ウィット家の人々


シーズンオフになると、俺はエンジェルシティに帰省するのが恒例になっていた。
そのたびに母さんの面会やら帰宅やらに付き合わせるのも悪いので、無理に来なくてもいいと言うんだが、「ちょっとした旅行気分さ」と、オクタビオは必ずついて来た。
というのも、母さんは毎回オクタビオのことを忘れちまってるからだ。
何度も同じ話を繰り返したり、唐突に意味の分からないことを言い出す母さんに笑顔で頷き、意外なほど紳士的に、辛抱強く相手をしてくれるオクタビオに俺は頭が上がらない。
訪れたときには初対面同然だったはずなのに、帰る頃には母さんのハートをがっちり奪っちまうあたりは流石っつうか、こいつが自覚なき人たらしである所以か。
オクタビオのことは恋人だと紹介してはいるが、息子に男の恋人ができたことを母さんがどう理解しているのかは謎だ。
案外、今日の天気の話と大差ないのかもしれない。
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