-
-
-
???
う、うわああああああ!!!!!
-
静寂に包まれた館内で突然の叫び声。それは質の悪い目覚まし時計のように響き渡り、各々を呼び起こすには十分すぎる程だった。
-
クリス
な、なんだ!? どうした!?
-
声を聞きつけた一同は皆、声のする方へと足早に駆けつけるのだった。
-
マイク
!? フェイか!? どうした!? 何があ……うっ…。
-
一足先に駆け付けたマイクが見たものは、無残にも変わり果てた”名も知らぬ男だったモノ"だった。
-
クリス
なん…だよ…これは…。
-
フランク
…
-
スーザン
これは…。
-
フェイ
ああ…あああ…。
-
ジェシカ
そんな…酷い…。
-
ショーン
……。
-
サンドラ
お姉様、あまり見てはいけません…お体に宜しくありません。
-
ジェイ
ふむ…これは…おおよそ人が行った犯行には見えないな…何か鋭利なもので首を落とされたにしてはやや切り口が雑過ぎる…どちらかというと無理やり首をもぎ取ったような、そんな風にも見えるが…。
-
クリス
ジェイは何かそういう心得があるのか? 俺もジェイには同意見だが…しかしこれは…こんな芸当、人に出来るとは到底思えんな……。
-
クリスとジェイは男の遺体を調べ、凶器を探るもそれらしきものとは合致しなかった。二人の脳裏によぎるのは──
-
ショーン
…人狼…ですか…。
-
ショーンの言葉に全員が口を閉ざす。それは皆が思い描いていた事だったことに他ならない。
-
マイク
…一応確認だが、フェイ。お前が第一発見者、という事になるが。
-
フランク
マイク、まさかフェイを疑っているわけじゃないだろうな?
-
クリス
落ち着けフランク、マイクの言い分を最後まできこうじゃないか。
-
マイク
…すまない。いや、いずれは誰かがじいさんを見つける事にはなったと思うが、一応…な。
-
フェイ
あああ、あの…ぼ、ぼくは…ぼくは…うぅ…ぐす…こんな…。
-
スーザン
フェイ…落ち着いて…大丈夫だよ、誰だって最初に見つけていたら取り乱すさ…ゆっくりでいいよ。
-
スーザンは取り乱すフェイに歩み寄り、フェイの隣へと腰を下ろし、背中を抱きしめて優しく諭した。
-
クリス
しかし部屋がやけに綺麗だな…とても争いあったようには見えないな…気づかれないように殺されたか…? それとも…じいさんが抵抗をしなかった…か? 抵抗するより早く殺したのか…? 何れにせよ不自然極まりないな…これをどう読むか…。
-
ショーン
考えたくはないがこれはやはり人狼の仕業、として一旦は考えた方がよさそうかな。確証は確かにまだないが、ジェイとクリスが言うのだから人の仕業として片付けるのは難しいのだろう。
-
ショーンの言葉は本来であれば本当にあり得ない話だった。しかし、今ここにいる全員がショーンの言葉には同意せざるを得ない状況であったのも確かだった。
-
クリス
スーザン、悪いがフェイの事を見ていてやってくれないか? 俺たちはとにかく情報が欲しいから一旦は屋敷を調べて何か手掛かりになるようなものを探そうと思う。
-
スーザン
分かったわ。よろしくね。
-
クリスの提案に一同は、人狼についての手がかりを探すこととなった。
-
~~【書斎】~~
-
フランク
流石に昨日の今日でこんな事はばかげているが…遺体を見た以上は一先ず納得するしかないか…何か情報があればいいが…書斎ならとにかく文献が揃っているし何かしらの情報は手に入れられると踏んだが、どうだ…?
-
フランクは書斎にたどり着き、一冊一冊丁寧にページをめくっていく、が、手掛かりになりそうなものは見当たらなかった。
-
クリス
なんだ、フランクか…書斎が見つからなくて手間取ったが考えることは同じか…で、何か手掛かりは?
-
訪れたクリスの問いかけにフランクは"何もなかった"と言いたげな表情をして返事をした。
-
クリス
そうか、何もなかったんだな…俺も手伝うからひとまずは全ての本を調べてみよう。
-
フランク
分かった、何かあるといいがな。
-
クリス
そうだな、そもそも情報がない限りは何をどうすればいいのかも分からないしな…。
-
お互いの口数が段々と減り、ただただ本を読み漁り、無駄とも思えるような時間が過ぎて行った。
-
フランク
おい! クリス!
