shot.15 クイーンズ・タイム
ブレイヴに急かされて、早速アンヌはPWTの受付へと向かう。スタジアムに置いてあったパンフレットの解説を軽く見たところ、PWTは単に勝敗を決めるポケモンバトルではなく、トレーナーの資質も試される場のようだ。故に、バトルを指示するトレーナーがいなければ参加はできないらしい。
「こりゃ戦う前から、勝負決まってたなァ〜!」
野生のポケモンであるバッドにはトレーナーがいない。つまり、彼にはPWTに参加する資格がないということだ。それを知ったブレイヴは余裕たっぷりに口角を歪めて、脳内でディアナとデートをしているイメージを思い浮かべ、調子良く笑い声を上げていた。
浮かれるブレイヴを嗜めつつ、アンヌは受付にいたスタッフに声をかける。
「すみません、PWTに参加したいのですが……エントリーはできますか?」
「はい、ポケモントレーナーの方でしたら誰でも参加できます。まず情報の登録が必要ですので、トレーナーカードのご提示をお願い致します。」
にこやかな女性スタッフの言葉に、アンヌはきょとんと目を丸くさせる。トレーナーカード?という聞き覚えのない単語が出てきて、思わず首を傾げた。聞けばポケモントレーナーなら誰もが持っている証明書のようなものらしいのだが。
「私、持っていないわ!」
「な、なにィッ!?」
余裕綽々だったブレイヴは声を荒げ、焦りの色を見せる。……とはいえ、持っていないのだからどうすることもできず、アンヌは慌てふためくことしかできない。
ブレイヴは受付のカウンターに身を乗り出して、スタッフに詰め寄る。
「おい!それって、今すぐ作れねぇのかよ!」
「可能ですが、未成年の方でしたら保護者の方の同意とサインが必要です。」
「それは……。」
家出同然のアンヌには、保護者の同意を得るなどまず不可能だ。
ブレイヴとの間に気まずい空気が流れ、居心地の悪さに彼女は目を伏せる。ジェトがアンヌの服の裾を掴み、心配そうに見つめていた。
「オイオイ〜!トレーナーカード持ってねェとは、本当にポケモントレーナーかァ!?」
受付でもたつくアンヌ達の状況を見ていたらしい男の声がロビーに響き渡る。振り返るとバッドが冷ややかな眼差しを向け、不敵な笑みを浮かべながら背後に立っていた。
「オマエ……!」
アンヌが罵られたと感じたジェトは、先程彼女が突き飛ばされたのも相まって、強い憎しみをバッドに向ける。呪いを繰り出しそうになったが、彼女に止められ、渋々手を引く。代わりにブレイヴが前に出て、バッドを睨み付ける。
「HA!てめェはそもそもトレーナーすらいねぇだろうが!」
「それがいるんだよなァ〜〜!」
「誰がそンなハッタリ……。」
「ーーわあっ!?」
バッドが脇に抱えていたものを投げつけるように乱雑に離す。が、彼の手から現れたのは物ではなく人間で。解放された彼は、蹌踉めきながら受付のカウンターに手をつく。
「ええと……エントリーしたいんですけど。」
勝手を知っている様子の彼は、トレーナーカードを提示しながら受付のスタッフに声をかける。スタッフは少し驚いたような顔をしていたが、すぐに襟を正して彼に頭を下げる。
「タスク様ですね。エントリーの方、完了致しました。開始時間まで暫くお待ちください。」
「は、はい!ありがとう、ございます……。」
彼は緊張していた様子だったが、スタッフの反応に安堵した様子で頬を緩ませる。……どうやら彼がバッドのトレーナーのようだ。
「戦う前から勝負は決まってたなァ、ブレイヴ?」
「ぐっ……!」
「せいぜいトレーナーカードを持ってるまともなトレーナーを見つけるんだな。まァ、見つかればの話だがなァ?」
会場の近くにいる参加する予定のトレーナーは殆どが既にエントリーを済ませているはずだ。今から代わりのトレーナーを見つけるのは容易ではない。それをわかって、バッドはブレイヴを挑発しているのだ。
