shot.14 決意と謀略
ジョーイから退院の許可が下りて、アンヌ達の旅は再び始まった。…否、追い出されたといった方が適切かもしれないが。
例の如く、怪我が快方に向い、自由に動けるようになったブレイヴは、暴飲暴食は勿論のことポケモンセンター内でヒーローショーやリサイタルを勝手に開き始めるようになり、……その直後に退院が決まったからだ。鬼の形相のジョーイにアンヌは平謝りしっぱなしだったが、当の本人は無自覚で。去り際に入院している子供達に囲まれ、別れを惜しまれていたのが救いだった。
「また来るから楽しみにしてろよォ〜!」
子供の頭をくしゃくしゃに撫でながら、ブレイヴが笑っていた。彼の言葉に子供達は大喜びだ。
……ジョーイの眉がぴくっと反応したのは見なかったことにした。
◇◆◇◆◇
13番道路を進むと、ホドモエの跳ね橋が見えた。その周囲には人だかりができていて、丁度、橋が降りる時間帯だったようだ。アンヌ達も橋が降り切るまでその様子を眺めていた。
朱色の大きな橋は巨大なリザードンの羽のようで、その迫力に誰もが息を呑む。勿論、アンヌもそのひとりで、人一倍好奇心の強いアンヌは幼子のように目を輝かせて、その景色に見入る。
橋が降りた後も記念撮影が絶えず、同伴している家族や友人と感動を共有している様子が見られた。
「早く行こうぜ!オレ様が一番乗りだッ!」
「待って、ブレイヴ!」
アンヌも暫くこの感動に浸っていたかったのだが、猛スピードでブレイヴが橋の方に駆けて行ったので、その姿を見失わないように慌てて後を追う。ジェトもそれに続いて、人々の影を縫うように移動しながら彼女についていく。
「ふふ、みんなはしゃいじゃってカワイイわねぇ〜っ。」
「俺には不憫な新米トレーナーが振り回されてるようにしかみえねぇが。」
ブレイヴがトラブルを起こすたびに謝っているアンヌを思い出して、グルートは呆れた様子で溜息を吐く。
「だからよ。一生懸命な感じがね。応援したくなっちゃう。」
忙しないアンヌ達の様子に、サイルーンは子を見つめる母親のような温かい眼差しを向けていた。
◇◆◇◆◇
跳ね橋の周辺の上空を多数の飛行ポケモンが旋回している様子が見られた。特にスワンナが多く見られ、その姿にアンヌは懐かしさを覚えていた。
「スワンナとコアルヒーの親子は元気かしら。」
育て屋にいたスワンナとその子供の元気なコアルヒーのことを思い出すと自然と頬が緩む。勢いよく啄んできた彼に驚いて腰を抜かしてしまったのが、昨日のことのようだ。
ブレイヴも同じことを考えていたのか、アンヌの言葉にニッと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「元気に決まってるぜ!今頃、広ーい世界を羽ばたいてるに違いねェ!」
その言葉に共感して,アンヌの顔も思わず綻ぶ。根拠はないが、自信満々に断言している彼を見ているとそうなのだろうなと思わされる強い説得力があった。
思い出に浸りながら、暫くアンヌが空を眺めていると、天上からひらひらと何かが舞い落ちてくる。反射的に手を伸ばすと、それは大きな白い羽根だった。
「綺麗……。」
美しい純白の羽根にアンヌは見惚れる。それはまるでファンタジー小説に出てくる天使の羽根のようだった。
「…天が、アンヌを……見守ってくれてる…。」
「え?」
「…だから……。」
いつの間にかアンヌの影から姿を現していたジェトが、彼女の手にある羽根をじっと見つめる。ひとつひとつ、噛み締めるように、言葉を紡いでいた。
「もう、大丈夫…。……災いからアンヌを守ってくれる……から。」
羽根に向けられていたジェトの視線は、アンヌの方を向いていた。どこか心細そうに、眉を下げて、彼は彼女の手を握りしめていた。
ジェトが懸命に励まそうとしてくれているのが伝わってきて、アンヌの顔も綻んだ。
「……ありがとう、ジェト。」
天から幸せをお裾分けしてもらったようで、アンヌは胸に広がる温もりを感じながら、大事そうに羽根を抱える。
微笑む彼女に、ジェトもほっとした様子で小さく頬を緩めた。
「HAHA!お天道様だけじゃァねェぜ!オレ様がいる!つーことは、HAPPYなことしか起きねェってコトだ!」
「阿呆。お前は行く先々でトラブルしか起こしてねぇだろうが。」
「ンだとォ!」
「はいはーい、坊や達喧嘩しないのっ!んもお、いいカンジなんだから、穏やかに過ごしましょっ!」
グルートとブレイヴが喧嘩しそうになるのをサイルーンが軽く諫めて、その場は収まった。
不完全燃焼といわんばかりに、ぶすっとしたふたりの顔がそっくりでアンヌは小さく笑う。きっと口に出したらふたりとも怒ってしまうだろうなと思いながら。
