第1話
name change
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誰かが隣に腰を下ろした気配でふと我に返った。
チラリと視線をやって、変な声が出そうになる。
(なんでここに……?)
例の黒ずくめの男たちだった。
サングラスをかけていても男の視線がどこを向いているのか、私には分かった。
私の手もと。描きかけのルパンの絵。
間違いない。
鼓動が早くなっていく。
気づかないフリを装ってタブレットを閉じようとすると、その手を男に掴まれた。
「そのままで。お嬢さん」
男は私の手を掴んだまま、もう片方の手でゆっくりとタブレットを取りあげた。
「絵がお上手だ」
勝手にタブレットを操作して、保存してあった過去の絵まで見ている。
何するの、とか、止めて、とかいう声は出てこなかった。
『ルパンを追っていた全身黒ずくめの男が、私の描いたルパンに興味を示している』
その事実があまりにも非現実的すぎて、頭がまったく働かない。
ルパン好きの変態か、それとも、ただの変態か。どちらかだ。
「ひ、人を呼びますよ」と、ようやくそれだけ言った。
しかし男は意に介さなかった。
「ご随意に。どんなに大声を上げたところで無駄だ」
男が顔を上げ、つられて私も周りを見た。
バス停の外側がヴェールをかけたようにぼんやりとしている。
「何、これ……」
私は立ち上がってその境界へと手を伸ばした。
男の声がそれを制する。
「あぁ、触らない方がいい。手がもげる」
「⁉︎」
手が、何だって?
私は錆びたロボットのようにギ、ギ、と首をねじって男を振り返った。
男は真顔でこう言った。
「君と話をするために、一時的にこの空間を遮断している。この世界の人間は誰も入って来られないし、誰も気づかない」
何、空間を遮断って。
何、手がもげるって。
なに⁉︎ 手がもげるって⁉︎
「そんな顔をしないでくれ。君に危害を加える気は毛頭ない。きちんと説明する」
男は立ち上がり、代わりに私にベンチに座るよう促した。
私はぎこちない動きでベンチに戻る。
「我々はこういう者だ」
男は警察バッジのようなものを私の前に差し出した。
エンブレムのような複雑な模様の中にアルファベットの飾り文字が見てとれる。
「T、R……?」
「ツァイト・ウント・ラウム。時間と空間」
バッジを仕舞った男は私に顔を向けた。
私の反応を確かめるようにじっと見つめながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「我々は時空管理局のエージェントだ。この世界に出現したルパン三世を捕らえるために来た」
時空。エージェント。ルパン。
何これ。夢なの?
非現実的にも程がある。
早く目覚ましが鳴れば良いのに。
「ルパンって、さっき追いかけていたコスプレの……」
「偽物ではない。彼は正真正銘、本物のルパン三世だ」
「何をバカな」
思わず呟くと、男はタブレットを突き返してきた。
「ならば見せてくれるか。彼が偽物だという証拠を」
言われるがまま、私はルパン三世の名前をウェブ検索にかけた。
いっぱい出てくるはずだ。
ルパンを生み出し、漫画にした人。それを読んだ人。
アニメにした人。それを見た人。
それらを見せれば、架空の人物だという認識が正しいと証明できる。
ハズだった。
チラリと視線をやって、変な声が出そうになる。
(なんでここに……?)
例の黒ずくめの男たちだった。
サングラスをかけていても男の視線がどこを向いているのか、私には分かった。
私の手もと。描きかけのルパンの絵。
間違いない。
鼓動が早くなっていく。
気づかないフリを装ってタブレットを閉じようとすると、その手を男に掴まれた。
「そのままで。お嬢さん」
男は私の手を掴んだまま、もう片方の手でゆっくりとタブレットを取りあげた。
「絵がお上手だ」
勝手にタブレットを操作して、保存してあった過去の絵まで見ている。
何するの、とか、止めて、とかいう声は出てこなかった。
『ルパンを追っていた全身黒ずくめの男が、私の描いたルパンに興味を示している』
その事実があまりにも非現実的すぎて、頭がまったく働かない。
ルパン好きの変態か、それとも、ただの変態か。どちらかだ。
「ひ、人を呼びますよ」と、ようやくそれだけ言った。
しかし男は意に介さなかった。
「ご随意に。どんなに大声を上げたところで無駄だ」
男が顔を上げ、つられて私も周りを見た。
バス停の外側がヴェールをかけたようにぼんやりとしている。
「何、これ……」
私は立ち上がってその境界へと手を伸ばした。
男の声がそれを制する。
「あぁ、触らない方がいい。手がもげる」
「⁉︎」
手が、何だって?
私は錆びたロボットのようにギ、ギ、と首をねじって男を振り返った。
男は真顔でこう言った。
「君と話をするために、一時的にこの空間を遮断している。この世界の人間は誰も入って来られないし、誰も気づかない」
何、空間を遮断って。
何、手がもげるって。
なに⁉︎ 手がもげるって⁉︎
「そんな顔をしないでくれ。君に危害を加える気は毛頭ない。きちんと説明する」
男は立ち上がり、代わりに私にベンチに座るよう促した。
私はぎこちない動きでベンチに戻る。
「我々はこういう者だ」
男は警察バッジのようなものを私の前に差し出した。
エンブレムのような複雑な模様の中にアルファベットの飾り文字が見てとれる。
「T、R……?」
「ツァイト・ウント・ラウム。時間と空間」
バッジを仕舞った男は私に顔を向けた。
私の反応を確かめるようにじっと見つめながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「我々は時空管理局のエージェントだ。この世界に出現したルパン三世を捕らえるために来た」
時空。エージェント。ルパン。
何これ。夢なの?
非現実的にも程がある。
早く目覚ましが鳴れば良いのに。
「ルパンって、さっき追いかけていたコスプレの……」
「偽物ではない。彼は正真正銘、本物のルパン三世だ」
「何をバカな」
思わず呟くと、男はタブレットを突き返してきた。
「ならば見せてくれるか。彼が偽物だという証拠を」
言われるがまま、私はルパン三世の名前をウェブ検索にかけた。
いっぱい出てくるはずだ。
ルパンを生み出し、漫画にした人。それを読んだ人。
アニメにした人。それを見た人。
それらを見せれば、架空の人物だという認識が正しいと証明できる。
ハズだった。