エントリーを見届けたバッドは、優越感に満ちた笑い声を響かせながら、その場を後にした。
「こりゃ戦う前から、勝負決まってたなァ〜!」
野生のポケモンであるバッドにはトレーナーがいない。つまり、彼にはPWTに参加する資格がないということだ。それを知ったブレイヴは余裕たっぷりに口角を歪めて、脳内でディアナとデートをしているイメージを思い浮かべ、調子良く笑い声を上げていた。
浮かれるブレイヴを嗜めつつ、アンヌは受付にいたスタッフに声をかける。
「すみません、PWTに参加したいのですが……エントリーはできますか?」
「はい、ポケモントレーナーの方でしたら誰でも参加できます。まず情報の登録が必要ですので、トレーナーカードのご提示をお願い致します。」
にこやかな女性スタッフの言葉に、アンヌはきょとんと目を丸くさせる。トレーナーカード?という聞き覚えのない単語が出てきて、思わず首を傾げた。聞けばポケモントレーナーなら誰もが持っている証明書のようなものらしいのだが。
「私、持っていないわ!」
「な、なにィッ!?」
余裕綽々だったブレイヴは声を荒げ、焦りの色を見せる。……とはいえ、持っていないのだからどうすることもできず、アンヌは慌てふためくことしかできない。
ブレイヴは受付のカウンターに身を乗り出して、スタッフに詰め寄る。
「おい!それって、今すぐ作れねぇのかよ!」
「可能ですが、未成年の方でしたら保護者の方の同意とサインが必要です。」
「それは……。」
家出同然のアンヌには、保護者の同意を得るなどまず不可能だ。
ブレイヴとの間に気まずい空気が流れ、居心地の悪さに彼女は目を伏せる。ジェトがアンヌの服の裾を掴み、心配そうに見つめていた。
「オイオイ〜!トレーナーカード持ってねェとは、本当にポケモントレーナーかァ!?」
受付でもたつくアンヌ達の状況を見ていたらしい男の声がロビーに響き渡る。振り返るとバッドが冷ややかな眼差しを向け、不敵な笑みを浮かべながら背後に立っていた。
「オマエ……!」
アンヌが罵られたと感じたジェトは、先程彼女が突き飛ばされたのも相まって、強い憎しみをバッドに向ける。呪いを繰り出しそうになったが、彼女に止められ、渋々手を引く。代わりにブレイヴが前に出て、バッドを睨み付ける。
「HA!てめェはそもそもトレーナーすらいねぇだろうが!」
「それがいるんだよなァ〜〜!」
「誰がそンなハッタリ……。」
「ーーわあっ!?」
バッドが脇に抱えていたものを投げつけるように乱雑に離す。が、彼の手から現れたのは物ではなく人間で。解放された彼は、蹌踉めきながら受付のカウンターに手をつく。
「ええと……エントリーしたいんですけど。」
勝手を知っている様子の彼は、トレーナーカードを提示しながら受付のスタッフに声をかける。スタッフは少し驚いたような顔をしていたが、すぐに襟を正して彼に頭を下げる。
「タスク様ですね。エントリーの方、完了致しました。開始時間まで暫くお待ちください。」
「は、はい!ありがとう、ございます……。」
彼は緊張していた様子だったが、スタッフの反応に安堵した様子で頬を緩ませる。……どうやら彼がバッドのトレーナーのようだ。
「戦う前から勝負は決まってたなァ、ブレイヴ?」
「ぐっ……!」
「せいぜいトレーナーカードを持ってるまともなトレーナーを見つけるんだな。まァ、見つかればの話だがなァ?」
会場の近くにいる参加する予定のトレーナーは殆どが既にエントリーを済ませているはずだ。今から代わりのトレーナーを見つけるのは容易ではない。それをわかって、バッドはブレイヴを挑発しているのだ。
エントリーを見届けたバッドは、優越感に満ちた笑い声を響かせながら、その場を後にした。