-
あれからどれくらい経ったのか、包まれた静寂は、まるで夜が明け、朝が来るかのようにして破られた。
-
クリス
なんだ? 何かあったか!? フランク!
-
フランク
ああ、こいつをみてくれ。
-
フランクから手渡された一冊の古い本、ページを開いてみるとそこには震えた手でかかれたかのような、誰かの日記のようなものだった。
-
クリス
これは…本当の事なんだろうか…?
-
フランク
分からん、が、手書きである点、それからこの字の書き方…恐らくは震えていたのだろう…それは恐怖心からなのか、それとも死に際だったのかは分からんが…ページの量からするに日々書きためていたものだろう。
-
クリス
一先ずこれを皆に伝えて共有しておく必要はありそうだ。
-
クリス
しかしこの情報…これを遺した人物は一体どこでこの情報を…ん…? これは……?
-
クリスは何かに気付く。そこにかかれた文字は──
-
クリス
シンディ…。
-
フランク
?
-
クリス
この本のここ、よく見てくれ、Cindyと読めないか?
-
フランク
やや文字がかすれているが確かに、そう読めないことはないな。とするとこの本をかいた人物はシンディ、という事か…女か?
-
クリス
屋敷の広間に大きな絵画があったのを知ってるか? あの絵画の下に取り付けられていたプレートにはCindyと書かれてあった。おそらくはこの屋敷の元住人、それもお偉いさんだった可能性がある。
-
フランク
なるほど…まぁもう少し読み進めてみよう。
-
クリス
ああ、そうだな。
-
クリスとフランクは記された文字を一つ一つ丁寧に読み、そして頭の中で整理していき、お互いに意見を出し合った。
-
???
突…、私の心に話し……た者がいた。
声の主は言った。
この屋敷は直ぐに……の住処として生まれ変わると。
私には何の事かはさっぱり…からなかった。
けれど私はその翌日、ある出来事に巻き込まれてしまった。 -
???
朝、使用人の叫び声で目が覚め、皆が集まった…で、見てはいけない……を見た。
首がすげ落ち、……だったものが…の塊としてただそこに横たわるだけの光景を。
私は確信した。
昨日の声は夢では………たのだと。
そしてこれを発端に全ての屋敷の…が巻き込まれることも。 -
???
私は悟った。これが人狼の仕業なのだと。
そしていずれ私も死ぬであろうことも。
そうなる前に、私が聞いた全ての…をこ…に記すことに…た。 -
最初のページにかかれていたものは、所々字が霞んでおり、正しく読むことは出来なかったが、二人はおおよその検討を付けて解読していった。そうして読み進めていく事で"人狼"について、この屋敷にこれから起こる事が記されていたのであった。そのページは強く書かれていたのか、字はしっかりとしており、かつかすれて読めなかった文字も見当たらなかった。
-
???
"声"は言った。
この屋敷に残るのは必ず9人である事を。
そこから一人ずつ死んでいくことを。
特別な能力が宿る事を。
人狼は全部で2人。狂人と名乗るものが1人。占い師が1人、霊能者が1人、狩人が1人…
その他の3人には能力が与えられていない"正真正銘の人間"である事を。 -
???
信じられるだろうか? こんなことが。
まるでお伽話の世界のようだ。
だが私はこれを信じるしかなかった。
いや、信じざるを得なかった。 -
???
そうして私は"占い師"として戦う事になった。
来る日も来る日も声が現れ、私に人狼が誰なのかを助言してくれた。
心強かった。
私が唯一人狼が誰であるのかを知っている、その情報は何よりも支えとなった。 -
クリス
これは…昨夜の俺と同じ…か…シンディも占い師だったんだな…。
-
フランク
"声"っていうのはなんなんだろうな。じいさんだか誰だかが言っていた語り掛けられる、っていうあれか? ん? それを言っていたのはジェイ…だったか?
-
クリス
…ああ、そういう事らしいな。それが本当かどうかは疑わしいものだが、一先ずはこれを"真実"と仮定して考えていこう。
-
フランク
そうだな。とにかく疑ってばかりでは何も始まらないからな。
-
???
