たからもの

オクタンは眠るとき以外めったに義足を外さない。
いつでも走り出せるように、本当は寝るときだって外したくないのだが、着けっぱなしにするとさすがに足が痛むので、やむなくそうしている。
初めての夜、オクタンはミラージュに、義足を外した方がいいかと聞いた。
「そのままでいいぜ」
と、ミラージュは言った。
「やりにくくねぇか?」
下から見上げるオクタンを、愛おしそうに見つめながら、ミラージュは優しくキスを落とす。
「それだってお前の一部だろ? 俺はお前のことを、丸ごと全部愛してぇからな」
歯の浮くようなセリフも、ミラージュに言われれば、不思議と素直に心に染みた。
オクタンは安心して、ミラージュに身を任せる。
男とするのは初めてだからと、どこかぎこちなく遠慮がちな愛撫も、それとは反対に大胆に口の中をかき回してくる舌も、首筋に吸い付いてくる厚い唇も、感じる全てが気持ち良かった。
こいつはどう思ってんだろう?
柔らかい胸も尻もない、ごつごつした体に萎えたりしやしねぇか?
そんな心配は、ミラージュの顔を見たら、すぐにどこかへ吹っ飛んでいった。
いつになく真剣な目をして、額に汗をにじませながら行為に勤しむ姿が、おかしくて愛おしくてカッコ良くて、泣きたいような変な気持ちになった。
つまり、これが愛ってやつなのか……?
オクタンは、ミラージュのがっちりとした腰に、控え目に義足を絡ませた。
ミラージュは片手でオクタンの体を抱え、その鋼鉄でできた足を、優しく撫でてくれる。
感覚などないはずなのに、そこからじんわりとした熱が這い上がってくるような気がした。

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