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近藤
お、帰ったかトシ。
遅かったじゃないか
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土方
ああ近藤さん、ただいま………えっ?
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近藤
晩飯まだだったろう?
用意したから一緒にどうだ -
土方
こんな、時間にか
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近藤
おいおい、また食べない気か?
きちんと栄養をとらないと風邪を引くぞ、トシ -
土方
ああ、わかった。わかったよ
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近藤
そうか、決まりだな!
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土方
……この状況で断れるわけねぇっての
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近藤
さぁ、食べよう。
残り物ばかりですまんが
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土方
何言ってる、これだけありゃ十分だ。沢庵もあるし…
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土方
……??
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近藤
あっ、それは…
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土方
ずいぶん……
ぶ厚い沢庵、だな -
近藤
す、すまん
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土方
なんであんたが謝る………
って、どうしたんだ、その指!!
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近藤
あ、これは……少し、包丁で切ってしまっただけで
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土方
まさかっ、これ全部近藤さんが??
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近藤
あ…ははは、沢庵を切ったらこの様だ。
まったく慣れないことはするもんじゃないなぁ
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土方
馬鹿、何してんだよ
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近藤
はぁ、この時勢で倹約せねばならん時に。
沢庵も貴重な食料なのになぁ……本当にすまん! -
土方
そういうことじゃねぇって
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近藤
トシ?
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土方
俺はっ、こんな事であんたに怪我なんかして欲しくなんかねぇんだ
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土方
大将が剣を握れなくなったりしたら、どうすんだ?
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近藤
ただの掠り傷だよ、心配しすぎだ
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土方
心配じゃねぇ、副長から局長への忠告だ
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近藤
トシ、お前はいつも俺のために動いてくれている。
たまには俺から、その御返しをさせてはくれんか -
土方
御返し?
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近藤
ああ、そうだ。
今宵だけは隊務のことを忘れて、ゆっくり休んで欲しい -
土方
こ、近藤さん
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近藤
と言っても、粗末な膳を用意するくらいしかできなかったな、申し訳ない
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土方
御返しだったら……
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近藤
えっ?
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土方
こっちでいい……んっ
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近藤
………っ!
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土方
……不意打ちすぎたか?
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近藤
あ……いや……
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土方
覚えててくれ。
俺は、近藤勇の夢のために奔走できることが、何より嬉しいんだ -
近藤
トシ……
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土方
それに、こうやって……あんたの温もりを感じて居られる…
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土方
……これほど、幸せな時はねぇ
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