純粋に嬉しい。あと、珍しく俺を頼ってくるところも。

「へへ、まぁな。よし、行こうぜ。馴染みの店案内してやる」
「おい、俺は子供じゃねぇっつの」

つい手首を掴んで引いたらすぐに気付かれた。惜しい。しかし凌統とまさか出掛ける日が来ようとは。自分であれこれ誘っておいてなんだが、槍でも降るのかもしれない。


***


刀剣を扱う店には余り来ないのか、 凌統が物珍しそうに商品を眺めている。時折手に取ったり振り回したりして重さを確かめている様をそれこそ物珍しく見ていると、ちらとこちらを見てきた。切っ先を俺に向けて挑発するように笑う。

「斬り心地も確かめられたらいいんですけどねぇ」
「部下になんてもん贈りつけるつもりだよ」
「偉大な将凌操を射た仇の血を吸った剣なんて、凌家家宝もんだけど」
「物騒な冗談言ってねぇで、さっさと決めろよ。目星ついたのか?」

少しは本気なんだけどとぶつぶつ言う凌統を無視して、その手に握る剣を取り上げる。部下の詳細が分からねぇので大した助言はできないが、一般的なことなら教えられそうだ。

「こりゃちと軽すぎねぇか?ぶっ飛ぶぜ」
「あんた程皆がごついわけじゃないっつの。でも確かにこれは軽いね」
「これはどうだ?重さは普通だと思うぜ。柄が寂しい気すっけど」
「あんたのが派手すぎるんだよ。これくらいが丁度いい」

凌統はそれを手に取って店主に声をかける。これをそのまま受け取るわけではなく、同じ型に鋳らせて新品を二本作らせるつもりだろう。素直に俺の話を受ける凌統はこれまでになかったので、うっかり感動しかける。こいつに他意はないだろうに。

「助かったよ。二人ともよくやってくれてるからさ」
「お前から褒め言葉の一つでもやりゃ十分喜ぶだろ」
「形に残るものをあげたかったんだ、万が一の時に家族にも遺せるかもしれないし」

そりゃてめぇの経験からか?俺にわざわざ言う辺り嫌味な奴だなと思う。これで嫌いになるどころかますます傾心してしまうのだから手遅れだ。

凌統は特に俺の反応には興味がないらしく、さっさと暖簾をくぐって外に出た。店主に一声掛けてから出ると、不満げな顔で腕を組み俺を見ている。

「なんだよ」
「あんたに借りを作っちまったなと思ってさ」
「お前から誘っといてか?別にこの程度貸しとも思ってねぇし」
「……それ。あんたさ、変だよな。俺が仇討ちしようが頼み事しようが、嫌な顔一つしないで受けやがる。何考えてんだっつの」

そりゃお前が好きだからだ。言う通り変なんだよ。
本音を言えるはずもないので、懐深い俺様に感謝しろよと言うと睨まれた。適当に躱したのがバレている。

「それを言うならお前も変だろ。おっさんの言うとおり、俺が気に食わねえなら放っときゃいいだろうが」

ついムキになって本音と真逆のことを言っちまった。これでこいつが本当にやってこなかったら困る。

「あんたの顔がムカつくっつってんだろ」
「それなら、こうやって出掛けるなんてあり得ねぇしよ。何考えてやがる?」
「それは……」

珍しく凌統が言葉に詰まる。自分でもよく分かっていないということか。そうであれば、整合性なんて取れていなくていいのでこれまで通りでいてほしい。

「ま、どうでもいいか。おい凌統、腹減った。借りがあると思ってんなら、飯奢れや」
「言い方に可愛げがないね」
「ご馳走してくれ」
「……ははっ、それがあんたの可愛げなのか?」

お。珍しく笑った。俺の前で笑う凌統はいたく珍しいので気分が上がる。好みの顔はどんな表情していてもいいが、笑顔は格別であることを思い出した。それほどにこいつは俺の前では怒りか渋顔か、笑うとしても挑発するかといったところだ。

「馴染みの店を紹介してくれた礼だ。俺も馴染みの店のところへ行きましょうかね」

本当に珍しく楽しそうじゃねえか。俺と一緒でもそんな風にしてくれるというのは、言い様のない喜びを感じる。こいつ、人前では特に俺を憎んでいなければとでもいうように接してくるので、もしかすると二人きりであれば多少は柔らかくなるのだろうか。
面倒くせぇ奴。こんな奴に惚れた自分も、相当面倒くせぇ。さっさと歩く凌統の後ろを歩きながら、そんなことを思った。


***


ざわざわと賑やかな声が響く。凌統馴染みの店は、想像とは違っていた。もっと清潔な店かと思っていたが店内は乱雑で店主も粗暴だ。俺が好みそうな店だなと思い、自分に都合のいい感想に内心苦笑いした。

