オクタビオ・シルバの肖像


クーベン・ブリスク(APEXゲーム主催者)
「俺があの小僧を、レジェンドとして迎え入れた一番の理由は、そのギラギラした眼光を気に入ったからだ。いくらライフラインの口利きとはいえ、ネット上でちょっと名の売れただけのスタントマン崩れを、やすやすと参加させる気はなかった。最初はな。
APEXゲームとレジェンドは、スペシャルな存在でなくてはならない。
もちろん、事前の調査で、奴の素性やこれまでの経緯は、すべて明らかになっている。
本来なら、奴はゲームに多額の金をベットする側の人間であり、財産や地位などは生きてさえいれば自然に転がり込んでくる、そういう星の下に生まれた男だ。退屈しのぎなら他にいくらでもあるだろう。
だが、俺の目の前に現れたオクタビオ・シルバは、何かに飢えたように緑色の瞳をギラつかせ、自分をゲームに参加させてくれと繰り返した。素顔を晒していたのは、あいつなりの誠意だったのかもな。
「あんたの期待は裏切らねぇよ」
オクタビオは、半ば懇願するように俺に詰め寄った。「ここじゃ、俺が何者であっても関係ねぇ、勝ちゃそれでいいんだろ? それこそ俺の望んだ世界だ。頼む、俺は自分の力で人生を切り開きてぇんだ」
「お坊ちゃまに何ができるんだ?」
俺の挑発に簡単に乗った奴は、懐から取り出した緑色のスティムを、いきなり自分の腕に突き刺した。こめかみに血管を浮き立たせ、ぶるぶると震えながらまるで猛獣みたいに唸っている。俺の知る限り、興奮剤を生身の体に打ち込んだバカは初めてだ。
驚くよりも呆れている俺の前で、アドレナリンの奔流ですら支配してやると言わんばかりの眼が不気味に輝いている。
もっとも、後になってそれがちゃんとあいつ用に調整されている事を知ったがな。オクタビオは俺にハッタリをかましたわけだ。
「いいだろう」
俺はグラスに残っていた酒を飲み干し、レジェンドの証である赤いAPEXプレデターのカードを胸ポケットから取り出した。
それを受け取ったオクタビオ・シルバは飛び上がって奇声を発し、あろうことか、俺の首っ玉にしがみついて頬っぺたにキスしてきやがったんだ。
それまでの切羽詰まった表情から一変して、満面の笑みを浮かべた表情は、まるっきり子供のそれだったな。
とにかく、オクタビオのレジェンドとしての仕事ぶりには満足している。
時々羽目を外しすぎて、ゴシップ紙やニュースを騒がせるのもご愛嬌だ。聖人君子ばっかじゃゲームもつまらねえだろ。
あいつは俺に金を運んできてくれるからな、多少の事は多目に見るさ」

ブラッドハウンド(レジェンド)
「オクタビオは動物が好きなようだ。昔うさぎを飼っていたと言っていた。アルトゥルとは仲がいい。
この間、彼のおやつだと言って、チョコレートを差し入れしてくれたのだが、残念ながら人間の食べるようなお菓子は鳥に与えると害があるのだ。せっかくなので代わりに私が頂いたが、素晴らしく美味だった。
オクタビオはあまり甘いものを好まないそうだが、エリオットのために買ったついでだと、はにかんでいた。可愛いところがあるではないか。
彼は類まれなる闘争心と、どこか人を和ませる愛嬌を持っている。神々もきっと、彼を愛さずにはいられないだろう。ゆえに、その魂をヴァルハラに所望されぬよう願うばかりだ」

ジブラルタル(レジェンド)
「オクタビオは愉快な奴だが、ちょっとばかり危なっかしい所もある。いつだったか、俺のバイクの後ろに乗せてやった事があるんだが、あいつはタンデムシートの上で立ち上がって、曲芸みたいなことをやり始めたんだ。それで案の定後ろに吹っ飛んでいった。ゲームでもそうだ。まるで命を擦り減らすかのような戦い方をする。
スリルを求めるのは結構だが、俺の前で命を粗末にするような事はするな、そんなに死にたいのかと叱ったら、俺は死に場所を求めてるんじゃねぇ、生きる場所を求めてんだって言い返してきやがった。それを聞いて少し安心したぜ。命を救うのが俺の仕事だからな」

パスファインダー(レジェンド)
「オクタンは僕の親友の親友だから、僕にとっても親友さ。親友っていうのはミラージュのことだよ。知ってると思うけど。オクタンはたまに酔っ払って僕のことを「クソったれの鉄くず」なんて言うけど、ミラージュはそれはオクタンの親愛の証なんだって言ってた。だから僕も親しみを込めて彼の事を「出来損ないの鉄くず」って呼んであげてるんだ。僕らって、とっても仲良しでしょ?」

レイス(レジェンド)
「オクタンは風ね。疾風のように現れて、ある日ふと居なくなるんじゃないかとそんな気もするわ。エリオットがそうはさせないでしょうけど。
彼の周りを、つむじ風みたいにくるくると回っている姿は微笑ましくて、エリオットもそんな彼をとても愛おしそうに見ているの。
あの二人を見るのは好きだわ。忘れそうになっていた自分の中の暖かい気持ちを思い出せる。
かつては私にも……いえ、何でもないわ。少し隠れるわね」

