春和景明
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片想いだと、ずっと思っていた
涅隊長に想いを寄せたのはまだ入隊して間もない頃
先輩方から小間使いのような扱いを受けていた私を、隊長が庇ってくださったから
庇うという言い方だと聞こえが良いが、
その後先輩方の姿を見た者はおらず、
隊長からするときっと新しい被験体にしても周囲から何も言われないであろう、素行の悪い人物を探していただけだったのかもしれない
だけど、辛い状況から救ってくれた隊長に、
憧れない訳も無く
ずっと密かに思い続けていた
私程度の者なんて気にも留めないだろうからと最初は諦めていた気持ちも、
いつどうなるか分からないなら玉砕…否、爆弾になるのも寧ろ喜びと意を決して隊長へ告白した
だから隊長が私との交際を受け入れてくださった時、直ぐには信じられなくて夢なんじゃないかと思った
私にばかり都合の良い、お花畑のような夢…
夢だったから、
現実では本当は恋人同士ではなくて
何も出来ない不安が
徐々に私の心に大きな影を作っていた
…涅隊長は、どうして私を…?
料亭を出た後、
私と隊長は貴族街の傍を流れる川の傍の道を散歩していた
人通りは少ないが、綺麗に舗装された川端には桜の木々が植えられていて
きっとここは見頃になると花見に来る人々で賑やかになるのだろう
その時はまた此処に、隊長と一緒に…
と、口にしようとして噤んだ
私にそれを言う資格はあるのだろうか
隊長は、私をどう思っているのだろうか…
歩みを止めた私を、隊長は不思議そうに見つめる
「名無し?」
『…隊長、
隊長は何故私と交際してくださったのですか?』
驚きで見開かれた瞳
私は震える手を抑えながら恐る恐る続ける
『私は隊長の事をずっとお慕いしてきましたが
どうして隊長がそれに応えてくださったのか…
自分に自信が持てないのです
…突然このような事を、申し訳御座いま』
抱擁された衝撃で、謝罪の言葉が遮られる
突然の出来事に私は困惑しながらも抱擁の力強さに苦しさを感じて身動くが、びくともしない
日傘は地面に転がり
隊長は私の体を強く、強く抱き締める
「…名無しの立場を案じて内密にしていたが、止めだ」
『え…?』
「あの愚図共から名無しを救い出したのは気まぐれなんかじゃあない…
気付けば君を目で追っていた…そしてあの時初めて、これが恋慕だと自覚した」
腕の力が緩み、体が少し離れて隊長と見つめ合う
普段の隊長からは想像もつかない程の
余裕のないその表情に、鼓動が更に早まる
「守る為には周りに悟られてはならないと思っていたが、名無しを悲しませるぐらいならば
堂々と名無しは私のものだと知らしめよう
君の憂いが晴らせるならば
私はもう、何も恐れないヨ」
『隊長…私…』
どちらともなく、唇が重なり合う
五月蠅いくらいの心臓の音も、
最早自身のものかも分からない
私も、もう恐れません
姿を誤魔化す必要も、
日傘で隠す必要もありません
隊長に愛されているという事実だけで、
私はもう、何も怖くない
互いの赤く染まった頬に笑みを零しながら、
私達は幾度も口付けを交わした
…後日、涅隊長によって瀞霊廷内全体に放たれた地獄蝶での堂々たる私との交際宣言で、
阿近さんや同僚達から労われて死ぬほど恥ずかしい思いをするのは、また別のお話
end
