散る花びらを手のひらに
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暫くの抱擁の後、
私はそのままマユリに抱きかかえられ、瞬歩で何処かへ連れていかれていた。
突拍子の無い行動はいつもの事だから良いとして、お姫様だっこがどうにも落ち着かない。
「重くない?」と聞いても「メスよりも軽いヨ」なんて言うものだから、
それ以上は抵抗も出来ずに諦めてマユリに身を委ねていた。
…確かあの時もこんな風に私を抱えてくれたっけ。
数年前、霊感の強い私が虚という化物に襲われそうになった時に助けてくれたのがマユリだった。
死神という存在も、マユリが死神の隊長で虚の調査をしに現世へ来たこともその時知った私は、
当然めちゃくちゃ警戒した。何より見た目で。
だけどマユリはその後、何度も私の前に現れた。
虚に襲われた人間に対するアフターケアだとか色々と理由をつけては、一応それらしいことはするけど
大半はただ聞かれもしていない話をしているだけだった。
霊魂や死神のいる尸魂界の事、瀞霊廷の事、
そしてマユリ自身の事。
顔に似合わず口調は優しく、懇切丁寧に説明をしながら話す姿に
私のマユリに対する警戒心は次第に薄れていったが、
代わりに胸の内から段々と強く叩きつけてくるような感情が芽生えていた。
それが恋心だと気付くのに、
時間は掛からなかった。
「サア、着いたヨ」
『わぁ…』
マユリに連れてこられた場所は街から大分離れた山中にある湖の畔だった。
湖の周りを囲むように桜の木が植えられていて、それが湖面に反映している。
此処は雨の影響が少なかったのか、将又木々が密集していて強風に晒されにくいのか、
満開の桜の花弁が月明かりに照らされて白く輝くその美しさに、私は目を奪われていた。
「此処を見つけたのは偶然だったが、
名無しに見せたいと思ってネ」
『凄く綺麗…
こんなに綺麗な夜桜を見たの、初めて…』
私の反応を見たマユリは満足げに笑い、一際大きい桜の木の傍まで近付くと
その根本の盛り上がった部分に腰掛けた。
当然私はまだ抱えられていたので、そのままマユリの膝に乗せられる事になる。
我に返ってマユリの方を見れば、顔の近さに思わず仰け反りそうになった。
だけど私の肩をしっかりと抱く腕によって離れる事もも叶わず、
久し振りに感じるマユリの温もりに何だか恥ずかしくなって心臓が落ち着かない。
そんな私の心境を知ってか知らずか、マユリは更に抱き寄せてきて私の額に口付けを落とした。
驚いて顔を上げると、今度は唇を重ねられる。
恐らく私の顔は、酷く赤いのだろう。
私の頬を空いた手で愛おしそうに撫でてくるマユリの首の後ろに手を添えて引き寄せ、
その視線を出来るだけ遮るように
私はマユリに長めの口付けをした。
風に優しく枝を揺らされ舞い落ちた花びらが、
私達の上に一枚、また一枚と降り積もる。
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