零れ桜に包まれて
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現世は寒の戻りなのか、夜の冷え込みが酷く
指先がかじかまないよう、ぐっと手を握り込みながら周囲を警戒していた
私の最後の任務は、最近現世の空座町に出没していた虚の調査だった
何でも駐在している死神ではどうにも太刀打ち出来ない特殊な虚らしい
珍しいサンプルが採れるということで、十二番隊から数名の席官が虚捕獲の為に駆り出されることになり、その内の一人が私だった
捕獲器のメンテナンスはバッチリ
鬼道も剣術の鍛錬も、一日たりとも怠ったことはない
作戦会議は念入りに、今までの調査報告から行動パターンも頭に叩き込んで
私の、死神として最後の大仕事
失敗は許されない
…空回りしそうなくらい気合の入った私は、
事情を知る者からすれば哀れに見えたかもしれない
望まない婚姻により、手放さざるを得ないものたちがあまりにも多すぎる
幼少期から衣食住は勿論、人付き合いや自分に関わる事全て、自分で選べない生活を送ってきた
親が用意したものを言われるがままに熟す、まるで籠の中の鳥のようだった
そんな飼い殺された私を籠から出してくれたのが、涅隊長だった
以前からうちの呉服屋で、奇抜な柄の反物で仕立てを依頼してくる護廷十三隊の偉い人が得意客でいる事は知っていた(何よりその姿が印象的で)
丁度母様がいない時、お茶を出しに出た私を見た隊長は、父様に声を掛けてくださった
死神としての才があるのに、経験を積ませず遊ばせておくなんて…
聡明なご主人はそのような愚行はされますまい?
相手が得意客、しかも護廷十三隊の隊長となると、堅物の父様も流石に何も言い返せず、
隊長と、連れ添いの副隊長から私が真央霊術院の入学手続きについての手解きを受けているのを、ただただ顔を真っ赤にさせながら見ていることしか出来ないようだった
世間体を気にする母様の説得もしてくださった
物知らずな箱入り娘が、そのまま嫁に出ても突き返されるなんてよく聞く話でしてネ…
なんて、呆気に取られる母様相手にまるで世間話をするように言うものだから、私は母様の後ろで笑いを堪えるのに必死だった
小さな籠の中だけでは知り得ない、
魅力的な世界に導いてくれた
人として、死神として
成長させてくれた隊長には、本当に感謝してもし足りない
そして尊敬が敬愛に、
敬愛が恋慕に変わるのに、
そう時間は掛からなかった
でももう、お慕いしているなんて伝えられない
これ以上、迷惑は掛けられない
だからこの任務の成功は、
私の今できる精一杯の恩返しだった
…そのつもりだった
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