生誕祭
とは思ったけど、全部善意と心配から頂いたものだし、事実僕には喉の乾燥を癒し、且つ防ぐ義務が生じている。
でもこれライブ終わってからも相当の間使えるくらいあるな……特にのど飴。
「何で唐揚げ?」
僕はそう、いそいそとレンジで、冷凍唐揚げの温めを続ける有佐に訊ねた。
有佐は僕を振り向き、脂だよ脂、と答える。
「声優とかもさ、喉痛めて声出ないときがあるんだよ。でもそういうとき唐揚げ食うと復活するんだって」
まぁ科学的根拠はないらしいけど、と最後に付け加えて、はい、とほかほかの唐揚げをテーブルに出した。
根拠ないものに頼れってか、とつい怪訝な目を有佐に向けてしまう。
しかし有佐は特に気にした様子もなく、いいじゃん、と早速箸を持つ。
「フライドポテトとかも同様らしいけど、折角ならタンパク質も摂れる唐揚げでさ、英気養おうよ」
ははは、と有佐は軽く笑って、いただきますと言いながら唐揚げを掴んだ。
今の冷凍食品はすげぇよな、とか感想を溢しつつ。
まぁ、晩ご飯、というよりもはや夜食の時間帯。
まだすぐには寝ないし、唐揚げくらいはセーフかも知れない。
僕も箸を持ち、挨拶をしてから唐揚げを頂く。
「そう言えば司佐って喉弱かったっけね。ガキの頃から」
3つほど唐揚げを食べてから、ふと有佐がそう何ともなしに呟いた。
ああ、と淡白な返答をする。
喉というか、気管支が弱いのである。
喘息とまではいかないけど、風邪はいつも喉から掛かる。
ストレスが溜まると喉に異物感を覚える。
そんな体質ではあった。
最近はそんなに体調を崩すことも減って来てたから、程よく忘れてたけど……そうか、それがここ最近のカラオケ通いで復活したんだ。
「忘れてたよ。つい真剣に発声の練習しちゃってた」
「俺ももうちょっと早く思い出せば良かった。ごめんね」
なんて謝る有佐。
別にそれは、と軽くあしらいつつも、いつものように張り合う気力はなかった。
むしろ、今回はどちらかというと……協力的、な気分だったし。
もうねぇや、と空になった皿を見詰めて、有佐は何やら考えている様子。
まだ食べ足りないんだろう、もう1袋開けるかどうか迷っているらしい。
僕はもう唐揚げはいいかな、と考える一方、言おうかどうか決め兼ねていた言葉を口から放った。
「……お前こそ、人前に出て喋るの好きじゃないくせに、今回MCやるなんて、無茶するから」
えっ、有佐が驚いたように顔を上げて僕を見た。