うちの子語り

創作関連の呟きです。
うちの子の妄想ネタをただ投下していく…。
作品にするには足りない、けど自分が面白い感じ。

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  • それは願いにも似たもの

    20200530(土)16:23
     真鬼は仕事が早いから、色々やらせてたらかなり使えるようになってしまってな。

     以前そんなことを菱人が漏らしていたことを華倉は思い出した。
     それも、真鬼本人を目の前にしながら。

     所用で実家である篠宮本家に来た華倉は、真鬼にも一言掛けておこうと事務室に寄った。
     菱人は今しがた出掛けたところである。
     色々仕事を手伝わせている真鬼だが、外回りに連れていくことは滅多にないらしい。
     主に事務処理などを担当している部下も他に数名いるが、その中のひとりが真鬼という現状が未だに不思議だった。

    「今日はひとりか?」

     見積書の作成をしていたらしい、真鬼が「一桁」と何らかのツッコミを呟いてキーを打った。
     その後、視線を華倉に向けて上げる。
     大体俺だけだよ、と華倉は答える。

     魅耶は書類の上では篠宮の人間という扱いではあるが、彼にとって用があるのは華倉にだけ。
     総本山での仕事なら何でも受けるが、魅耶は基本的に本家には関わらないのである。
     年始の挨拶くらいには来るが、何でもない平日、仕事関係で来る華倉にまでくっ付いてくることはまずない。

     そうだったな、と真鬼は頷きながら答える。
     取り敢えず、と少しPCを操作した後、一旦画面を閉じた。

    「魅耶に何か用事あった?」

     そう思って、伝言を受けようかと提案する華倉。
     しかし真鬼は首を横に振り、そういうわけではないが、と続ける。

    「……私も力の安定を図りたい。そのためには出来るだけ魅耶の近くにいた方がいいなと」
    「力の安定……」

     魅耶と真鬼は元々「憑依」に過ぎず、だから現在個々で独立した存在でいられる。
     しかし、一体の鬼神の力を分けた存在に変わりはない。
     今も魅耶には真鬼の力を左右する調整役としての価値がある。

     分離してからの数十年は、そんなに気にしなくても良かった事実だ。
     けれど今は状況が変わった。

    「前回の一件で、まだそれなりに戦えることは分かったが……だから逆に今のままでは負けることも容易に予測が出来る」

     ただ近くにいるだけで、どこまで力を取り戻せるかは分からないけれど、と真鬼は自分の掌を見詰めて告げた。
     前回、と華倉は真鬼の言葉の一部を復唱する。
     まだ最鬼が榎本唯一に憑依していたときの件だ。

    「ねぇ、もしかしてまた、魅耶をあんな危険な目に遭わせるつもり?」

     眉をひそめ、何となく真鬼を睨むようにも見える視線を向けながら、華倉が訊ねた。
     危険な目。
     あの時、魅耶は華倉に何も告げずに、真鬼と一緒に最鬼に立ち向かった。
     華倉に危険が及ぶのが嫌だから、という、魅耶らしい理由で。

     しかし最鬼が思ったよりも力を覚醒させていたせいか、真鬼と魅耶の力が安定し切れていなかったせいか、魅耶は酷い怪我を負った。
     恐らく、華倉が割って入らなければ、死んでいたかも知れない大怪我だった。

     今も残るその時の傷跡を、華倉は見るたびに怖くなる。
     なのに、またそんな危険な方向へ話が進んでいる。

     華倉の視線に、真鬼は暫く沈黙を続けていた。
     危険ではないことは明らかだった。
     その上、下手をすると関わる人間全員が命を落とすことも有り得る、と真鬼は考える。
     だから、被害は「最小限」に留めたい。

    「……華倉、お前は憂巫女本人でもあるから、私がお前に謝るのは話が可笑しい。けれど、その理論で言うなら、魅耶は部外者だ。私が憑依していたに過ぎない、普通の人間だ」

     机の縁(フチ)に浅く腰掛け、真鬼は華倉を見据える。
     華倉が何を言いたいのかくらい、真鬼にも分かっている。
     それでも言わなければならない。

    「だがそれが理由の全てだ。私が最鬼と戦うには、どうしても魅耶が必要になる。出来れば魅耶は無傷で帰したいと考えているが……」
    「最悪の場合は?」

     無傷で、などと、思ってもいないのは、お互い様だったようだ。
     真鬼の言葉を遮って、華倉が端的に訊ねる。
    「最悪の場合」は、どうなる。
     今の華倉に希望を持たせるような物言いをしても無駄だろう、と真鬼は腹を括る。

