◇とこしえに
こないだデビルバッツのOBとバベルズで飲み会したよな。
盛り上がったな。ありゃいい飲み会だった。
テメー誰彼から声かけられて、チャンポンで偉く飲んでたな。
やたら上機嫌だった。
そこまではいい。深酒しようが潰れようが、テメーのガタイは二人がかりなら運べるからな。
だがな。
覚えてるか糞ジジイ。
テメーが俺に何したか。
飲み過ぎだ、その辺にしとけっつった俺に何したか。
いいじゃねえかたまには、って言うなり俺の腰に手を回して抱き寄せやがった。
肩じゃねえぞ腰にだぞ。
野郎がダチにすることじゃねえぞ。
妙な顔してるな、ちっとは思い出したか。
そう言えばそんなことした気がする、か。
まずかったのか、か。
やっぱりテメーは何も分かっちゃいねえな。
いいか。
ああいうことはもうするな。
この酔っ払い何しやがる、とか何とか言って俺ァ切り抜けたがな。
万が一にでも、俺らの仲がバレたらどうすんだ。
糞チビ共はいい、あいつら鈍いからな。
だが聡いヤツらはどうかな。
糞長男は微妙な顔したし、糞眉毛なんか目を逸らしてたぞ。
もしかしたら勘付かれたかもな。
いや、勘付かれただろう。
俺が咄嗟に気づいたのはこの2人だけだが、他にもいたかもしれねえな。
仕切りも何もない居酒屋だし、俺らの他にも客はいたからな。
何よりあそこはテメーの地元の店だ。
誰かに見られたらどうする気だ。
バレたら何かまずいことでもあるのかって?
ああ、大ありだ。
俺との関係を恥だと思ってるのかって?
誤解すんな、そう怒るなよ。
俺が言いたいのは全然そういうことじゃねえ。
十文字やキッドが口外するとは思えねえ。
だが人の口に戸は立てられねえし、世間は口さがないもんだ。
どんな噂たてられるか分かったもんじゃねえ。
……だから構うとか構わないとかそういう問題じゃねえんだよ。
悪評なんか俺はいい、慣れてるからな。
外野にどう言われようが俺は気にしねえし関係ねえ。
所詮アメフトがちっと出来る程度の学生だ。
だがテメーは違う。
俺とテメーじゃ、背負ってるものが違うんだよ。
……何か言いたげだな。まあ今日は俺の話を聞けよ。
テメーは社会人で、武蔵工バベルズの主将で、極めつけに武蔵工務店の実質店主だ。
みんなテメーを頼りにしてる。
バベルズのメンバーも、親父さんもテメーんとこの従業員もその家族もだ。
それだけじゃねえ、商店街の祭でもありゃあテメーはあちこちから引っ張りだこだ。
皆が皆して武ちゃん、厳ちゃんてテメーを当てにする。
厳ついツラの割には近所のガキにも好かれてるよな。両腕にガキぶら下げて遊んでやってるの見たことあるぞ。
店を切り回してくからには取引先とも上手く渡り合っていかなきゃならねえだろう。
だからこそな。
俺は思ってる。
テメーとテメーの背負ってる看板が泥を被るようなことがあっちゃならねえってな。
泥門時代に白秋と戦 ったときのこと憶えてるか。
右腕いわした俺にテメーが言ったことも憶えてるか。
テメー言ったよな。
二度と怪我はするな、と。
俺が傷つくとこは見たくねえ、と。
あのセリフな。そっくりテメーに返してやるよ。
テメーが傷つくとこは見たくねえんだよ。
俺もな。
もしもテメーを傷つけようって奴が現れたら俺は全力でそいつをブッ潰してやる。
テメーとテメーの背負ってるものが傷つかねえように俺は全力を尽くす。
何故だか分かるか。
……こんなことは滅多に俺は言わねえぞ、でも今日は言わせろ。
ムサシ。
テメーが俺の大事な男だからだよ。
醜聞ぐらいじゃテメー自身はビクともしねえとでもと思ってるか。
それはテメーの思い違いだ。
悪意を浴びせられるたび、後ろ指を指されるたび。
テメーだけじゃない、テメーの背負ってるものも一緒に傷つくんだよ。
俺が恐れてるのはこのことだ。
ムサシ。
もう一度言うぞ。
テメーは俺の大事な男だ。
俺にとっちゃ、テメーと同じくらいテメーを取り巻く環境も大切なんだよ。
テメーの背負ってるもの、テメーの守りたいものは俺の守りたいものでもあるんだよ。
分かったか。
……謝らなくてもいい、そんなことテメーに望んじゃいねえ。
俺ァこの際言うべきことははっきり言っとこうと思っただけだ。
断っとくが今はテメーの話は聞かねえぞ。反論だろうが何だろうがテメーの番はまた今度だ。
こんなとこで言い合いしても不毛だからな。
…………コーヒー冷めちまったな。
体も冷えたし、俺ァもう帰る。いや送らなくていい、歩いて帰る。
