ミラージュが何故か不参加に

空港のゲートを出てエントランスに向かう途中で、オクタンの姿を見つけた。
パーカーのフードを深く被っているが、いつも大体ハーフパンツを履いているので、義足ですぐに分かる。
正体を隠す気があるんだかないんだか。
「お帰り、ミラージュ。調子はどうだ?」
「おう、バッチリだ」
俺は早速、バッグから袋を取り出してオクタンに渡した。
「エンジェルシティの土産だ。欲しかったんだろ?」
オクタンが訝しげに袋を開けると、中に入っているのはエンジェルシティ名物の日本語Tシャツだ。
前面に大きくカタカナで『オクタン』と書かれている。
「……ダセェ」
明らかに不満げな様子に、笑いがこみ上げる。
「そっちはおまけだ」
俺はオクタンの腰を引き寄せて、迷わず唇を重ね合わせた。
柔らかい唇の感触を確かめてから顔を離すと、すぐにあいつの唇が吸い付いてきて、両腕と片脚でがっちり俺にかじりついた。
「むぐ……」
入り口を探すように舌がもどかしく動く。
俺は口を開けてそれを掬いとり、優しく絡ませた。
人目も気にせず、抱き合ってキスを繰り返す俺たちの遠くから、キャーとかワーとか言う声があがり、一斉にカメラのフラッシュがたかれる。

まいったな。
どうやら明日のアウトランズジャーナルの一面は俺たちで決まりみたいだぜ……。


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