本を閉じた指の先
草木から伸びる新芽の緑が、日光を浴びてより一層鮮やかで眩しい。
朝晩はまだ少し肌寒さを感じるも、日中の活気のある空気はもう初夏の匂いがしていた。
清々しいほどの快晴。
正にお出掛け日和だというのに…。
『隊長~…』
「…アア、お早う」
縁側の柱に身を委ね、生返事をしながら本を熟読しているこの男は、十二番隊隊長の涅マユリ。
そして私の上司でもあり、恋人でもある人だ。
普段は仕事も研究も実験も一日で何件も熟してしまうスーパーマッドサイエンティストなのだが…。
そんな完璧に等しい彼に対して一つ、悩みの種があった。
それは重度の出不精だということである。
任務や研究に関わるフィールドワークに対してのフットワークは驚くほど軽いのに、
休みの日になると完全にオフモードとなり、一日中食事も碌に摂らず部屋に引き籠って本を読み漁っている。
隊長の自室は暗くじめじめとしていて、このまま放っておけば新種の茸が生えて来そうなくらいだ。
だから隊長の休みの度に私はお宅を訪ね、換気を兼ねて何とか外に連れ出そうと奮闘していた。
今日も今日とて隊長は寝間着姿と寝癖のついた御髪のまま、本を読んでいる。
いつもと違う事といえば、いつもは布団の中か上なのに、今日は廊下であること。
縁側の柱に背を凭れて、胡坐をかいているその横には数冊の本が積まれていた。
書庫から読みたい本を取りに戻った途中、面倒になってここで読み始めたのだろうか…。
『隊長!読書も良いですが、少し外に出ましょう?
良いお天気ですよ』
「…出てるじゃあないかネ」
『え?』
「君がいつも外に出ろと五月蠅いから、
今日は外で読んでいるのだヨ」
…一切本から目線を外さない隊長の屁理屈に、思わず溜息が零れそうになる。
つまり縁側は雨戸さえ開いていれば外判定、ということらしい。
そんなにも外に出たくないのかという呆れた気持ちと、それでも廊下まで出てくれたことへの多少の感謝の気持ちを同時に抱えながら、
私は縁側に腰掛けて庭を眺める事にした。
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