バンガロール(レジェンド)
「いつも興奮剤をぶっ刺して真っ先に突撃していく、それがシルバね。戦略なんてないの、ただ敵がいるから走って撃って、その繰り返し。
まったく怖いもの知らずのふざけたガキよ。私の事をお姫様だなんて言ったりして。
でも、新兵の頃に比べたら、ちょっとはましになったんじゃないかしら?誰かさんのお陰かもね」

コースティック(レジェンド)
「あいにくだが、私にはあの小僧に対する興味が一切ない」

クリプト(レジェンド)
「オクタンは、はっきり言ってうるさいとしか言いようがない。いつも隣のブースで爆音で音楽を鳴らしたり、大声をだしながらゲームをやったりしている。
その度に注意してるが、一向に聞きやしない。
俺の事を小バカにしたようにクリプちゃん、なんて呼んだりする。……あれはウィットの影響だな。一人でもうるさいってのに、二人揃うとこの上なくたちが悪い。今度二人まとめてEMPスペシャルをだな……、いやこれは記事にしないでくれ。俺の方が馬鹿に見える。なんだかんだしゃべりすぎたようだ、失礼する」

ワットソン(レジェンド)
「オクタンに初めて会ったのは、シーズン2のトレーラーの撮影の時ね。彼は落ち着きがなくて、常にあちこち動き回ってアニータに叱られてたわ。
同年代の男の子とあまり話したことがなかったから緊張したけど、オクティは初対面の私にも気さくに話し掛けてくれて、心強かった。
撮影中にリパルサーの塔が爆破されるアクシデントがあったけど、あの時オクティがそれに巻き込まれたのは、もしかしたらわざとだったんじゃないか、って思ってるの。彼の足の速さなら、十分逃げられたはずだもの。度胸試しのつもりだったのかしら?彼ならやりそうなことよね。
でも、その時割れたゴーグルから見えた左目は、意外なほど優しくて、これがあのオクタンなの? って、そう思ったわ」

レヴナント(レジェンド)
「あの皮付きの考えていることはよく分からん。脳みそが入っているのかも疑わしい。
ただ、奴が真っ直ぐに死に向かって走る姿を羨ましく思う事がある……。ただ生きて死ぬ、それだけのことがなぜ私にはできないのだ…?」

ローバ(レジェンド)
「オクティはああ見えて、ハイ・ライフを知ってるレジェンドのひとりよ。時々思うの、あたしが彼だったら良かったのにって。もちろん自分のことは好きよ。でも、持たざる者として生まれ、成り上がったあたしと、それを惜しげもなく捨てたあの子……運命って皮肉よね。
オクティとは時々、ポルトガル語やスペイン語で内緒話をしたりもするの。何を話すかって? それはご想像にお任せするわ、ベイビー。そうね、彼はとてもチャーミングだと思うわ」

ランパート(レジェンド)
「オクタンについて? あいつはウィットがバーにいるときは、必ずって言っていいほど、カウンターの隅っこでちびちび飲んでるよ。ウィットが浮気しないように見張ってるんじゃないか? ウィットはウィットで、オクタビオはかわいいから、誰かに取られないか心配なんだ〜、なんてマジな顔で言ってるけど、オクタンがかわいいとか(笑)色ボケしすぎて目がくさっちまってるんだな、かわいそうに」

ホライゾン(レジェンド)
「あの子は口が悪くてやんちゃだけど、とっても優しい子だと思うよ。頭の回転も早くて、物事の本質を掴むのがうまいね。だけど、それを理論的に考えるのは苦手みたいだ。ひらめきと論理性、科学者には両方必要なのさ。もっともオクティは勉強が大嫌いだって言ってたから、科学者なんてクソくらえって言うだろうけどね。
おや、失礼。あたしったら、クソくらえだなんて、これじゃニュートに汚い言葉を使ってはいけません、なんて、とてもじゃないけど言えないねぇ(笑)」

ヒューズ(レジェンド)
「俺とあいつは似てるとこがあるな。常に血がたぎるような興奮を求めて戦ってる、ってとこがよ。だが、俺の域に達するにはまだまだだな。
自前でアドレナリンってやつを出せるようにならねえとな。あんな細っこい体に注射針をおっ立ててるのを見ると、いささか心配にもなるぜ。このヒューズを見ろ。いつだってバリバリ全開だぜ!?
ま、オクタビオは俺にとっちゃかわいい舎弟だ。みっちり仕込んでやるさ、サルボ流の戦い方ってもんをよ!」


〈街のファンたちの声〉
いつもオクタンに元気をもらってる!(10代男性)
なんか後ろ姿が寂しそうで、抱きしめてあげたい(20代女性)
ミラージュとの仲が気になる。2人がおなじチームにいるとすごくドキドキしちゃう!(30代女性、独身)
なぜあんな破れたズボンを履いてるのかね? 流行ってるのかい?(60代女性)
オクティかこいい!(4歳女性)
彼が○○の息子って本当なのか? 同じ業界にいるもので、ちょっと気になる(30代男性)
早死にしそう(20代男性)
手掴みで飯食ってそう(20代男性)
頭悪そう(20代男性)
ファンサービスが神! 大好き!(10代女性)

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