    「……お前しか残らないだろうな」

     自分を狭い祠に封じた他の鬼神たちを、最鬼は確実に殺しに来る。
     最悪の場合は、真鬼も創鬼も、化け蜘蛛すらも命を落とす。
     そんなことにでもなったら、憂巫女に頼る他、手立てがない――

    「……お前も、創鬼と化け蜘蛛の手は煩わせたくないだろう。だったら、一番確実な最小限の犠牲が、私と魅耶、なんだ」

     明言は避けたかった。
     華倉だってそのくらいは分かっていた。
     だから曖昧なまま、不要な不安のままでやり過ごせたらよかった。

     だけど恐らく、このことは魅耶も承知のことで。
     だからこそ、自分も情報を確実に共有しておかなくてはいけないと、華倉は考えていた。
     それでも言葉となった漠然とした不安は、とても恐ろしいものだった。

    「安心しろ、という前置きも変だが、一つ」

     真鬼が同じトーンで言葉を紡ぐ。
     華倉は黙ったまま真鬼を見詰めた。

    「……魅耶を失いたくないのは、私も同じだ」

     これが慰めになるのかは分からない。
     言ったところで、逆上されても仕方がない、と真鬼は思う。
     それでも伝えておかなければ、とも。

    「私だけが消えることがあっても、魅耶は生かす。それだけは守るつもりだ」

     そうでもしなければ、また四〇〇年前の繰り返しになる。

     真鬼の心の叫びにも聞こえたその約束に、華倉は「当たり前でしょ」と、強く返した。

    ネタメモ

  • 要請

    20200527(水)11:04
    「最鬼が?」

     最鬼の話をしてもさほど動揺を見せない裕が、華倉にとってが意外だった。
     真鬼からの相談を受け、華倉と魅耶は、憂巫女の呪いを解くためのひとりである創鬼――裕にも話を伝えに来た。

     真鬼がだいぶ狼狽えた様子だったせいか、裕も似たように動揺するものだと思っていた華倉。
     しかし裕は至って静かに、そうか、とあっさり受け入れている。
     どういうことなんだろ、と考えている華倉の隣で、不意に鳴り出す携帯の音。
     魅耶が鞄から携帯を取り出し、済みません、と立ち上がる。

    「担当さんからです」

     そう、手短に告げて、魅耶が席を離れた。
     華倉がその魅耶を見送り、ひとつ息を吐いて座り直す。

    「逢坂、作家やってるんだっけ?」

     同じように魅耶を見ていたらしい、裕が顔を華倉に戻しながら訊いた。
     華倉は暫く放っておいたコーヒーをスプーンで再度掻き混ぜつつ、うん、と頷く。

    「携帯電話は要らないって言ってたんだけど、最近担当さんに持つように頼まれたらしくて」

     こんなこと増えたよ、と華倉は笑う。
     以前は魅耶の個人アドレスでメールでのやりとりが中心だったのだが、携帯電話を使い始めたため、こうして華倉の前でやり取りする姿も増えてしまった。

     はは、と世間話のつもりで話していた華倉だが、そっかー、と相槌をうつ裕からのこんな言葉に、小さく驚く。

    「それはちょっと淋しいよなぁ。もうそんな年齢でもないけど」

     一拍、間が空く。
     それから華倉は、そう見えた、と苦笑を浮かべて返した。
     裕は頷いて見せながら、ちょっとね、と答える。

    「うちも似たような時期あったから、何かちょっと思い出したってーか。さすがにもう慣れたけど」

     そう話す裕は、それでも嬉しそうに見えた。
     裕が意識せず零すその笑みに、華倉も安堵を覚える。
     けれど、裕はその流れで、今回の話に絡めた続きを口にする。

    「でも浅海はあんまり快く思ってないんだよ。あいつの気持ちも分かるから嬉しいんだけどね」

     うん、と華倉は改めて、自分たちの頼みが、彼らの負担になっているのかを知る。

     憂巫女の呪いを解くためとは言え、もう全く別の人生を歩んでいる裕と浅海に、これ以上この話を持ち掛けるのは躊躇われた。
     裕は承諾してくれたものの、浅海は最後まで首を縦に振ることを渋った。
     出来れば今でさえ、裕にはもうやめてほしいと考えているだろう。