賑やかに流れる時間。できることなら、このままずっと、みんなと外の世界で羽ばたいていたいとーー彼女は願わずにはいられなかった。
例の如く、怪我が快方に向い、自由に動けるようになったブレイヴは、暴飲暴食は勿論のことポケモンセンター内でヒーローショーやリサイタルを勝手に開き始めるようになり、……その直後に退院が決まったからだ。鬼の形相のジョーイにアンヌは平謝りしっぱなしだったが、当の本人は無自覚で。去り際に入院している子供達に囲まれ、別れを惜しまれていたのが救いだった。
「また来るから楽しみにしてろよォ〜!」
子供の頭をくしゃくしゃに撫でながら、ブレイヴが笑っていた。彼の言葉に子供達は大喜びだ。
……ジョーイの眉がぴくっと反応したのは見なかったことにした。
13番道路を進むと、ホドモエの跳ね橋が見えた。その周囲には人だかりができていて、丁度、橋が降りる時間帯だったようだ。アンヌ達も橋が降り切るまでその様子を眺めていた。
朱色の大きな橋は巨大なリザードンの羽のようで、その迫力に誰もが息を呑む。勿論、アンヌもそのひとりで、人一倍好奇心の強いアンヌは幼子のように目を輝かせて、その景色に見入る。
橋が降りた後も記念撮影が絶えず、同伴している家族や友人と感動を共有している様子が見られた。
「早く行こうぜ!オレ様が一番乗りだッ!」
「待って、ブレイヴ!」
アンヌも暫くこの感動に浸っていたかったのだが、猛スピードでブレイヴが橋の方に駆けて行ったので、その姿を見失わないように慌てて後を追う。ジェトもそれに続いて、人々の影を縫うように移動しながら彼女についていく。
「ふふ、みんなはしゃいじゃってカワイイわねぇ〜っ。」
「俺には不憫な新米トレーナーが振り回されてるようにしかみえねぇが。」
ブレイヴがトラブルを起こすたびに謝っているアンヌを思い出して、グルートは呆れた様子で溜息を吐く。
「だからよ。一生懸命な感じがね。応援したくなっちゃう。」
忙しないアンヌ達の様子に、サイルーンは子を見つめる母親のような温かい眼差しを向けていた。
跳ね橋の周辺の上空を多数の飛行ポケモンが旋回している様子が見られた。特にスワンナが多く見られ、その姿にアンヌは懐かしさを覚えていた。
「スワンナとコアルヒーの親子は元気かしら。」
育て屋にいたスワンナとその子供の元気なコアルヒーのことを思い出すと自然と頬が緩む。勢いよく啄んできた彼に驚いて腰を抜かしてしまったのが、昨日のことのようだ。
ブレイヴも同じことを考えていたのか、アンヌの言葉にニッと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「元気に決まってるぜ!今頃、広ーい世界を羽ばたいてるに違いねェ!」
その言葉に共感して,アンヌの顔も思わず綻ぶ。根拠はないが、自信満々に断言している彼を見ているとそうなのだろうなと思わされる強い説得力があった。
思い出に浸りながら、暫くアンヌが空を眺めていると、天上からひらひらと何かが舞い落ちてくる。反射的に手を伸ばすと、それは大きな白い羽根だった。
「綺麗……。」
美しい純白の羽根にアンヌは見惚れる。それはまるでファンタジー小説に出てくる天使の羽根のようだった。
「…天が、アンヌを……見守ってくれてる…。」
「え?」
「…だから……。」
いつの間にかアンヌの影から姿を現していたジェトが、彼女の手にある羽根をじっと見つめる。ひとつひとつ、噛み締めるように、言葉を紡いでいた。
「もう、大丈夫…。……災いからアンヌを守ってくれる……から。」
羽根に向けられていたジェトの視線は、アンヌの方を向いていた。どこか心細そうに、眉を下げて、彼は彼女の手を握りしめていた。
ジェトが懸命に励まそうとしてくれているのが伝わってきて、アンヌの顔も綻んだ。
「……ありがとう、ジェト。」
天から幸せをお裾分けしてもらったようで、アンヌは胸に広がる温もりを感じながら、大事そうに羽根を抱える。
微笑む彼女に、ジェトもほっとした様子で小さく頬を緩めた。
「HAHA!お天道様だけじゃァねェぜ!オレ様がいる!つーことは、HAPPYなことしか起きねェってコトだ!」
「阿呆。お前は行く先々でトラブルしか起こしてねぇだろうが。」
「ンだとォ!」
「はいはーい、坊や達喧嘩しないのっ!んもお、いいカンジなんだから、穏やかに過ごしましょっ!」
グルートとブレイヴが喧嘩しそうになるのをサイルーンが軽く諫めて、その場は収まった。
不完全燃焼といわんばかりに、ぶすっとしたふたりの顔がそっくりでアンヌは小さく笑う。きっと口に出したらふたりとも怒ってしまうだろうなと思いながら。
賑やかに流れる時間。できることなら、このままずっと、みんなと外の世界で羽ばたいていたいとーー彼女は願わずにはいられなかった。