【パラレル】知らぬが花
「……はー、最高」
「それに尽きるな〜」
ぱたむ、とパンフレットを閉じ、裕がしみじみ感じ入りながら零した。
華倉もまた深く頷いて裕の意見に同意する。
マイナーでも何でも、好きな者から見れば最高の作品なのだ。
2人でこんな場所で見る流れになってしまったため、本当にざっと目を通すだけになってしまった。
家に帰ってじっくり読みたいと華倉が思うくらいだ、裕とてきっと同じことを考えている。
パンフレットをレジ袋にしまいながら、さて、と裕が切り出す。
「……部屋は片付いてる?」
「は??」
てっきり「どっちが持ってるか」と訊かれるだろうと考えていたせいで、華倉はそんなとぼけた声が漏れた。
部屋、と小首を傾げる華倉に、裕はパンフレットを大事そうに両手で抱えて続ける。
「折角買ったんだ、勿論保管にも気を遣うだろ? だったらより部屋が片付いていて、綺麗な場所にこのパンフも置かれるべきだと俺は思っている」
正直持って帰りたいのはやまやまだ、でもそれは華倉も同じだろうと裕は言う。
華倉は素直に頷いて、裕の話を聞いていた。
「恐らくこのパンフは今後幾度と開かれる。開かれる度に傷んでいくけど、だからこそ保管場所くらいはいいところを選びたい。ってことで、部屋綺麗?」
裕にそう問われ、華倉は暫し考える。
基準が分からないのが本音だった。
隼人と比べれば片付いている方だろう。
けれどその他の人の部屋というものがさっぱり分からない。
「逆に坂下んとこは?」