『聖女』降臨〜数奇な運命〜

「聖女様。どうか、村をお救い下さい」
「はい?聖女?私が?何のお話ですか?」

それはそれは深刻な様子で頭を下げてくる村長達に、彼女は疑問符を上げた。

森の中で熊に襲われた村長の息子を、自称『ただの通りすがり』の彼女が助けた。村長の息子曰く「気が付いたら熊がバラバラになっていた」との事だった。幸いかな、村長の息子は熊の爪や牙に傷付けられる事は無かった。せいぜい足を挫いたくらいである。

その挫いた足を、彼女は片手をかざしただけで治してみせた。目の前で起こった奇跡に呆然とする村長の息子に、彼女は丁寧に言った。

「道を見失ってしまい難儀をしております。どうか人里へ案内して頂けないでしょうか。何より、熊の血肉を狙う他の獣も来るはずです。一刻も早く、ここを立ち去った方がよろしいかと」

お礼もしたいから自分の村へ案内すると言い、村長の息子は彼女を村に連れて行く事にした。父親である村長に事情を話した所、まずは食事をご馳走させて欲しいと村長は申し出た。そして村長は息子から聞いたのである。何をしたかはわからないが熊すら斃し、傷を治すという奇跡を彼女は見せたのだと。

急遽、村の主だった男衆を集めて会議が開かれた。結果、不思議な力を持つ彼女は聖女ではないかと話が落ち着いた。村長の奥方と息子の奥方が引き留めていた――とは言っても、「適当な値段で設備が整っているお宿はありませんか?」「換金ができる所はありますか?」など彼女も奥方達に質問をしていたので、引き留めるに大した労苦は無かったのだが――彼女へ、村長を筆頭に男衆は、奥方達も頭を下げた。

「このままでは、村は吸血鬼ヴァンパイアに食い潰されてしまうのです…!」
「吸血鬼?食い潰される?お話を詳しく聞かせて頂けますか?」

彼女が傾聴の姿勢を示してくれたので、村長は話した。
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