バンバンブー
何だか落ち着かねえのは、ミラージュの視線を感じるからだ。
俺の気のせいか?
さいわい俺は、マスクとゴーグルをしてるから、どんな顔をしてるかなんて分かりゃしねえ。
お前が見るなら俺も遠慮なく見てやるぜ。
どれどれ、背は俺より少し高いくらいだな。
よく比べるために距離を詰めると、ミラージュは少し焦ったように一歩下がった。
構わず近くにある顔を観察していると、さらに一歩下がった。はは、面白れぇ。
悔しいが、こいつは確かにイケメンだぜ。
スカーフェイスはクールだし、ぽってりした唇が旨そうだ。
髪もヒゲも綺麗に手入れされてて、これから戦いに行くってのに、なんだかいい匂いがしやがる。
俺には理解できねぇ習性だが、女どもが夢中になるのもうなずける。
喋りさえしなければもっと完璧なのにな。
俺は可笑しくなって思わず笑っちまった。
ミラージュは変な顔をして「何だよ」と言った。
ちょっと顔が赤くなっている。
観察に夢中になって、近づきすぎていたらしい。
「もうちょい近付けばキスできちまうな」
からかい半分で言うと、ミラージュが少し身を屈めて俺のほっぺたを触ってきた。
「ちゃんと目を閉じるんだぜ」
なんて言うもんだから、俺はあいつもその気なのかと思って、目をつぶってマスクをしたまま唇をくっ付けた。
……と、思ったらそのまますり抜けて、ミラージュの姿がふっと消えた。
「騙されたな」
小屋の入り口であいつが笑ってる。
クソ、いつの間に……?。
俺様を弄ぶなんて、いい根性してるじゃねえか。
今度は絶対騙されねえからな。