2015.09.20 異譚レナトス無配

(2015/09/22)



七月三十一日 中原
 太宰が一ヶ月の間俺と恋人ごっこをしたいと云い始めた。暑さにやられて遂に頭がおかしくなったらしい。

八月一日 太宰
 手始めに手でも繋ごうかと提案したら次の瞬間何故か手錠で手を繋がれていた。中也って意外と束縛するタイプだったんだ……。初日からキツい。


八月二日 中原
 あんまりふらふら勝手にどっか行くもんだから後ろから抱き締めてジャーマン・スープレックスを極めた。


八月三日 太宰
 デェトに誘ったら映画に行くことになった。内容は薄かったけど隣を見ると中也は「へぇー」とか「ほぉー」とか存外楽しそうに観ていた。


八月四日 中原
 昨日のデェトは楽しかったなと云ったら何故か顔を赤らめられた。


八月五日 太宰
 恋人なら善いかなと思ってキスしてみた。何故か受け入れられてしまった。


八月六日 中原
 朝起きたら太宰が先に起きていた。寝惚け眼で俺の襯衣に腕を通そうとして、「あれ、あれ? 私おっきくなっちゃった……」と云っていた。阿呆だ。


八月七日 太宰
 とある筋からナース服を手に入れたので着用の上帰宅した中也を出迎えてみた。こっ酷く叱られた。


八月八日 中原
 つーか何で太宰が俺んちに居んだ。食料が足りねえ。買い出しに行ったら「あれが欲しい」と宝飾店のショーウインドウを指すもんだから「また今度な」と云った。今は食料だ。


八月九日 太宰
 任務で帰りが遅くなった。深夜に中也の家に行くのもなあと思ったけれど、着替えを置きっぱなしのことを思い出して寄った。中也が何故か未だ起きていて、ひどく心配そうな顔をしていた。


八月十日 中原
 敵の異能を食らって猫耳が生えた。思い出したくない。


八月十一日 太宰
 敵の異能者は撃退したけど私としてはもう少し中也に猫耳が生えていてもよかったと思う。撫でると気持ちよさそうにしていたから。


八月十二日 中原
 何時もと違って今日は俺からキスしてみた。何故か太宰がひどく狼狽えていた。


八月十三日 太宰
 あんまりにも暑かったから二人でアイスを購って食べた。棒アイスをこれ見よがしに舐めていたら「回りくどい」と押し倒された。
 熱い。


八月十四日 中原
 敵の異能を食らって何故か女の体になった。つーか食らってんの俺ばっかじゃねえか。太宰が楽しそうに爆笑していたからまあ良しとする。


八月十五日 太宰
 流石に中也が女の子のままなのは困るけど一日くらいならと女の子の衣装を着せて遊んだ。中也も案外ノリノリだった。然し女性になっても美人だね。


八月十六日 中原
 今日は朝から任務だった。寝台から出ようとすると襯衣の裾を掴まれたから「未だ寝てろ」と頭を撫でたら引っ込んだ。此奴は存外甘えたがりだ。


八月十七日 太宰
 暑いなと思って夜中に起きると何故か中也にしがみついて寝ていた。覚えが無い。離れないとと思ったが、中也の寝息を聞いていると気持よくてやっぱりそのまま寝てしまった。


八月十八日 中原
 部屋に帰って「ただいま」と云うと、「お帰り」と奥の部屋から返ってきた。何時の間にか太宰の居る生活に、すっかり慣れてしまっている。


八月十九日 太宰
 今日はマフィアの招宴だった。スーツは中也の本領発揮だ。格好良いんだ。見ていると柄にも無くテンションが上がってついうっかり入水してしまった。


八月二十日 中原
 太宰の熱が引かない。当たり前だ、スーツのまま池に飛び込みやがって。けれど俺も引き上げた太宰を抱いて、誘われるままに一緒に踊っちまったのは悪かったと思う。


八月二十一日 太宰
 中也の料理は美味しくて好きだ。今度は私の料理もご馳走するねと云うと、俺はぜってえ食べねえと拒否された。


八月二十二日 中原
 今日は久し振りに二人で戦場に出た。やっぱ此奴とが一番滾んだ。


八月二十三日 太宰
 最低。何なの。中也のばか


八月二十四日 中原
 悪かった


八月二十五日 太宰
 ……なんでも一つ云うこと聞いて呉れるなら許してあげてもいい


八月二十六日 中原
 太宰が喧嘩もしたし一通り恋人イベント制覇だねと云っていた。あれ態とだったのかよ。怒る気も失せる。太宰が後は結婚くらいかなあと云うからじゃあ結婚するかと云った。そう云えば、指輪を購ってやってない。


八月二十七日 太宰
 今年の誕生日は任務で一緒に過ごせなかったけど、恋人なら来年は過ごせればいいなあ、その次も、ずっと……。


八月二十八日 中原
 指輪を購って、適当な教会に忍び込んで誓いのキスを交わした。死が二人を分かつまで。そう告げると、太宰は擽ったそうにしていた。


八月二十九日 太宰
 気が付けば指輪を頻りに撫でてしまう。体がだるくてソファでごろごろしていたら、中也が目一杯構って呉れた。


八月三十日 中原
 太宰を抱いていると、満たされると同時にひどく不安になる。何処かへ消えてしまうような気がして、気付けばひどい痕を付けてしまっていた。


八月三十一日 太宰
 今日で丁度一ヶ月。幸せだったなあ。付き合って呉れてありがと、中也。














九月一日 中原
 太宰のやつが帰ってこねえ。


九月二日 太宰

 




九月三日 中原

 




九月四日 太宰

 




九月五日 中原
 太宰の主治医が血相を変えて太宰を探していた。聞けばいつまで経っても処方箋を取りにこねえから心配になって探しにきたと。問い詰めれば驚いた様子で「ご存じないのですか」ときたもんだ。太宰治が病に冒されていることを、ご存じないのですか、だと? こっちだって、彼奴の秘密主義には反吐が出てんだ。
 太宰。手前今何処で何やってやがる。


九月六日 太宰

 




九月七日 中原
 川で太宰が発見された。何時もの自殺未遂だ。死んではいない。昏睡状態だ。目覚めるかは判らないらしい。
 莫迦野郎が。


九月八日 太宰

 




九月九日 中原
 太宰。俺は、手前のことが、

――(ここから先は黒く塗り潰されていて読めない)――



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