引き継いだ理由
「今日終わらせたい分はここまでです」
終わったー、と場を仕切っていた希咲が自分でそう解放感全開の声を上げた。
やっぱ大変だよなぁ……としみじみ同情してしまい、俺は希咲に告げる。
「ありがとう希咲。後輩なのにリーダー役やってくれて。俺で良ければもっと仕事振っていいからね」
「加藤先輩……!」
何か思いが通じたようで、希咲がキラキラした瞳で俺を見てくれた。
俺入ったばかりで勝手も分からないけど、篠宮先輩からの期待も受けてるし、もっと頑張りたいんだよね。
「いまいち何をやるかってのが把握し切れなくて。ほら……瀧崎ですら希咲の指示で動いてるじゃん?」
「おぉーっとまさかの個人攻撃!!」
完全に気を抜いていたらしい瀧崎が、振り向いた俺の声に吃驚して伏せていた頭を上げた。
いきなりやめてよ、と慌てる瀧崎を見て、はい、と頷く希咲。
それでも希咲はちょっと安堵したような表情で続けた。
「でも多分、今の生徒会ってちゃんとシステム化されてるんですよ、少なくとも俺の兄の代よりは。これはやっぱり、篠宮先輩や逢坂先輩たちの賜物だと思います」
俺みたいなのでも役に立つし仕切れますからね、と希咲が照れながら言った。
そうなんだ、と素直に感心する俺。
俺は正直、希咲のお兄さんが生徒会役員だった頃の話は半分くらいしか知らないけど……確か指名制の弊害で、とんでもないヤンキーまでいたとか何とか言ってたな。
希咲のお兄さんが実質独りで回していたという生徒会。
その頃と比較したら、3人もいて、それを年下の子が回しても成立するまでに組織をまとめ上げた。
……あの人、やっぱ凄いんだなぁ。
「何で落ちこぼれだったんだろ」
中学の頃の姿と、ここで見てきた篠宮先輩の姿が、どうにも噛み合わない。
知れば知るほど、全くの別人のようだ。
俺の呟きには、幸い誰も反応しなかった。
俺も無意識だったし、ツッコまれても困っただけだけど。
「これで今週分は片付きました。次回は来週の火曜でいいと思います」
ホワイトボードの予定表を見ながら、希咲がそう次週以降の話をする。