Bonbon chocolat
かつてこれ程までに息が詰まることがあっただろうか
やらかしてしまった事に関しては、いくら考えてもしょうがないと分かってる
けれどこの状況を如何に打破しようかと思考を巡らせても、焦りで一向に考えが纏まらない
目の前には不機嫌を露わにした我が十二番隊の隊長様
椅子に踏ん反り返って座った状態で、こちらを睨み付けている
明らかに私に対して怒りの矛先を向けているのだが、
身に覚えがあるかと問われれば、
覚えがありすぎて白目を剥きながら頭を捥ぎたくなる程だ
事の発端は先刻、技術開発局の霊波計測研究所にて
私は現世のバレンタインデーという行事に乗っかって局員達にお菓子を配っていた
前日量産したチョコレートクッキーを小さな袋に小分けに入れて適当な紐で縛った所謂義理チョコ
日頃の感謝と労いを建前に、
ホワイトデーでお返しが貰えたらラッキーなんて打算的な考えで配り歩いていたのだが、
そこに涅隊長が現れて状況が一変した
姿が見えて急いで隠したというのに、
目聡く私が抱え持つチョコレートクッキーを見つける涅隊長
渋々局員の皆に配ってることを白状すると、隊長がクッキーに手を伸ばしてきた
こんな平隊士の雑な手作り菓子なんかを隊長に渡すわけにはいかない
何より隊長には現世の有名洋菓子店の高級チョコレートをちゃんと取り寄せてあるのだ
私は取られないよう咄嗟にその手を避け、隊長には別に用意している事を慌てて伝えた
だが、伝え方が良くなかった
『これは、隊長には差し上げられません!』
慌てているにも程がある
その後すぐに弁明出来ていれば良かったものの、焦った私は言葉を詰まらせてしまい、
隊長は額に青筋を立てたまま、無言のまま研究室を立ち去ってしまったのだった
その場に残された私に、局員達の「あーあ」「ご愁傷様」という視線が刺さる
呆然としていれば、阿近さんが近付いてきて肩をぽんぽんと軽く叩いてきた
慰めてくれているのかと思ったのも束の間、
何とも言えない顔で「後で隊首室に来いってよ」と小声で処刑宣告をされた私は、
崖っぷちから突き落とされた気分だった
そして現在、私は隊首室にて隊長と相対している
入室してからというもの、緊張と恐怖と焦燥で口も体も上手く動かせない
二月だというのに背中には大量の冷や汗が伝った
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