hermana


「ふ、ざ、け、ん、な。あたしはね、ミラージュがあんたの事をしつこく聞いてくるから、親切に教えてやってんのよ? 文句があるならミラージュに言いな!」
キレたあたしに恐れをなしたオクタビオは、殴られる前にジャンプパッドでどっかに飛んで行った。きっと、ミラージュの所ね。
なんやかんや、あの二人は上手くいってるみたい。
自覚のないノロケ話をよく聞かされるわ。
ミラージュだけじゃなく、オクタビオの方も、かなり重度のミラージュ依存症に冒されてると思う。
誰にでも分かりやすいミラージュと違って、オクタビオは上手く誤魔化してるつもりみたいだけど、あたしにはお見通しよ。

家に帰ってから、何となく昔のフォルダを開いてみると、小さい頃のあたしとオクタビオのフォトをいくつか見つけた。
それを眺めながら、しばし懐かしい思いに浸ってみる。
ミラージュの質問に答えるとしたら、あたしがオクタビオを男として意識したことは、多分なかった。
でも、近くに居すぎて、そんな必要がなかっただけなのかもしれない。
あいつが誰かのものになってしまうなんて、考えてもみなかったから。
だからあたしは、オクタビオの本気を感じて動揺したのだ。
ほんとの恋なんか、知らなくていい。
あんたはずっと、誰のものにもならずに、そのままでいて欲しいって、心のどこかで思ってた。
考えるまでもなく、それはあたしの自分勝手な願いで、二人が晴れて想いを通じ合わせたのを知ったとき、応援する気持ちにも祝福する気持ちにも嘘はなかった。
きっと、あのとき焦げたパンケーキと一緒に飲み込んだ、甘くて苦い気持ちのかけらは、時と共に風化していくんだと思う。
あたし達が、お互いにとって大切な存在だってことには、変わりがないから……。

アルバムを辿っていくと、パーティー用におめかしされて、ぽかんと突っ立ってるオクタビオがいた。
こうして見ると、ふわふわの金髪が、星の王子さまのさし絵みたい。……それは、ちょっと言い過ぎか。
ミラージュに見せたらさぞ喜ぶだろうなぁ。
きっと、可愛い可愛いって大騒ぎしてオクタビオに怒られて、みんなには呆れられるんだろうけど、あたしは知~らない。
あんたたちに処方する薬はないわ。
一生その幸せな病にかかってなさい。

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