17日後に交際していることがバレるSS。
「――あら、ティナ。今日は随分と機嫌が良さそうね。何か良いことでもあった?」
「ふふ、分かる?」
いつもなら眠たそうに目を擦りながら渋々朝の身支度をしているティナが、今日に限って何故か同室のセリスよりも早起きをしてニコニコしながら鼻唄混じりにプラチナブロンドの髪をブラシで丁寧に梳いている。
二、三度櫛を通しただけで適当に結んでいたポニーテールも、今日はやけに張り切って高い位置で結んでいる。
どう見ても浮かれている様子のティナに、どうしたのかしらとセリスは首を傾げた。
「……ねぇ、セリス」
「なぁに?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
急にもじもじと下を向いて恥ずかしそうに両手を弄り出したティナの事をセリスは不思議そうに見つめる。
「あの。あのね?………恋人が出来たら、みんな何をしてるの…?」
「えっ?コイビト、って…………え、ちょ、…えぇっ?!こ、恋人…??ティナ、貴女まさか…!」
しゅうううぅぅ…、と頭から湯気が出そうな程真っ赤になったティナはもう堪えきれないとばかりに両手で顔を覆ってコクンと小さく頷いた。
「ち…、ちなみに相手は誰なの?」
比較的ティナと仲の良い男性の顔を思い浮かべながら問いかけると、今度は首をふるふると横に大きく振る。
「それは…、言えないの。内緒にするって約束したから」
「内緒?どうして?」
わざわざ関係を秘密にしなければならないということは何か後ろめたい理由があるってこと?
「みんなにバレると風紀が乱れるんだって」
「風紀」
「士気が下がるとも言っていたわ」
「士気」
何だその軍の規律のようなおかしな理由は。
「……何それ。まるでイグニスが言いそうな事ね」
「えっ」
「えっ」
何となく頭に思い浮かんだ男の名前をポロリと溢すと、ティナは益々顔を赤らめて涙目になりながら震え出した。
「……ど、ど、どうして分かったの?!」
「はあ…?!え、本当にイグニスなの?!」
何だってまたそんな相手と、という言葉が思わず口から飛び出そうになってセリスは慌てて両手で自分の口を塞ぐ。
「ど、ど、どうしよう…、内緒なのに……、嫌われたりしたらどうしよう……」
「お、落ち着いてティナ。私誰にも言ったりしないわ。内緒にするから。ね?」
「せ、セリス……」
さっきまでの浮かれ具合が嘘のように青ざめて今にも泣き出しそうなティナの顔を見てセリスは今度こそ本当に驚いた。
――ああ、あの、ティナが。
誰に何を言われても大きく感情を揺らすことの無かった、あのティナが。
たった一人の男に嫌われるのが怖くて泣きそうになるだなんて、そんな日が来るだなんて。
「貴女……本当に彼の事が好きなのね…?」
「………………うん」
幸せそうに小さく微笑むティナを見てセリスは安堵する。
――良かった。
この子にもちゃんと愛せる人が出来て、愛してくれる人が出来て、本当に良かった。
「貴女とイグニスの事がみんなにバレないよう、私も協力するわ。だからもうそんな顔しないで」
「セリス……!ありがとう!」
「ふふ、お礼なんて良いの。……ほら、それよりも。早く朝の支度を終わらせないと、朝ご飯を食べ損ねちゃうわ」
「支度なら大丈夫よ。もうあとこのリボンを髪に結ぶだけだから」
そう言ってティナが取り出したのはいつものピンク色の可愛いリボン――ではなく、見たこともない黒いレースのリボンだった。
「ティナ…、まさかそれを使うつもり?」
「うん。変かな…?」
「いや、変ではないけれど。……もしかして彼とお揃いの色だから黒にするの?」
「え、どうして分かるの?!」
そりゃいつもピンクばかり身に付けていた子が急に黒い色を身に纏っていたら誰だっておかしいと勘繰るだろう。
(この子、本当に内緒にしておく気あるのかしら……?!)
