パーティーはまだ始まらない


「残念だったな。けど、出だしからしてみれば、俺らもなかなか頑張ったんじゃねぇか? 特に、俺が」
ゲームの結果は2位だった。
最後は高所を先に取っていたパスファインダーの部隊にやられちまったが、ミラージュの言うとおり、なかなか熱いゲームだった。途中色々あったしな。
あれからレイスは、エースの名にふさわしく次々と敵をなぎ倒し、俺とミラージュはシャドウとアシストに徹した。
目立ちたい気持ちだってもちろんあるが、エースにキラーパスを送るのもなかなか悪くねぇ。
こう見えて俺は素直なんだぜ?
この次はもっといい戦いができるさ。
「今度は勝って、盛大にパーティーでもしようぜ? なぁ、オクタン?」
そう肩を叩かれ、俺は思わずミラージュの顔を見つめた。
そうだよな、毎回同じチームになれるってわけじゃねぇんだった。
今度って、いつだ?
……残念会ってのは、ナシか?
マスクの下でモゴモゴと言い淀んでいるうちに、ミラージュは「そんじゃ、お疲れぃ!」と手を振って、シャワールームの方へと歩いていっちまった。
「まったく、自分の言いたい事しか言わないんだから……」
レイスが呆れたようにミラージュの背中を見送る。
「それじゃあね、オクタン。いいゲームだったわ」
「……なぁ、レイス」
俺は帰ろうとするレイスに、ふと頭の中に浮かんだ疑問を口にした。
「あんたとミラージュって、何かあんの?」
レイスは立ち止まって、不思議な水色の目玉をぱちぱちさせた。
純粋な疑問だ。他意はねぇ……はずだ。
言ってから何だか落ちつかなくなった俺は、答えを急かすようにレイスの事をじっと見つめた。
「……そうね、彼はいいチームメイトで、敵にまわると厄介な好敵手よ。そして、ゲームを離れれば、お喋りで世話好きな友人ってとこかしら?」
「ふーん……」
「この答えで満足?」
「ただ、聞いてみただけさ」
それ以上深入りしてくる事もなく、 じゃあね、とレイスは謎めいた微笑みを残して去っていった。
本当に、なんだって俺はそんなことを聞いたんだろうな?
レイスの言葉に、どこかしらほっとしている自分に気付いて、俺はしばらくそこでひとり首を傾げていた。

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