◇ラブレター

2 ヒル魔の苦悩

どれだけ自分を呪っただろう。酔いにまかせて誘った自分を。とうとうあいつと繋がってしまった、もうもとには戻れない。
ただ体だけの関係にとどめなければ。
ムサシには幸せになって欲しいから。
男どうしで歩む人生なんて修羅でしかない。
一人息子がそんなになったら世話になったあの両親はどんなに悲しむか。
何度も泊めてくれた。何度もテーブルを囲んで飯を食わせてくれた。俺の知らない、暖かい空気を味わわせてくれたあの両親はどんなに悲しむか。

苦しい。つらい。でもこの気持ちを封じなければ誰もが不幸になるだけだ。
思い上がるな、と俺は言った。テメーと俺の人生は違う、と。
あれはテメーに言ってたんじゃない、俺が俺に言い聞かせてたんだ。
テメーが好きだ。ムサシ。ムサシ、テメーが好きだ。だけど。ああ、だけどでも。
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