shot.2 I am The HERO!
戦闘不能になり、担架で運ばれていくブレイヴの傍でロイは彼の名前を叫びながら、まるでこの世の終わりかのように号泣していた。必死にジョーイさんたちが宥めているが、ロイにはまるで効果が無いようだった。
グルートの方は「カウンター」をするためにわざと受けた掠り傷しか負っていなかったので、ブレイヴのようにポケモンセンターに搬送されるほどの怪我ではなかった。
「あの、ブレイヴっていうひと……大丈夫かなあ。」
「心配要らねぇよ。あの阿呆なら半日ぐらいで目覚ますだろ。」
「だといいけれど……。」
バトルを見慣れておらず不安を募らせるアンヌとは対照的にグルートの反応は淡白なものだった。何処吹く風と言った感じだ。これも経験の差からくるものなのだろうかとぼんやりアンヌが考えていると、突然、視界の隅に見知らぬ紙袋が現れる。
「ほら。」
「え?なあに。」
あまりにも突拍子なく無愛想に突きつけられるものだからアンヌは疑問を浮かべることしかできない。しかしグルートは受け取れと言わんばかりに睨んでくるだけで。仕方なくアンヌは紙袋を受け取り、隙間からこっそり中身を覗いた。
「!、これって……。」
中に入っていたのはブティックでグルートに選んでもらった薄紫のシャツと自分で選んだ滅紫のコルセットスカートだった。けれどそれらは持ち合わせがなく買えなかった物だ。アンヌは益々疑問の色を強めることになる。
「店の出す条件をクリアしたら金を払わなくても商品を手に入れられるんだよ。今回は挑戦者に勝てばOKって話だったんだ。この世はどいつもこいつもバトルが好きだからな。」
大食い対決、麻雀、ゴミ拾い…等々、提示される条件は店や時と場合によって違うらしいのだが、とにかくグルートは金がないときいつもそうやって乗り越えてきたらしい。
ちなみに例のブティックは「ヒーローを倒した、ダークヒーローも買った。」なんてキャッチコピーをつけて特設コーナーまで作り、広場の近くで服を売っていた。グルートとブレイヴの白熱したバトルが良い宣伝になったようで服の売れ行きも好調らしく、むしろ店から謝礼金を貰うほど感謝をされたようだ。
「言ってくれればもっと応援したのに。」
「お嬢様には野蛮すぎるだろ?」
「またそうやってからかうんだから、意地悪。」
アンヌは口を尖らせたが、グルートの言っていることは的を得ていた。バトル中に目を塞いでしまったのは事実だ。だからこそ彼女は余計にもどかしかったのだが。
けれど一方で、さっきまでのあの戦いは自分の為にしてくれていたことなのだと知り、アンヌの心には徐々に嬉しさがこみ上げてきて。微睡みにも似た優しい感覚が彼女を満たした。
「……でも、ありがとう。」
グルートが自分の我が儘を聞いて、服を手に入れてくれたのだ。それはアンヌも素直に嬉しかった。礼を言うと鋭い彼の赤い目が少し柔らかくなった気がした。
彼の微笑みにアンヌは忘れかけていたあの「不思議な」胸の高鳴りを思い出す。咄嗟にグルートから視線を逸らし、洋服を眺める振りをした。何故だか顔が酷く上気していた。
「着替え終わったら、サンヨウレストランに飯でも食いに行くか。」
幸いというべきか、グルートはアンヌの異変には気がつかなかったようで、彼女が返事をするより先に歩き出していた。慌ててその後ろに続き、アンヌは紙袋を落とさないように精一杯の力で大事そうに抱きしめた。
グルートの方は「カウンター」をするためにわざと受けた掠り傷しか負っていなかったので、ブレイヴのようにポケモンセンターに搬送されるほどの怪我ではなかった。
「あの、ブレイヴっていうひと……大丈夫かなあ。」
「心配要らねぇよ。あの阿呆なら半日ぐらいで目覚ますだろ。」
「だといいけれど……。」
バトルを見慣れておらず不安を募らせるアンヌとは対照的にグルートの反応は淡白なものだった。何処吹く風と言った感じだ。これも経験の差からくるものなのだろうかとぼんやりアンヌが考えていると、突然、視界の隅に見知らぬ紙袋が現れる。
「ほら。」
「え?なあに。」
あまりにも突拍子なく無愛想に突きつけられるものだからアンヌは疑問を浮かべることしかできない。しかしグルートは受け取れと言わんばかりに睨んでくるだけで。仕方なくアンヌは紙袋を受け取り、隙間からこっそり中身を覗いた。
「!、これって……。」
中に入っていたのはブティックでグルートに選んでもらった薄紫のシャツと自分で選んだ滅紫のコルセットスカートだった。けれどそれらは持ち合わせがなく買えなかった物だ。アンヌは益々疑問の色を強めることになる。
「店の出す条件をクリアしたら金を払わなくても商品を手に入れられるんだよ。今回は挑戦者に勝てばOKって話だったんだ。この世はどいつもこいつもバトルが好きだからな。」
大食い対決、麻雀、ゴミ拾い…等々、提示される条件は店や時と場合によって違うらしいのだが、とにかくグルートは金がないときいつもそうやって乗り越えてきたらしい。
ちなみに例のブティックは「ヒーローを倒した、ダークヒーローも買った。」なんてキャッチコピーをつけて特設コーナーまで作り、広場の近くで服を売っていた。グルートとブレイヴの白熱したバトルが良い宣伝になったようで服の売れ行きも好調らしく、むしろ店から謝礼金を貰うほど感謝をされたようだ。
「言ってくれればもっと応援したのに。」
「お嬢様には野蛮すぎるだろ?」
「またそうやってからかうんだから、意地悪。」
アンヌは口を尖らせたが、グルートの言っていることは的を得ていた。バトル中に目を塞いでしまったのは事実だ。だからこそ彼女は余計にもどかしかったのだが。
けれど一方で、さっきまでのあの戦いは自分の為にしてくれていたことなのだと知り、アンヌの心には徐々に嬉しさがこみ上げてきて。微睡みにも似た優しい感覚が彼女を満たした。
「……でも、ありがとう。」
グルートが自分の我が儘を聞いて、服を手に入れてくれたのだ。それはアンヌも素直に嬉しかった。礼を言うと鋭い彼の赤い目が少し柔らかくなった気がした。
彼の微笑みにアンヌは忘れかけていたあの「不思議な」胸の高鳴りを思い出す。咄嗟にグルートから視線を逸らし、洋服を眺める振りをした。何故だか顔が酷く上気していた。
「着替え終わったら、サンヨウレストランに飯でも食いに行くか。」
幸いというべきか、グルートはアンヌの異変には気がつかなかったようで、彼女が返事をするより先に歩き出していた。慌ててその後ろに続き、アンヌは紙袋を落とさないように精一杯の力で大事そうに抱きしめた。