犬兎之争





事の始まりはつい先刻。

浦原がマユリの元へ贈り物を持っていこうと、技術開発局までの道を鼻歌交じりに歩いていると
何かの弾みで担いでいた風呂敷に入れていたものをうっかり落としてしまった。
幸いにもそれはすぐに平子に拾われ、まだ近くにいた浦原は呼び止められたのだが
拾った物と浦原の姿に対して疑問を抱いた平子が一体何事か?と問い掛けたところ、
浦原はうっかりマユリの誕生日の事を話してしまった。

誤魔化そうにも時は既に遅し。
以前からマユリの事が気になっていた平子は、
事の真相を確かめに技術開発局を訪れたのだった。
マユリの今日の非番は浦原が図らったものであり、後々驚かせようと企んでいたらしい。

全く、何と馬鹿馬鹿しいのか。

たかがそれだけの事でこんなにも騒ぎ立てたのか、と
マユリの額には青筋が浮き出す。


「それで?贈り物というのは?」

「勿論ここに!
以前マユリさんが欲しいと仰っていた物は全て揃えましたよ」


さっさと用件を終わらせて退散させてしまおうというマユリの意図に気付くことは無く、
浦原は意気揚々と背後に置いていた…
異様に大きく膨らんだ風呂敷包みを解き、中身を一つ一つ取り出して見せた。


「ええっと…仏の御石の鉢、蓬菜の玉の枝、火鼠の皮衣、
竜の顎の玉に、燕の子安貝っス!」

「…って竹取物語かいっ!!」


平子が突っ込むのも無理は無い。
浦原がマユリの為に用意したものは、
かの有名な物語に出てくる宝物であった。
どれも出所が妖しく本物かどうかも定かではない。
浦原自身も「探すの大変だったんスよ」と自慢げにあれこれと手に入れた時の事を話していたが、
それを目の当たりにしたマユリは首を傾げた。

ハテ、こんなものは頼んだだろうか?と


「此れを欲しいと言った覚えは無いのだが」

「えええっっ!!?そんなはずは無いっス!
確かにマユリさんの口からはっきり聞きましたから!」


マユリの発言に驚き慌てふためく浦原を見下しながら記憶を探る。

ひと月前、朧げだが浦原から今欲しいものは無いかと聞かれたような気がする。
その時は確か月末故に納期もギリギリ間に合うか間に合わないかの瀬戸際、
マユリを含めた技術開発局員が何日も徹夜で作業を行っていた修羅場の真っ最中だった。
こんな時に備品在庫の確認かとリストを適当に投げ渡せば、浦原は
「違いますよ~マユリさんがお誕生日に欲しいものっスよ~」と
笑いながらマユリの頬を指で突いてきた。

この状況で一体何を宣っているのか。

殺意が湧くも直ぐに無駄と判断し
マユリは適当に答えた、という事を思い出した。

ああ、だからこのひと月、あまり姿を見掛けなかったのか…。


「要らんヨ」

「えええーーー!!!!????」


膝から崩れ落ちて放心する浦原を鼻で笑ったのは、マユリだけでは無かった。




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イイネ!