【パラレル】教えた理由


 魅耶本人からすれば、華倉は無関係なのだ。
 あくまで華倉と敵対しているのは真鬼である。
 魅耶の意識が明確な今、彼の瞳に敵意がないのも当然だ。

 ならば、その笑みは何なのだろうか。

 様々な可能性を幾つも脳裏に沸き上がり、勝手に警戒して、華倉はやや固い表情で魅耶を見返す。
 しかし魅耶は相変わらず微笑んだまま。
 これは煽られているのだろうかとも思えてしまうほど、魅耶からは緊張感すら感じ取れない。

「……どうしてでしょうね」

 暫しそんな滑稽な睨み合いが続いたと思ったら、ふと魅耶が口を開いた。
 頬杖を付いてカウンターテーブルに寄り掛かった、楽な姿勢のまま。

 恐らく彼の言葉は本心だった。
 だから尚のこと華倉にも理解が出来ずにいた。

「貴方には伝えておくべきかと、心のどこかでずっと考えていたんです。その理由がはっきりしないので、これ以上の説明は出来ないのですけど」

 それがとても残念です。

 魅耶はそう、最後だけとてもはっきりとした笑みを作った。
 嬉しそうというよりかは肩の荷が1つ下りた、そんな安堵したような笑みを。


2023.10.11
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