「お前、こういうところも来るんだな。意外だぜ」
「そうかね?別に構わないだろ。ここ、すげぇ美味いんだっての」
「へぇ。そりゃ楽しみだな」

凌統が任せろというので注文を丸投げする。挨拶などをきっちりする方だと思っていたので、店員を呼びつけてこちらも粗暴に注文する凌統に少し面食らった。

「……なんだっつの」
「知らない面も、色々あるもんだな」
「あんたの知ってる面の方が少ないだろ」
「面白ぇな。お前のこともっと教えてくれよ」

ついそう言うと、凌統が驚いたように瞬きした。
次に、ふっと笑う。随分今日は機嫌がいいらしい。

「好きなもの。美味いもん、特に甘味。動物、特に虎。植物、食えるもの。運動、節棍振るうこと。その後の飯。孫呉の人間。あ、仇以外」
「なんだそりゃ。俺も入れてくれ」
「天地が返ったらね」

そう言って笑うので、思わず本気になっちまいそうだ。天地な、よし。ひっくり返してやるよ。そうすりゃこいつが俺のことを好いてくれるっつうなら、そらやるぜ。

「さ、次はあんたの番だぜ。俺だけ発表するなんて不平等だろ」

そう言って訊かれるも、どうにも気持ちが止まりそうにない。あーーこいつ、この楽しそうな顔、心臓に悪ぃ。頭空っぽにして、何もかもどうでもよくなって、言っちまいそうだ。好きだって。

「俺は、」
「お待ちィ!」
「どうも」

絶妙な間で飯が来る。そうだとは思ったぜ。俺は何を暴走しかけてんだか。凌統は俺のことなど気にも留めずにさっさと食い始めている。

「……お前、食うことばっか好きって言ってなかったか?」
「嘘つくことでもないでしょ」
「まぁそうか……お、美味ぇなこりゃ」
「言ったろ?まだ何品か来るぜ」
「太っ腹だな凌将軍」
「ケチケチしてたら甘将軍にどんな噂流されるか分かんないからね」

やべぇ。俺今ニヤけてねぇか。これが幸せとかいうやつか。こいつ、二人きりだと、めちゃくちゃ喋ってくれるじゃねぇか。ずっとこうならいいのによ。

しばし食うことに集中しながらも、俺はこれまでにない充実感に包まれていた。


***

「あー、食った。帰ろうか」
「お前、その体のどこに入ってんだ?量食うなぁ」
「俺、小さい頃からそれ言われるの気持ち良かったんだ」

本当に機嫌がいい。出来ることならこのまま損ねずに帰りてぇところだ。
ふと、噂話を思い出した。せっかく街にいるのだから、今日もう少しくらい一緒にいてもバチは当たらねぇだろう。

「あっちに、最近できた甘味処あるぜ。まだ食えりゃの話だが」
「そりゃ食えるさ。別腹だっつの」
「じゃあ行くか」
「案内よろしく」

何の支障もなく行く流れになる。夢でも見てんのか俺は。夢なら一生覚めたくねぇ。
このまま手くらいは繋がせてくれるんじゃねえかと気持ち悪いことを考えたが、さすがにやめておいた。見目も悪すぎる。


店に着いてみると扱いが一種類だったので悩む間もなく二つ頼む。すぐに物がきて、凌統に一つ渡す。口に入れると桃のような味がして美味い。
凌統は相変わらずご機嫌だ。この勢いなら、先ほどふと思ったことを確認できそうな気がする。一応食べ終わるのを待ってから、切り出した。

「凌統」
「ん?あ、美味かったよ。ご馳走さん。いくら?」
「お前、人前っつうか、城にいる間だけ俺に突っ掛かるよな。誰に、見せつけてんだ?」
「っ……!!」

焦ったように俺を見る。薄々気付いてはいたが、今日の様子を見て確信した。嬉しいことだが多分既に恨み辛みとかいうやつはなさそうで、喋ったり飯を食ったりする程には嫌われてもなさそうだ。
じゃあ何故あんなにも小競り合いを仕掛けてくるのかと考えたときに、そう思い至った。自分の意思ではなく、誰かの意思を汲んでの行動なのかと。

「……言われるんだ。俺のとこの、お偉方にさ。仇を前にして情けないとか腰抜けとか。極悪非道の鈴野郎に皆騙されてるとか。親孝行も出来ない若造には、誰も着いて行かないとか、さ」

凌統は暗い顔でボソボソと喋る。内容は非常に腹立たしい。そんなことを言う奴も言われるがままのこいつもだ。

「で、中途半端に従ってるってか?」
「あんたに何が分かる!?家のしがらみってのは、想像してるより重いんだぜ。二世だなんだと言われ、大役預かるには早いって自覚もあるのに、誰も着いて来ないなんて言われてみろっつの……怖くて、震えちまう」

凌統は両手を開いて軽く上げた。手に乗る甘味の皿代わりの笹が揺れている。それを手に取り潰す。
こいつの言うようにしがらみとかいうのは継ぐ家もねぇし俺には分からない。理解はできるが共感は出来そうになかった。