声は続けた。
人狼が人を殺すのは簡単だ、と。
しかし行動を起こさなければ人は何もしないまま殺されるだけだ、とも。
ならどうすればよいのか?
…悩んだ末に私は決意した。
屋敷の代表として、 -
???
「1日に1人ずつ、疑わしきを罰する」事を。
この考え方は愚かなのかもしれない。
しかし私にはどうする事も出来なかった。
誰かにこれを打ち明けることもできなかった。
ただ分かっていることは、「待っているだけ」では殺されてしまうという事だった。 -
???
私は投票箱を設け、一番疑わしいであろう人物への投票を募った。
ここで最多数を集めたものを処刑し、人狼である事を祈る事にした。
この考えに誰も意を唱えるものはいなかった。それは私が屋敷の人間だったからだろうか。
それとも、皆同じ考えだったからなのだろうか。 -
???
投票時間は20時から21時の間に行った。
21時より開封し、最多数を集めた人物を発表、処刑に持ち込んだ。 -
フランク
…なるほど…疑わしい人物を殺すことで先に人狼を減らしてしまおう、そういうことか。
-
クリス
ふむ。しかし幾らなんでも非合理的すぎやしないか? もっと他に方法はなかったのか…? 例えば占い師が人狼を見つけるまで何もしない、とかさ。
-
フランク
まぁ確かにそうだな。でもこうは考えられないか? 先に一人を指定して殺すことで、もし仮にそれが人狼であるならば、良くて2日あれば他の人は襲われずに済むわけだし、占いの結果を待っているよりかは効率的ともいえなくはないが。
-
クリス
一理あるな…。だが結果的に処刑した人間が市民であるならば、それは無駄になるし罪もない人間を減らすという事にもなりかねんが…まぁならどうすればいいのかって言われると俺も今は思いつかないな。そう考えると流石は屋敷の人間、という事か。頭がきれてるとも言える。
-
フランク
…いろんな意見が欲しいな、一先ずこれを全員に説明して今後の対策を考えるとしようか。
-
クリス
ああ、そうだな、そうしよう。
-
二人はこの本を手に、皆を集めて、今後の流れを話し合う事にした。
-
ジェイ
…実に興味深い。後一つ疑問なのは、人狼が何の目的で屋敷の人間を殺すかって所なんだが…殺すことが目的であるのならば、わざわざこんな投票なんてじれったいことをせずとも食い殺せば済む話ではないだろうか。
-
スーザン
まぁそうよねえ…そもそも1日に1人ずつなんてなんでそんな事をする必要があるのかしら?
-
フェイ
そこまでは分からないけれど…何か事情があるのかなあ…人を殺すのって体力使うと思うし…1日1人が限度だったりして…。
-
ジェシカ
それは流石に人狼という概念を考えると微妙よね。人に憑りついて殺せるようなモノに体力なんて関係なさそうじゃない?
-
サンドラ
そうですね…占い師という役職にバレてしまう、という事なら、まずはバレないようにこっそりと数を減らして、最終的にはまとめて殺してしまう、そういう風にも考えられるかと思います。
-
クリス
ふー…わからんなこればっかりは、ただそう考えるとこの通りにやるとすれば1日に出る犠牲者は2人か…これを多いとみるか少ないとみるか…。
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マイク
処刑に反対、って事なら明確なルール? のようなものはなさそうだし、今夜はいったん投票なんて真似はしないで様子を見るのはどうなんだ? あと念の為全員が同じところに居るようにするとか、一人だけで行動は流石に危険すぎるし。
-
フランク
確かにそうだな…何も一人でいなきゃいけないってわけではないだろうしな流石に…投票だってこのシンディが考え付いた事であって何もこの通りにやらなければならないって事でもない。
-
ショーン
特に女性陣は固まっていた方が良いだろう。何かあった時に対応出来ないこともある。
-
クリス
…決まりだな。とにかく今日からは一先ず全員でここで寝泊まりして、席を外す必要がある場合は誰かに声をかけて共に行動をする、それでどうだ?
-
一同は反対もなく、クリスらの提案に賛同した。
-
フランク
…一ついいか?
-
ジェイ
どうした?