ウキウキしながら黒いレースのリボンを結んでいるティナを見ながら、セリスは小さな溜め息をついた。
《仲間達に交際がバレるまで、残り16日》
「ふふ、分かる?」
いつもなら眠たそうに目を擦りながら渋々朝の身支度をしているティナが、今日に限って何故か同室のセリスよりも早起きをしてニコニコしながら鼻唄混じりにプラチナブロンドの髪をブラシで丁寧に梳いている。
二、三度櫛を通しただけで適当に結んでいたポニーテールも、今日はやけに張り切って高い位置で結んでいる。
どう見ても浮かれている様子のティナに、どうしたのかしらとセリスは首を傾げた。
「……ねぇ、セリス」
「なぁに?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
急にもじもじと下を向いて恥ずかしそうに両手を弄り出したティナの事をセリスは不思議そうに見つめる。
「あの。あのね?………恋人が出来たら、みんな何をしてるの…?」
「えっ?コイビト、って…………え、ちょ、…えぇっ?!こ、恋人…??ティナ、貴女まさか…!」
しゅうううぅぅ…、と頭から湯気が出そうな程真っ赤になったティナはもう堪えきれないとばかりに両手で顔を覆ってコクンと小さく頷いた。
「ち…、ちなみに相手は誰なの?」
比較的ティナと仲の良い男性の顔を思い浮かべながら問いかけると、今度は首をふるふると横に大きく振る。
「それは…、言えないの。内緒にするって約束したから」
「内緒?どうして?」
わざわざ関係を秘密にしなければならないということは何か後ろめたい理由があるってこと?
「みんなにバレると風紀が乱れるんだって」
「風紀」
「士気が下がるとも言っていたわ」
「士気」
何だその軍の規律のようなおかしな理由は。
「……何それ。まるでイグニスが言いそうな事ね」
「えっ」
「えっ」
何となく頭に思い浮かんだ男の名前をポロリと溢すと、ティナは益々顔を赤らめて涙目になりながら震え出した。
「……ど、ど、どうして分かったの?!」
「はあ…?!え、本当にイグニスなの?!」
何だってまたそんな相手と、という言葉が思わず口から飛び出そうになってセリスは慌てて両手で自分の口を塞ぐ。
「ど、ど、どうしよう…、内緒なのに……、嫌われたりしたらどうしよう……」
「お、落ち着いてティナ。私誰にも言ったりしないわ。内緒にするから。ね?」
「せ、セリス……」
さっきまでの浮かれ具合が嘘のように青ざめて今にも泣き出しそうなティナの顔を見てセリスは今度こそ本当に驚いた。
――ああ、あの、ティナが。
誰に何を言われても大きく感情を揺らすことの無かった、あのティナが。
たった一人の男に嫌われるのが怖くて泣きそうになるだなんて、そんな日が来るだなんて。
「貴女……本当に彼の事が好きなのね…?」
「………………うん」
幸せそうに小さく微笑むティナを見てセリスは安堵する。
――良かった。
この子にもちゃんと愛せる人が出来て、愛してくれる人が出来て、本当に良かった。
「貴女とイグニスの事がみんなにバレないよう、私も協力するわ。だからもうそんな顔しないで」
「セリス……!ありがとう!」
「ふふ、お礼なんて良いの。……ほら、それよりも。早く朝の支度を終わらせないと、朝ご飯を食べ損ねちゃうわ」
「支度なら大丈夫よ。もうあとこのリボンを髪に結ぶだけだから」
そう言ってティナが取り出したのはいつものピンク色の可愛いリボン――ではなく、見たこともない黒いレースのリボンだった。
「ティナ…、まさかそれを使うつもり?」
「うん。変かな…?」
「いや、変ではないけれど。……もしかして彼とお揃いの色だから黒にするの?」
「え、どうして分かるの?!」
そりゃいつもピンクばかり身に付けていた子が急に黒い色を身に纏っていたら誰だっておかしいと勘繰るだろう。
(この子、本当に内緒にしておく気あるのかしら……?!)
ウキウキしながら黒いレースのリボンを結んでいるティナを見ながら、セリスは小さな溜め息をついた。
《仲間達に交際がバレるまで、残り16日》