俺は既にこいつの実力を知っている。家人の適当な発言で縛り付けられるなど、これ程馬鹿らしいことはない。

「おい、ごみ棄て場何処だ?」
「へぇ、ありがてぇ。あっちでやす」
「よし、棄てっか」
「うわっ、おいっ!甘寧、何しやがる!」

店主に聞いた街の棄て場に、凌統を肩に担ぎ上げて向かう。
辺りにいた奴らは一瞬驚きこちらを見たものの、すぐに興味をなくしたように目の前の甘味に集中していた。本当の他人とはそういうもんだ。

「ごちゃごちゃ面倒くせぇこと考えるやつは、一回棄ててやる」
「ふ、ふざけんなっ、うわっ、汚ぇ、まさか本気でぶちこまないよな!?」
「おらよっ」
「っ……!!」

覚悟したように目を瞑った凌統をごみ棄て場ではなく奥の草むらに放る。戦で受ける傷に比べりゃかすり傷だろうが、それでも痛みに呻く声が聞こえた。

「い、ってぇっつの!急に何なんだ!?」
「おし。これで、これまでのお前はごみ箱行きだ。新しくやり直せるぜ」
「……はぁ?無茶苦茶すぎ」
「俺の勝手な見解だがな、お前はすげぇ将軍だと思ってるぜ。俺はこれまでにああいう戦い方でこんなにも強ぇ奴には会ったことがねぇ。武だけじゃねぇよな、軍議では的確なこと何度も言ってるだろ。それが、家のことになると引っ込み思案になるのか?勿体ねぇから今すぐやめろ」
「……えっと」
「お前に、凌統に着いて行きてぇ奴らなんて、ごまんといる。俺が保証するぜ。むしろお前みたいのが上にいるだなんて羨ましくて仕方ねぇだろ。大役が早いなんて誰が言いやがった?いちいち昇進するのに剣を贈るような気のいいやつを嫌うのは、それこそ古株だけだよな」
「……おい、」
「大方俺のことを討てもしねぇ癖にお前に押し付けてごちゃごちゃ言ってる奴らか。あぐらかいて上席居座って、凌統の実力もろくに知らねぇんじゃねぇの?ったくジジイてのはどいつもこいつも余計なことばかりしやがるな」
「なぁ、甘寧、」
「凌統の気を煩わせてるってだけで、無性にイライラしてくるぜ。おい、お前がよければ俺が殺していいか?」
「落ち着けっての!駄目に決まってんだろうが」
「そうか?お前が止めるなら、しねぇけどよ」

ようやくこの辺りで冷静になって凌統を見ると、やけに顔が赤くなっている。ぶん投げた時にぶつけたわけではないので、つまり、照れていた。

「……随分、俺のこと、買ってくれますね甘将軍」
「嘘つくことでもねぇだろ」
「……そうかい」

そんな照れるようなこと言ったか?こちとら大真面目なんだがな。
凌統は相変わらず顔を赤くしながら暫くぶつぶつ言っていたが、少し経つと落ち着いて一息ついていた。

「だからって急にぶん投げやがったのはムカつくけど……まぁ、嬉しいよ。自信つくっつうか」
「おう。お前はもう少し自惚れろ。鈴の甘寧が認めた男だ。シャキッとしろや」
「言ってくれるね」

凌統は呆れたように、だがしかし嬉しそうに笑った。少しは吹っ切れたのか。
しかしそうなると、毎日毎日来てくれた恒例茶番劇がなくなることを意味している。それは大層つまらねぇが、仕方ねぇか。

「これでお前がむやみやたらと俺のとこ来なくなるのか。寂しくなるぜ」
「ぶん殴りに行くのは、やめるけど。あんたのとこ行ったら嫌かよ」
「嫌なわけねぇだろ、俺の毎日の楽しみが……あ?来てくれんのか?」
「あんたが言ったんだろ。イイコト、色々あるって」

うわ!こいつ!ずりぃ。狙ったように低い声でこんな風に返されて、照れないわけがねぇ。
めちゃくちゃに自分が赤面しているのが分かる。気持ち悪ぃ。助けてくれ。

凌統は俺の反応を見てタレ目を更に下げながらニヤニヤと笑っている。くそ、こいつ、楽しんでやがるな。
頭を掻きながら、先程の会話を思い出す。多分こいつ、これくらいは受け入れてくれるだろう。

「おい、凌統。俺は本気でやるぜ。いいか?」
「何をだっつの」
「天地ひっくり返すんだよ」
「……へぇ。そりゃ、大仕事で。ま、いいんじゃないの」
「よっしゃ、滾るぜ!」

拒否もされずに、今度は凌統がまた少し照れながら返す言葉に、これ以上なく気分が高揚した。


【ごみ棄て場は何処】
いらないものはごみばこへ
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