【パラレル】教えた理由


「現状の真鬼は、こちらが思っているよりも疲労困憊……もしくは、満身創痍に近いか」

 その可能性は充分に考えられた。

 魅耶からの話は済んだらしい、その後は暫く互いに沈黙していた。
 華倉は受けた話を理解するために。
 魅耶はほぼ冷め切ってしまったハーブティーを、それでもゆっくりと味わうように。

「……、何で」

 それからどれ程経ったのか、2人がそれを気にすることさえ忘れた頃、重たい口を開けて華倉が声を発す。

 魅耶はカラになったティーカップを置き、はい、と返事をする。
 おおよそ華倉からの言葉は見当が付いた。

 何で、そんなこと

「何でそんな大事なことを、わざわざ教えてくれるんですか……?」

 真鬼が聞いているかも知れないのに。
 幾ら魅耶がまだ真鬼に呑まれていないからと言えど、力の差は明らかに真鬼が勝っているのに。

 敵対している華倉に対し、弱点とも捉えられそうな情報をくれるのか。
 そんなことをして万一、華倉が本当に真鬼を討ち取ることにでもなったら、それこそ魅耶にまで危害が及ぶのでは――

 そこまで自分で考えて華倉はハッとなる。
 まさか、まんま「それ」が目的だったのでは、と。
 そして自分はいともたやすく、その罠に嵌まってしまったのではと。

 しかし魅耶は少し愉快そうな緩い笑みを口許に作り、頬杖を付いて華倉を見詰める。
 そこに敵意は感じられなかった。
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