-
フランク
全員の部屋の中を見たわけじゃないから何とも言えないんだが、仮にこの本に書かれたことに乗っ取ってこの屋敷が新たに組み直されているとするなら、冷蔵庫にあった毒薬は、処刑方法の一つ、ともとれる気がする。
-
事情を知らない面々はフランクの言葉に恐怖した。
-
スーザン
ど、毒薬!? どうしてそんなものがあるって知ってるの!?
-
フランクは最初に出会ったクリス、ショーンとの事を話した。
-
フェイ
なるほど…つまり、この本の通りで行くならば、投票をして最多数集めた人に毒薬を飲ませて殺してしまう…と。で、それが人狼だったなら、人狼以外にとっては唯一の処刑方法…という事になるのかな。
-
マイク
じいさんの遺体から見て何かあった時に対応なんてここにいる全員誰も出来ないと思うがな。それに今の話を聞くと、どのみち夜になれば人狼が一人を殺すことを考えると、待っているのは得策ではないのかもしれんな…今こうして全員集まっているが、夜に人狼がここにいる全員を殺さないとも限らないぞ…?
-
クリスは煙草に火をつけ、少し間をおいて話す。
-
クリス
…一応能力の確認をしておくか…話は其れからでも構うまい。フェイ、頼めるか?
-
フェイ
う、うん。わかった。じゃあまずは占い師から。占い師は夜に一人を占う事でその人が人狼かそうでないかが分かる、という事らしい。ただし狂人は分からないんだって。これも本当かどうかは分からないけど。狂人には「人狼じゃない」って出るらしいから難しいね。
-
マイク
なるほど、占い師が占った結果人狼じゃないって言われてもそれが狂人の可能性があるって事か…。
-
フェイ
占う、とはいったけどそもそも占い方法だって分からないしそれが実在するかもわからないからね、何とも言えないところだけど。
-
ショーン
構わないよ、そもそも既に非現実的な事が起こりすぎている。どれだけうさん臭いものであろうとも、情報として共有、それが真実であるとまずは仮定すべきかもしれん。
-
フェイ
分かった…。次は霊能者。霊能者はその日に処刑された人物が人狼だったのかそうじゃなかったのかが分かるって事らしい。この霊能者の判定方法は不明。こちらも狂人に関しては人狼ではないって出るらしい。
-
フランク
…ほんとにとってつけたような都合のいい設定だな。ますますうさん臭さがにじみ出てくるな…。
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スーザン
まあそういいなさんなって。今はとにかく情報が欲しい、そうなんでしょ?
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フランク
…そうだったな、すまない。フェイ、続きを頼む。
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フェイ
うん。次は狩人。狩人は夜に一人だけ人狼の襲撃から守る事が出来るらしい。守り方も不明だけど、一応唯一人狼から誰かをまもる事が出来る能力。
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クリス
…とすると狩人が生きていれば犠牲者を最悪減らすことも可能、って事か。
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フェイ
次に人狼…人狼は誰かに憑りついて毎晩一人ずつ殺していくっていうこの話の中の核となるものなんだけど、最初に憑りつかれた時点では自分が人狼かどうかは分からないらしい。
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ショーン
…どういう事だ? それはつまり自分が人狼でありながら本当に自分が人狼かどうかはわからない、そういう事か?
-
フェイ
一応はそういう事みたいだけど…ほかの文献だと最初から分かっているとするものもあるし、段々と自分が人狼である事を自覚していく、ともあるから真偽は分からないね…。
-
ジェシカ
自分が人狼なのに自分でもわからないなんて、不便よね…。
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サンドラ
お姉様、あくまで可能性の話です。ここは一旦既に自分が人狼である事を分かっている、というていで進めた方が混乱せずに済むのではないでしょうか。
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クリス
ジェシカの言う通りだな、まずは自分が人狼である事を自覚しているとして進めた方がよさそうだ。
-
サンドラ
クリス、私はサンドラよ。
-
クリス
…ん? ああ、すまない…お二方が似ているものでつい名前を間違ってしまった、失礼。
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ジェシカ
大丈夫よクリス、よくある事だから。
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フェイ
お二人ともよく似てるし綺麗だもんね。
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スーザン
フェイ~私もいるんですけど~?
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フェイ
わー! スーザンさんもきれいですよ! とても頼りになるお姉さんって感じだし、実際僕は凄く救われたし、ありがとう。
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フランク
…もういいか?
