Brand New Days


「……それは、私と私の会社を陥れようとする何者かの陰謀だ。シルバ製薬は多くの人々の為に治療薬を提供した……」

ミラージュはリビングのテレビから低く流れる淡々とした男の声を耳にしながら、起き抜けのコーヒーを飲んでいた。
モニターには、シルバ製薬CEOデュアルド・シルバが大勢の記事達に囲まれ、マイクを突き付けられている映像が大写しになっている。
帽子を深く被り、影になった顔から表情は見えづらかったが、鍔の下から見え隠れする緑色の瞳は何事にも動じていないようだった。
ミラージュは彼の顔を遠くから一度見たことがあるだけだったが、オクタンと同じ色の瞳を持つその男に、同じような親しみを感じることなど到底できるはずもなかった。
今も同じだ。ただ冷たく、ガラス玉のように世界を写すだけの抑揚のない眼で、いかにもといった風に息子をダシにして世を憂いている。
――確かに、飯が不味くなる顔と声だな。
オクタンが常にこの冷徹な視線に晒されて育ったのかと思うと、正面から目を合わせたくなくなる気持ちも分かるような気がした。
ミラージュは、ふとため息をついて壁の時計を見た。
午前九時過ぎ、いつもならオクタンが腹を空かして起きてくる頃だが、今ここに彼はいない。


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