◇とこしえに

車を降りて、振り返らずに歩き始めた。
家を出た時と同じようにマフラーをしっかり巻いた。
息が白い。

鍵を開けて部屋に入り、ドアに寄りかかると長い溜息が出た。
指先まで冷たくなっている。

そうだ、明日は朝練があるから俺も早めに休まなきゃならねえ。
パソでスケジュールを確認してから風呂に入った。
TVをつけて暫く観てみたが頭に入ってこない。
珍しく喋りすぎたか。

ムサシは途中から一言も喋らなかった。
膝の上で拳を握りしめて俺の話に耳を傾けていた。
今頃どうしてるか。
どんな思いでいるか。
いや今はそんなことを考えるのは止そう。

布団に潜り込む前に放り出していた携帯を見て気がついた。
LINEが来ていた。

ムサシからだ。

画面を開いてゆっくり見た。

口元が少し綻んだ。



バーカ。
今日はテメーの話は聞かねえっつったぞ俺ァ。
この時間だと別れてまもなくか。
駐車場から送ってきやがったな。
我慢の効かねえヤツだ。

それに相変わらず口下手だ。
もうちょっと上手いこと言えねえのか。

バーーーーーーカ。

スルー一択かと迷ったが、しょうがないから返信してやる。
してやらねえと気が気じゃねえかもしれねえしな。
明日の仕事に支障が出ちゃマズい。怪我でもされたら洒落にならねえ。

短いLINEにこっちも短く送り返した。



さて寝るか。
大きく伸びをすると眠気が来た。

よく眠れそうだ。



俺は横になって目を閉じた。
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