shot.17 開幕!PWT!
「さあ始まりました!PWT!――可憐なる少女は勝利の花を咲かせることができるのか!?アンヌ!
対するはカントーから乗り込んできたセンチュリーボーイ!キョウスケ!」
実況するアナウンサーの煽り文句に合わせて会場が湧き起こる。熱狂の渦に巻き込まれアンヌは怖気付く。心の奥でグルートに縋ろうとしている自分に気づき、はっとして意識を取り戻す。
ーーここにはいないけれど、きっとどこかで彼も見てくれている。そう信じながら。
「よォ、お嬢ちゃん。怖いなら帰ってもいいんだぜ?」
アンヌの前に立つトレーナーのキョウスケは挑発的に笑う。売られた喧嘩は買うと言わんばかりに身を乗り出そうとするブレイヴを鎮めて、彼女は気持ちを落ち着かせるようにふっと息を吐いた。
「帰らないわ。戦うって決めたもの。」
「そうかよ、泣きべそかいてもしらねぇぞ。」
彼はブレイヴに負けずとも劣らない、好戦的なトレーナーのようだ。気合い充分のブレイヴには悪いが、彼だと相手の口車に乗ってしまいそうだった。
熟考の末に、アンヌはジェトを見つめる。
「ジェト、お願いできる?」
「……わかった。」
彼女の言葉にジェトは噛み締めるように頷く。案の定、ブレイヴは不服そうだったが側にいたサイルーンが「トリよ!カッコイイわね!」と持ち上げて引き下がってくれた。さすが彼女はひとの心の掴み方を熟知しているようだ。
「ソウシ!頼んだぜ!」
キョウスケに名を呼ばれ、球根の形をしたハンチング帽を目深に被った少年は、横目で彼を見る。
ジャッジがバトル開始の合図を告げる笛を鳴らした。
「レディ…ファイト!」
合図と同時に、先に動き出したのはキョウスケのチームだった。
「ソウシ!タネマシンガンだ!」
彼が技を指示するとソウシが間を置いてから――手に種子の形をしたエネルギー体を作り出し、ジェトに向かって砲撃のように発射する。
次々と体に打ち付ける痛みにジェトは耐えた。
「う……。」
「ジェト!大丈夫?」
「…うん、平気。」
アンヌの声を聞いてジェトは少し安堵の色を見せる。そして頷き、彼女に視線を送った。口許は緩んでいて、怯んではいなさそうだ。
「鬼火よ!」
まずバトルでは相手の能力を下げることが定石だと教本に書いてあったことを、アンヌは実行した。彼女の指示に合わせてジェトは、火の玉をソウシに向かって放つ。彼の周りを火の玉が取り囲み、火傷を負う。
膝をつき、ぐっと歯を食い縛る。フシギソウの彼には炎が堪えるのだろうと会場にいる誰もが思ったが――。
「最初は宿木の種だって言ったじゃないですか!」
(あら……?)
キョウスケの方を睨みながら、声を荒げるソウシ。溜まっていた感情が爆発した、そんな感じだった。
彼とキョウスケの間にじりじりと緊張が張り詰める。
「そーいうのは好きじゃねぇんだよ。バシッとキメんのがクールだろ。」
「そんなのだから…いつも負けるんですよ!」
「な、なんだとぉ!?」
二人が顔を近づけ、じっと互いを威嚇し合う。どうやら戦い方で意見が食い違っているようだ。
宥めるジャッジの声も振り切り、掴みかかる。観客席からも騒めきの声が起こった。
どうしたものかとアンヌは戸惑うが、ジェトの目は戦意を失うことなく、鋭く光っていた。
「隙あり……。」
「じぇ、ジェト!」
アンヌが声をかけた時には彼は動き出していた。素早く、祟り目を繰り出してソウシに攻撃していた。
直前までアンヌと一緒にバトルの勉強していたことにより、考えている戦略は同じだったようで。ある意味勉強の賜物と言えるのだろうが。
「――あっ、」
祟り目を受けてソウシの体が吹っ飛び、浮いた体はキョウスケにぶつかった。そのまま二人は連なる形でステージの床に体を打ち付けられ、沈んだ。
「だから……言ったのに……。」
火傷の状態で祟り目を食らったソウシは大ダメージを負う。彼は目を回しながら意識を失った。
不意打ちのようでアンヌは気が引けたが、ジャッジは声高らかに彼女のチームの勝利を宣言した。
「ぐ……っ、ち、ちくしょう…。」
