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レン
兄さんおはよう
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カイト
おはよう〜
今朝は冷えるね -
秋も深まり、朝晩は冷え込むようになったこの頃。
今朝起きてリビングに行くと、ニットカーディガンを着込んでいる兄さんが居た。
マグカップで温かそうな飲み物を飲んでいる。 -
レン
だいぶ寒いよね。オレもカーディガン着てこようかな
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カイト
うん、今日お昼も気温上がらないみたいだから着た方がいいかも
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食パンをトースターに入れて、一度自室に戻った。
部屋のタンスからカーディガンを引っ張り出す。
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兄さんとお揃いで買った、色違いのカーディガン。
ニットながら生地に張りがあって、見た目がいい感じに決まるのでこの時期はヘビーローテーション気味になってしまう一着だ。 -
カーディガンに袖を通し、リビングへと戻る。
すると、オレの格好を見た兄さんがなんだか嬉しそうにしていた。 -
カイト
レンくん、こっち
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レン
うん?
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カイト
ハグしていい?
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レン
もちろんいいよ
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兄さんが目を輝かせる。ハグなんていつもしてるのに今日はとびきり嬉しそうだ。
オレも兄さんとのハグは大好きだけれど。 -
カイト
ふふ
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カイト
ありがとうレンくん
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レン
(全力でハグしてくるな…いつもなら力を入れるのもたどたどしいぐらいなのに)
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レン
兄さん、何かいいことでもあった?
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カイト
えっ?ううん、いつも通りだよ
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カイト
ぎゅってしてくれてありがと、またしようね
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レン
うん
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トースターが焼き上がりの音を鳴らした。
カーディガンを着てきたけれどハグをして寒さも忘れる勢いだ。 -
兄さんが「また」と言ったのを明日のことかと思っていたが、あれから一日の間に5回ぐらいは抱擁を交わした。
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カイト
ふふっ
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レン
嬉しそうだね、オレも嬉しいけど
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カイト
うん、いつもより嬉しいかも。でもなんでだろう?
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レン
沢山ハグしてるから……とか?
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カイト
うーん?
それかなぁ -
どうやら兄さん自身も自分が上機嫌な理由を分かっていなかったみたいだ。原因を確かめるようにオレのことを何度か強く抱きしめてきた。
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兄さんと同じように強く抱き返してみると、ニットカーディガンによってもこもことした感触が返ってきた。これはかなり安心感がある。
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カイト
あっ!分かったかも
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レン
オレも何となくわかった。これ着てるからでしょ
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カイト
そう、もこもこでぬいぐるみみたいで抱き心地がいいの
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レン
ぬいぐるみみたいか〜
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カイト
嫌だったらごめんね……?
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レン
そんなことないよ。
せっかくだからこの季節は沢山ハグしようね -
カイト
……!
うんっ -
元々毎年よく着ていた服だったが、今年は一層ヘビーローテーションになりそうだ。
一日の終わりに、型崩れや汚れにならないようにととても丁寧にハンガーへと吊るした。
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