ウィット家の人々


「何考えてる?」
オクタビオは俺の手を取って、この前買ったばかりのお揃いのリングに、薄く笑いを浮かべた唇を押しつけた。
そのままパーカーのポケットに導かれた左手は、やつの冷たい両手に包まれてぎゅっと握られる。
「やっぱり寒いんだろ。痩せ我慢してねぇで、上着を買いに行こうぜ? 夕方になったらもっと冷えるからな」
「まだどっか行くところがあんのか?」
背中を丸めてポケットの中の俺の手をさすりながら、オクタビオは白い息を吐いた。
鼻の頭が赤くなっている。
アリーナの雪山で見るこいつはいつも装備で顔を覆ってるから、こういう顔を見るのは新鮮で、やっぱり可愛いなと思う。
セクシーなの、キュートなのどっちが好きなの?なんていう歌があったような気がするが、俺は当然どっちのオクタビオも好きに決まってる。
大人と子供、可愛いと男前を微妙に揺れ動く、アンバランスなところがたまんねえんだ。
自分のコートの中に隠すようにオクタビオをくるんで、そっと唇を重ねる。冷たい唇を舌で撫でると、暖かい口の中に招かれて、俺たちは体温を分け合うようなキスを楽しんだ。
永遠にこうしてたいが、そういや行くところがあったんだっけな……。
「付き合ってくれるか? まだ、お前に紹介してねぇ家族がいるんだ」

商業区域のショップで、オクタビオがその日履いていたスニーカーの色に合わせて、暖かそうな赤いダウンジャケットを買った。
靴を履けるタイプの義足は激しい運動には向かないが、お洒落をするにはちょうどいい。
俺たちはレンタカーで、町外れの小高い丘の上にある墓地に向かった。
「墓参りにこんな派手なカッコでいいのかよ?」
「気を使うような連中じゃねぇさ」
めったに見ることのない厚着のオクタビオに目を細め「似合ってる」とほっぺたにキスしてやると、「不謹慎だぞ」といいつつ、くすぐったそうに笑って目を細めた。
それから俺たちは、何となく黙って手を繋いで丘を登り、ウィット家の先祖たちが眠る墓標の前に立って花束を手向けた。
「兄貴たちがここに眠ってる。じいさんばあさんとか、その前のご先祖さんたちも」
「……はじめまして」
かしこまって挨拶するオクタビオの動きはどこかぎこちなくて、柄にもなく緊張してんのかと可笑しくなった。
俺は、今までこいつには断片的にしか話していなかった家族のことを、ぽつりぽつりと話し始めた。
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