救急隊によってポケモンセンターに搬送される相棒を見つめながら、キョウスケは悔しそうに拳を床に叩きつけた。
対するはカントーから乗り込んできたセンチュリーボーイ!キョウスケ!」
実況するアナウンサーの煽り文句に合わせて会場が湧き起こる。熱狂の渦に巻き込まれアンヌは怖気付く。心の奥でグルートに縋ろうとしている自分に気づき、はっとして意識を取り戻す。
ーーここにはいないけれど、きっとどこかで彼も見てくれている。そう信じながら。
「よォ、お嬢ちゃん。怖いなら帰ってもいいんだぜ?」
アンヌの前に立つトレーナーのキョウスケは挑発的に笑う。売られた喧嘩は買うと言わんばかりに身を乗り出そうとするブレイヴを鎮めて、彼女は気持ちを落ち着かせるようにふっと息を吐いた。
「帰らないわ。戦うって決めたもの。」
「そうかよ、泣きべそかいてもしらねぇぞ。」
彼はブレイヴに負けずとも劣らない、好戦的なトレーナーのようだ。気合い充分のブレイヴには悪いが、彼だと相手の口車に乗ってしまいそうだった。
熟考の末に、アンヌはジェトを見つめる。
「ジェト、お願いできる?」
「……わかった。」
彼女の言葉にジェトは噛み締めるように頷く。案の定、ブレイヴは不服そうだったが側にいたサイルーンが「トリよ!カッコイイわね!」と持ち上げて引き下がってくれた。さすが彼女はひとの心の掴み方を熟知しているようだ。
「ソウシ!頼んだぜ!」
キョウスケに名を呼ばれ、球根の形をしたハンチング帽を目深に被った少年は、横目で彼を見る。
ジャッジがバトル開始の合図を告げる笛を鳴らした。
「レディ…ファイト!」
合図と同時に、先に動き出したのはキョウスケのチームだった。
「ソウシ!タネマシンガンだ!」
彼が技を指示するとソウシが間を置いてから――手に種子の形をしたエネルギー体を作り出し、ジェトに向かって砲撃のように発射する。
次々と体に打ち付ける痛みにジェトは耐えた。
「う……。」
「ジェト!大丈夫?」
「…うん、平気。」
アンヌの声を聞いてジェトは少し安堵の色を見せる。そして頷き、彼女に視線を送った。口許は緩んでいて、怯んではいなさそうだ。
「鬼火よ!」
まずバトルでは相手の能力を下げることが定石だと教本に書いてあったことを、アンヌは実行した。彼女の指示に合わせてジェトは、火の玉をソウシに向かって放つ。彼の周りを火の玉が取り囲み、火傷を負う。
膝をつき、ぐっと歯を食い縛る。フシギソウの彼には炎が堪えるのだろうと会場にいる誰もが思ったが――。
「最初は宿木の種だって言ったじゃないですか!」
(あら……?)
キョウスケの方を睨みながら、声を荒げるソウシ。溜まっていた感情が爆発した、そんな感じだった。
彼とキョウスケの間にじりじりと緊張が張り詰める。
「そーいうのは好きじゃねぇんだよ。バシッとキメんのがクールだろ。」
「そんなのだから…いつも負けるんですよ!」
「な、なんだとぉ!?」
二人が顔を近づけ、じっと互いを威嚇し合う。どうやら戦い方で意見が食い違っているようだ。
宥めるジャッジの声も振り切り、掴みかかる。観客席からも騒めきの声が起こった。
どうしたものかとアンヌは戸惑うが、ジェトの目は戦意を失うことなく、鋭く光っていた。
「隙あり……。」
「じぇ、ジェト!」
アンヌが声をかけた時には彼は動き出していた。素早く、祟り目を繰り出してソウシに攻撃していた。
直前までアンヌと一緒にバトルの勉強していたことにより、考えている戦略は同じだったようで。ある意味勉強の賜物と言えるのだろうが。
「――あっ、」
祟り目を受けてソウシの体が吹っ飛び、浮いた体はキョウスケにぶつかった。そのまま二人は連なる形でステージの床に体を打ち付けられ、沈んだ。
「だから……言ったのに……。」
火傷の状態で祟り目を食らったソウシは大ダメージを負う。彼は目を回しながら意識を失った。
不意打ちのようでアンヌは気が引けたが、ジャッジは声高らかに彼女のチームの勝利を宣言した。
「ぐ……っ、ち、ちくしょう…。」
救急隊によってポケモンセンターに搬送される相棒を見つめながら、キョウスケは悔しそうに拳を床に叩きつけた。