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フェイ
あ、ごめんねフランク…。で、最後に狂人なんだけど、これがものすごく厄介というか、色んな説があって本当に難しいんだけど、まず一つは「自分が狂人である事を自覚」しているパターンで、この場合は、自分が人狼の味方をしなければならない、という事を自覚していく。でも誰が人狼かは分からないしそれを察知する事も出来ない。
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フェイ
人狼からも誰が狂人なのかは分からないっていう説。もう一つは、自分が狂人である事を自覚はしているが人狼の味方をしなければならないという所まで自覚はしていない説。
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クリス
…めんどくせえな…何も考えたくなくなってきたぜ…。
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ジェシカ
分かるよクリス…意味が分からないもの。
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フェイ
そしてこれが物凄く変なんだけど、誰かの能力と全く同じ声がきこえて、自分をその能力者だと思い込んでしまう事。
-
ショーン
…? 例えば、声に自分が占い師だと言われたから占い師だと思っていたが実際には狂人だった、みたいなそういう事が起こりうるって事か? 後人狼にはそういう声は聞こえたりしないのか?
-
フェイ
うーん…そうだね、人狼に関してはそこまでの話は一度も見たことがないから多分、ないんだと思う。
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クリス
もしそれが本当だとするなら、昨日の俺の声が本当に占い師のものかどうかも分からないし、なんなら俺が狂人だという可能性もあるわけか…そして…そういう事であればあの夜に聞いたショーンが人狼ではない、という事も嘘かもしれないという可能性も出てくるわけか…流石に俺が狂人だなんて考えたくはないな。
-
フェイ
大体こんなところだけど皆大丈夫?
-
マイク
なんとかな。取り敢えず真偽の程を確認したいんだが、昨夜何かしらの声を聴いた、っていう人はいるか? ここで名乗り出るのも違うかもしれんが、能力者は把握できた方がよくないか?
-
クリス
…マイクの言いたいことはわかるが、例えばそれを嘘ついて「聞こえた」という人間もいたりするのではないか?
-
ショーン
確かに…。
-
サンドラ
気持ちは分かりますがここは慎重に行きたい所ですね…。
-
ジェイ
…いや、仮に声が聴こえたのが何人かいても、話の中では人狼はそういった事がないわけだから、少なくとも声が聴こえたって人は人狼の可能性はないんじゃあないか?
-
クリス
だからジェイよ、口ではなんとでもいえるんだから合わせて乗ってきたら分からないだろう?
-
ジェイ
まぁ落ち着けクリス。仮にその声がすべて同じ声だったとするなら、どういう風に、どういう口調で、その声が男性のものか女性のものか、そういう所で一致させていけば整合性は取れないか?
-
クリス
んー…いや、それぞれ聴こえた声が全く違うものだった可能性を考慮するとそれは判断材料にはならない気がする。
-
ジェイ
ならこうしよう。声が聞えたっていう人をまずここで名乗り出て貰って、その全員で「何の能力を手に入れたか」を言ってもらえばいいんじゃないか? もし能力が被る事があれば、片方は偽者、被らなければそいつは本物、こうはならないか? これなら例えば人狼が声がきこえた、なんていっても能力が被ってしまえば怪しまれるし出てこれないと思う。
-
サンドラ
なるほど…それは良い考えかもしれませんね。
-
ジェシカ
でもそれって能力持ちが全員出るって事でしょう? 確か…唯一襲撃から守れるのが狩人、だったよね? ここで狩人が出ちゃったらその夜殺されない?
-
フェイ
うっ…確かにそれはあるね…じゃあ出る人を決めるって事でいいのかな。例えば…占い師だと言われた人だけが名乗る、とかそういう感じで…。
-
クリス
妥当だな。それでいこうか…とにかく情報がない事にはな、段々流れが分かってきたがするな…。
-
スーザン
そうねえ…例えば占い師だけ、っていうなら出ても1人、狂人の話を考えると2人まで出てくるのかな…。もし1人だったなら、人狼としてはそこを襲撃したいだろうし、狩人は占い師を護衛すれば…能力持ちは一先ず守れるという事になるかな?
-
クリス
スーザン、そういうことだな。つまり俺たちのキーとなるのは占いと狩人、って所か。そして残りの人狼が何人なのかを把握する為に霊能が教えてくれれば、作戦も立てやすくなる、と…重要度から見るに人狼を探さなければならない占い師が一番手、次にその占い師をまもるための狩人、その次が霊能、という事になるか。
-
ショーン
そうなるね。なら今日は占い師だけを出すか?
