バンバンブー


ワットソンに誘われて反省会とやらに来てみたが、これじゃ、いつも仲間内でダベってるのと変わらねぇじゃねぇか。
ワットソンはハンバーガーにいたく感動してるようだが、俺もその気持ちは分かるぜ。
俺んちの食事は豪華だったが旨くはなかった。
それにしてもワットソンは一体、何回パパって言うんだ?
ファザコンにもほどがあるぜ。
同じパパでこうも違うもんなのかね。
ま、どうでもいいさ。
さっきから、ミラージュは黙って俺の顔ばかり見てる。
俺がワットソンと話してるから寂しいのか? なんてな。あるいはその逆か。
ワットソンは胸がでかくて可愛いけど、ミラージュもこういう娘が好みなんだろうか?
こいつが黙ってると、なんだか調子が狂うぜ。
料理の話題になったのでミラージュに話を振ると、ようやくエンジンがかかったみたいに一気に喋りだした。
なんなんだ一体。
俺がさっきのキス未遂のことを非難すると、ミラージュはやらしい顔で
「大人だからできることもあるんだぜ?」
なんてうそぶきやがった。
どこからどこまでが本気で、どこからが嘘なんだ?
俺が主導権を握ってるかと思えば、いつの間にか入れ替わってて……よく分かんなくなってくる。
でも、退屈はしねぇな。
嵐のようなワットソンと別れて、物足りない気分でいると、ミラージュから飲みに誘われた。
もちろんだぜ。そう来なくっちゃな、アミーゴ。こないだの礼もあるし、今度は俺が奢ってやるか。
お気に入りだというパブに入ると、ミラージュは迷わずカウンター席を選んで、俺の右隣に座った。
向かい合わせが苦手だって、一度言っただけなのに、ちゃんと覚えててくれるんだな。それが単純に嬉しかった。
何なんだろう? このピタリとはまる感じ。
居心地がいいとはこういうことだ。
何気なくあいつの横顔を見て、あのときのふざけたキスを思い出したら、今ごろになって胸がドキドキしてきた。
マスクを外してほんとのお前にキスしたら、一体どんな顔をするんだろうな?
俺は、俺には必要ないと思ってたもんが、急に欲しくてたまらなくなった。
……なぁミラージュ、俺は決めたぜ。
今日からここが、俺の定位置だ。


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