テメー明日も早いんだろ、早く帰れ。
気をつけてな。
じゃあな。
盛り上がったな。ありゃいい飲み会だった。
テメー誰彼から声かけられて、チャンポンで偉く飲んでたな。
やたら上機嫌だった。
そこまではいい。深酒しようが潰れようが、テメーのガタイは二人がかりなら運べるからな。
だがな。
覚えてるか糞ジジイ。
テメーが俺に何したか。
飲み過ぎだ、その辺にしとけっつった俺に何したか。
いいじゃねえかたまには、って言うなり俺の腰に手を回して抱き寄せやがった。
肩じゃねえぞ腰にだぞ。
野郎がダチにすることじゃねえぞ。
妙な顔してるな、ちっとは思い出したか。
そう言えばそんなことした気がする、か。
まずかったのか、か。
やっぱりテメーは何も分かっちゃいねえな。
いいか。
ああいうことはもうするな。
この酔っ払い何しやがる、とか何とか言って俺ァ切り抜けたがな。
万が一にでも、俺らの仲がバレたらどうすんだ。
糞チビ共はいい、あいつら鈍いからな。
だが聡いヤツらはどうかな。
糞長男は微妙な顔したし、糞眉毛なんか目を逸らしてたぞ。
もしかしたら勘付かれたかもな。
いや、勘付かれただろう。
俺が咄嗟に気づいたのはこの2人だけだが、他にもいたかもしれねえな。
仕切りも何もない居酒屋だし、俺らの他にも客はいたからな。
何よりあそこはテメーの地元の店だ。
誰かに見られたらどうする気だ。
バレたら何かまずいことでもあるのかって?
ああ、大ありだ。
俺との関係を恥だと思ってるのかって?
誤解すんな、そう怒るなよ。
俺が言いたいのは全然そういうことじゃねえ。
十文字やキッドが口外するとは思えねえ。
だが人の口に戸は立てられねえし、世間は口さがないもんだ。
どんな噂たてられるか分かったもんじゃねえ。
……だから構うとか構わないとかそういう問題じゃねえんだよ。
悪評なんか俺はいい、慣れてるからな。
外野にどう言われようが俺は気にしねえし関係ねえ。
所詮アメフトがちっと出来る程度の学生だ。
だがテメーは違う。
俺とテメーじゃ、背負ってるものが違うんだよ。
……何か言いたげだな。まあ今日は俺の話を聞けよ。
テメーは社会人で、武蔵工バベルズの主将で、極めつけに武蔵工務店の実質店主だ。
みんなテメーを頼りにしてる。
バベルズのメンバーも、親父さんもテメーんとこの従業員もその家族もだ。
それだけじゃねえ、商店街の祭でもありゃあテメーはあちこちから引っ張りだこだ。
皆が皆して武ちゃん、厳ちゃんてテメーを当てにする。
厳ついツラの割には近所のガキにも好かれてるよな。両腕にガキぶら下げて遊んでやってるの見たことあるぞ。
店を切り回してくからには取引先とも上手く渡り合っていかなきゃならねえだろう。
だからこそな。
俺は思ってる。
テメーとテメーの背負ってる看板が泥を被るようなことがあっちゃならねえってな。
泥門時代に白秋と
右腕いわした俺にテメーが言ったことも憶えてるか。
テメー言ったよな。
二度と怪我はするな、と。
俺が傷つくとこは見たくねえ、と。
あのセリフな。そっくりテメーに返してやるよ。
テメーが傷つくとこは見たくねえんだよ。
俺もな。
もしもテメーを傷つけようって奴が現れたら俺は全力でそいつをブッ潰してやる。
テメーとテメーの背負ってるものが傷つかねえように俺は全力を尽くす。
何故だか分かるか。
……こんなことは滅多に俺は言わねえぞ、でも今日は言わせろ。
ムサシ。
テメーが俺の大事な男だからだよ。
醜聞ぐらいじゃテメー自身はビクともしねえとでもと思ってるか。
それはテメーの思い違いだ。
悪意を浴びせられるたび、後ろ指を指されるたび。
テメーだけじゃない、テメーの背負ってるものも一緒に傷つくんだよ。
俺が恐れてるのはこのことだ。
ムサシ。
もう一度言うぞ。
テメーは俺の大事な男だ。
俺にとっちゃ、テメーと同じくらいテメーを取り巻く環境も大切なんだよ。
テメーの背負ってるもの、テメーの守りたいものは俺の守りたいものでもあるんだよ。
分かったか。
……謝らなくてもいい、そんなことテメーに望んじゃいねえ。
俺ァこの際言うべきことははっきり言っとこうと思っただけだ。
断っとくが今はテメーの話は聞かねえぞ。反論だろうが何だろうがテメーの番はまた今度だ。
こんなとこで言い合いしても不毛だからな。
…………コーヒー冷めちまったな。
体も冷えたし、俺ァもう帰る。いや送らなくていい、歩いて帰る。
テメー明日も早いんだろ、早く帰れ。
気をつけてな。
じゃあな。