-
クリス
本当にそれでいいか…? 考えろ俺…ここで俺が占い師だとして出る事にメリットとデメリットがどれくらいのウェイトを占めているのか…だが占い師が出ない事には話は進まない上に…仮に俺だけだった場合…俺は本物として見られる上に狩人がまもってくれて、俺は人狼を探し続けることが出来る…な? じゃあ仮に二人出た場合は…? 片方はじゃあ狂人という事で見ていいか…?
-
マイク
占いが1人だけならいいが2人出た場合はどうする?
-
クリス
そこなんだよマイク。一人なら問題ないが二人となると話は別だ。二人のうちどちらかは偽者で、残された人たちは二人のうちどっちが本物かを考えなきゃいけなくなるからな。
-
スーザン
でも占いの情報は今一番必要な気がしてるし出た方がいいんじゃない?
-
ジェイ
そうだな、今誰が何の能力を持っているかは分からないから、例えば占いが出ればそこはまず人狼目はないって事だろう? 仮に2人出たとしても片方が本物で片方を狂人としてみることが出来る、そして本物の占い師が占った先の情報は今後の参考にはなると思う。
-
サンドラ
なるほど、確かにその通りですね…だとするならばここで出すのは占い師、霊能は占い師が2人でた場合に出るというのはいかがでしょう?
-
ジェシカ
霊能も出すの? どうして?
-
クリス
俺も少し聞きたいな、サンドラ。
-
サンドラ
はい…まず、占い師が一人だった場合、他の人たちからは占い師が本物であるとまず見るでしょう。そうなれば、その占い師を中心に話し合いを進めていけばよいのです。ですが、仮に二人出てしまった場合、どちらが本物かは分かりませんので、話し合いの軸になる人がいないことになります。
-
サンドラ
探偵であるクリス等、考察が得意そうな方にお任せするのもアリだと思いますが、その方がもし人狼であるならば、私たちは思うがままとなってしまいます。そこで先ほどクリスが言っていた重要度の話の中で、優先度の低い、かつ能力を持っている霊能者を出して、話し合いの軸になって貰えばよいのではないかと。
-
クリス
…なるほど。つまり早い話がリーダーを決めようって事か、ふむ、だが占いが2人でて霊能が2人でないとも限らないんじゃないのか?
-
サンドラ
例えば占いが2人、霊能が2人、なら占いに偽物が一人、霊能にも偽物が一人になりますよね? この状況、もし仮に能力持ちからどちらかを減らそう、と考えた場合、どちらを先に減らそうと思いますか?
-
フェイ
…霊能だね。
-
サンドラ
そうです。ですからここで霊能者が出て、もう一人霊能者が出る事はみすみす自分が処刑されてしまう所へ飛び込むようなもの、そう考えるなら早々出てはこれないと考えています。
-
スーザン
頭いいなぁ…そういうことかあ…確かにそれなら霊能で偽者が出にくいのも納得…。
-
クリス
よし、ならそれでいこう。というわけで占い師から出て貰おうか。
-
マイク
この中で夜に声を聴いて占い師だと言われた人は手をあげてほしい。
-
一同の声に、クリスとスーザンが手を挙げた。
-
クリス
俺が占い師だ。
-
スーザン
あれ? クリスも? 私も占い師なんだけど…。
-
ショーン
二人…か、とするとどちらかはもう偽者って事になるのか…。
-
フェイ
…なら…霊能者に出て貰うしかないのかな…。
-
クリス
分かった、ならまず、霊能を出す前に、占い結果を言ってもらおう。
-
スーザン
どうして?
-
クリス
例えば昨夜誰を占ったかを知っていても、ここで霊能が出た場合、その霊能に対して人狼じゃなかったよっていう事も出来るだろう? 直前で「明らかに人狼ではない人物に人狼ではない」と言えるからだ、簡単に出来てなおかつ強力、これを考えるならまずは占い師が誰を占って結果が何だったのかを言う方が良い。
-
クリス
そして、占い結果は同時に言うべきだ。以上の理由から本物が先に結果を言って、偽物がそこにあわせて同じ人を同じ結果を出すことが出来るからな。
-
ジェイ
仮に片方が狂人として、狂人は確か人狼が誰か分からないんだろう? わざわざそんな面倒な事をする必要性があるのか?