     そんな浅海の心配を踏みにじるかのような、今回の頼み。
     最鬼の復活を阻止するために、もう一度戦ってくれ、などと。

    「俺は一回榎本に殴られた方がいいのかも知れないな」

     華倉はコーヒーを一口飲み、何ともなしにそう呟く。
     勿論それで許されるわけではないことも重々理解している。
     しかし、それくらいの仕打ちは在っても可笑しくない頼みを持ち掛けているのだ。
     同じように、痛い思いをしても、損はない。

     そんな華倉の呟きを聞いて、ははは、と裕は笑う。
     多分遠慮なく殴るなー、と、あっさり答えた。
     それはそれで怖いな、華倉はその裕の軽い返答に一瞬真顔になる。

    「でも、浅海が心配してるからってだけだったら、まぁ俺は華倉たちに協力すると思う。実際はそうじゃないから、返答を渋ってるわけで」

     くるくる、とアイスコーヒーのストローを回しつつ、裕はやや真面目に続けた。
     裕の娘である李依が、今年大学受験を迎えるのだという。
     そのためのフォローは全力でしたいし、学費のやりくりもある、と裕は伝える。

    「まぁ確かに、俺が関わりある鬼だったってのは覆しようのない事実だろうけど……俺が今生きてるのは、この時代の人間だしな」

     今の「俺」は、こっちが“正解”なんだ。

     裕の言葉は、痛いほど理解出来た。
     だから同時に華倉には、いつまでも「過去」に振り回されて生きなければいけない身の上が、そんな自分が憎たらしくなる。

     一体いつまで、その「過去」の尻ぬぐいをさせられるのか。

    「済みません戻りました」

     はぁ、と盛大な溜め息を零しつつ、魅耶が帰ってきた。
     お帰り、と出迎える華倉は、魅耶の疲れた横顔に気付く。
     また締切早まったの、と訊いた華倉に、魅耶は首を横に振る。

    「……浅岡先生からでした」
    「は?」

     は~~~、と行き場のない怒りにも思える長い溜め息を吐く魅耶。
     浅岡先生が冴山さんのスマホから掛けてきたんです、と説明する魅耶に同情し、華倉は苦笑いを浮かべた。

    「何? お子さんの悪戯とか?」

     事情をよく知らない裕には、そう思えたらしい。
     しかし言ってみればそんな感じかも知れない。
     そうかもなー、と適当に頷く華倉だったが、その隣から魅耶が言葉を被せてくる。

    「ですね。まぁ僕らより年上ですけどね」
    「えっ」

     その一言は裕を動揺させるには充分だった。
    .

    ネタメモ

  • ということは、

    20200526(火)18:51
    (下の続き)
    華倉「魅耶もこの状況が異様だという認識はあるんだね?」
    魅耶「……」


    おっとうっかり。

    「灰界」シリーズ

  • 「お化けー!!!」

    20200525(月)17:04
    ふと思い出したときに書く座敷童子。
    一応3人いるんですけど、どうしても渡琉の趣味でときちゃんが出番多いな。
    好きなんだ…ときみたいなキャラが…。

    ここで描いてる座敷童子たちは妖怪というより幽霊に近いと思うので(曖昧)、天井に正座で座ったまま平行にすーっと移動するのもありだと思うんだけど、天井の中(?)から音もなくするーっと出て来るのもいいと思います。
    って想像しといて何ですか、僕ァこういうホラーがとにかく駄目です無理です…。

    華倉氏が同じタイプなので、多分やられたら毎回叫ぶと思います。
    心臓止まるかも知れないまじで。
    魅耶やんは何故か意に介さず…(平気が過ぎる)

    魅耶「そろそろ慣れてもいいと思うんですが」
    華倉「無理でしょ(蒼白)」
    とかなってる、多分。

    「灰界」シリーズ

  • ひでぇ

    20200520(水)10:22
    浅海「逢坂ってそもそも篠宮のどの辺がいいの?」
    魅耶「話し終えるに三日三晩じゃ足りませんがいいですか?」
    浅海「新手の拷問かよ」


    そっちから訊いたんじゃないか。

    「灰界」シリーズ