ムサヒルの日SS
3年になって糞ジジイとクラスが別々になった。夏には部活も引退した。けれど放課後にはなんとなく3人で集まる。グラウンドの片隅でプレーの真似事をすることもあった。そうしてなんとなく3人で帰る。なんということもない日常。それを愛していたと気付いたのはずっと後のことだ。目の前には進学、あるいは就職という新しい道。そのことを考えるだけでいっぱいになっていた。
秋の東京大会、そして全国大会。バッツは順調に──と言っては言い過ぎかもしれないが──勝ち進んでいた。無論、欠かさず観戦して声援を送った。
ある試合のあと、いつもの3人そろっての帰り道。別れ際に糞ジジイがそれまで下げていた袋を俺に差し出した。
──これ、お前に
キミドリスポーツのロゴ入りの袋。受け取って中身を見た。
──なんだこれ
PCスタンドだ、と糞ジジイはあっさり言った。折り畳みできるように作った。
──最近、お前姿勢が悪いと思ったんでな。少しでも気をつけろ
木製のPCスタンド。携帯もできる、折り畳み式の。最近なんだか工作室にこもってると思ったら、こんなもの作ってやがったのか。
──……悪ィな
──ムサシは本当にヒル魔のことをよく見てるんだねえ!
感心したような声になぜかカッと頬が熱くなった。余計なこと言うな、糞デブ。
無言で巨体を蹴飛ばして、さっさと歩き出した。ねぐらの──ホテルの方向へ。後ろから二人分の声がする。またね、ヒル魔。また明日な。
前を向いたまま軽く手だけで合図した。クソ、顔が熱い。
「またね、ヒル魔」「また明日な」
そんな言葉、そんな日常。
心から懐かしく思い出す、あの頃。
秋の東京大会、そして全国大会。バッツは順調に──と言っては言い過ぎかもしれないが──勝ち進んでいた。無論、欠かさず観戦して声援を送った。
ある試合のあと、いつもの3人そろっての帰り道。別れ際に糞ジジイがそれまで下げていた袋を俺に差し出した。
──これ、お前に
キミドリスポーツのロゴ入りの袋。受け取って中身を見た。
──なんだこれ
PCスタンドだ、と糞ジジイはあっさり言った。折り畳みできるように作った。
──最近、お前姿勢が悪いと思ったんでな。少しでも気をつけろ
木製のPCスタンド。携帯もできる、折り畳み式の。最近なんだか工作室にこもってると思ったら、こんなもの作ってやがったのか。
──……悪ィな
──ムサシは本当にヒル魔のことをよく見てるんだねえ!
感心したような声になぜかカッと頬が熱くなった。余計なこと言うな、糞デブ。
無言で巨体を蹴飛ばして、さっさと歩き出した。ねぐらの──ホテルの方向へ。後ろから二人分の声がする。またね、ヒル魔。また明日な。
前を向いたまま軽く手だけで合図した。クソ、顔が熱い。
「またね、ヒル魔」「また明日な」
そんな言葉、そんな日常。
心から懐かしく思い出す、あの頃。
【END】
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