-
フランク
ああ…いや、何も人狼を探すことを目的にしなくとも、自分が本物である、と周りに思ってもらえればやりやすいんだから嘘の結果を言って信用を取るという作戦もなくはないだろう。そもそも人狼が誰か分からないっていう事なら、どれだけ占いをしても分からないって事だろう? まぁ狂人に聞こえる声が本当の事を言ってるんであれば…おのずと誰が人狼か分かってくるんだろうけど。
-
ジェシカ
なるほどね…結果的に占い師が結果を出してどっちが本物っぽく見せれるか、っていう占い師の戦いって事になるのかな~? ただフランクの言ってるようにもし仮に「本当の結果」を伝えられているとするなら、自分が狂人かどうかも分からない説を入れると下手すれば人狼をそのまま処刑対象にしちゃうこともあるんじゃない? 自分が本物の占い師だと思い込んでいるわけなんだし。
-
クリス
鋭いな、確かにその通りだ…だから俺の結果がショーン人狼ではない、にしても俺が仮に狂人だった場合、本当にショーンが人狼じゃないかどうかはもう分からない。嘘の結果を声が伝えているなら、ショーン人狼もありうる、そういう事になるしな…本当の結果だった場合、例えば次の日人狼を見つけて、その結果をいって処刑して、自分が狂人だったら、自分の仲間を殺したようなもんだからな…。
-
ジェイ
考えやすいようにするなら、狂人に聞こえる声は「人狼には人狼ではないと伝え、人狼以外の中から人狼であると伝えられる」と考えればいいかもしれんな、でなければ狂人、居ない方がいいまでないか? いくら何でも狂人自身が狂人らしい動きが出来ないんじゃないかこれ、それに人狼側からすればそれこそこんな狂人いない方がいいという所まであると思うんだがなあ…。
-
クリス
…ほかに考えられるケースは、狂人には自分が狂人である事を伝えられていて、かつ、占い師で出なさい、みたいに言われていたとしたら…話は変わってくるな。俺はこっちの説を推したいが。声の主はあくまでその能力者に対しての助言だとするなら、狂人には狂人への助言があるとみた方が自然ではないか?
-
フェイ
つまり、狂人が初日からどうするべきかをあらかじめ声が伝えているって事?
-
クリス
そういうことだ。
-
ジェシカ
でもまってよ、それならさ、そもそも今こうして私たちで決めた内容通りに事が運ぶとは限らないんじゃないの? 狂人はこうしなさいって言われたって私たちがその流れにならなければその作戦すら意味をなさないわ。
-
クリス
そこに関しては少し考えがある。俺とフランクが見つけた本、あれが仮に用意されていたもので、俺たちにこういう流れを作れと示唆しているものだったとするなら…結果的に俺たちはこの流れを作るしかないし狂人にそうして語る事も可能なんじゃないか、と思う。
-
スーザン
でもさっきまでは正直さ、投票しないで集まって寝ようね~みたいにもなってたじゃない? あれはどう説明するの?
-
クリス
なにも初日から出ろって言われたわけでもないと思うんだ。「もしそういう流れになったらこうすればいい」って伝えられているなら、今日はそのまま何も流れが作られなければそのままでいいし、翌日こういう流れになるなら翌日から出ればいい、そうじゃないか?
-
サンドラ
そうですね、そこはクリスの言う通りだと思います…。なら、どういう仮定で話を進めましょうか。
-
ショーン
私はクリスの言う説でいいと思う。狂人は自分が狂人である事を知っていて、かつ、声から助言をもらって、占い師で出ろと言われた、そう考えたい。その方がのちのち占い師の結果からボロが出るかもしれんしな。
-
フェイ
僕もその説でいいと思う。なので今出ている占い師のどちらかは狂人が出てきていると、考えてる。
-
クリス
決まりだな。なら占い結果を出そう。いいな、スーザン、同時にだ。
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スーザン
合図はどうするの?
-
クリス
コイントスにしよう。今から俺が1枚のコインを上にはじく。コインが地面に落ちたと同時に結果を言う、これでどうだ?
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クリスの提案に一同は賛成し、クリスはコインをはじいた。数秒後、コインは床にたたきつけられ、小さな音を鳴らした。と、同時に二人の声が屋敷に響いた。
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