綺羅星の行方(enst夢)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
--*--*--*--
結季ちゃんは元男装アイドルだった。
その王子様のような振る舞いは優雅かつ完璧で、最初は誰も女の子だなんて気が付かなかったと思う。
当時、五奇人と同じく燦々と輝いていた数少ない星の一つで、彼女は儚くも純粋だった。
それは後に革命期を経て、夢ノ咲の頂点に立つぼくでさえも魅了されてしまった程。
でも、三年生になる前。ぼくが夢ノ咲を離れると同時期に、彼女も夢ノ咲から姿を消した。
何処へ行ってしまったのだろう。あの綺羅星の輝きに、もう会えないのだろうか。
そう思っていたら、ぼく宛に彼女から連絡が届いたのである。
『入院する事になりました』
ぼくはすぐに病院に向かった。綺羅星の彼女に会いたかったから。
あの輝きを、もう一度見てみたくて。
「こんにちは」
病室を訪れると、彼女は素朴な笑顔で笑った。
そこにあのきらきらとしたアイドルの輝きはなかった。
だけど、それとはまた違った綺麗で仄かな光に、ぼくはまた魅了されてしまう。
彼女は持病を患っていて、昔から通院はしていたらしい。
アイドルをしていた二年間は悪化する事もなかったそうだが、革命期でのストレスにより入院が決まったそうだ。
「どうして、ぼくに連絡をくれたの?」
「……日和くんには、会いたいなって思ってたので」
彼女は恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに言った。
普段の彼女はアイドルなんてものには縁遠いくらいに物静かで、温和だった。
以来、ぼくは彼女の病室を頻繁に立ち寄った。
三年生からは玲明学園に編入した事、そこで思わぬ拾い物をした事、夢ノ咲でサマーライブをした事など。
とにかく彼女にぼくをより知ってもらおうと日常を話し続けた。
彼女はいつも柔和な笑顔でぼくを迎え入れてくれる。
その笑顔を見たくて、また病室を訪れる。
いつの間にか、ぼくは彼女に恋をしているのだと自覚した。
庶民はぼくに魅了されて、恋をする。
そう思ってはいたけれど、まさかぼくの方が恋をするなんてね。
でも、彼女はアイドルの時と輝きは違えど、立派な綺羅星だ。
ぼくはその純粋で崩れてしまいそうな綺羅星を、ずっと傍らで守りたいと思った。