引き継いだ理由
希咲はうまく回してくれてるよなぁ。
「そもそも何でうちの学校、生徒会は指名制なの? 普通選挙みたいのしない?」
気になっていたことを軽くその場に投げてみた。
すると意外にも答えたくれたのは希咲だった。
「兄に聞いた話では、取り敢えず人がいればいいくらいの感覚だったらしいですよ。さほど関心もないだろうし、そんなに時間も手間も掛けられないから適当に選んじゃって、とか」
「まじかよ」
「……うちの学校に民主主義はなかったのか」
いや、まぁ、三流高校だと分かってはいたけど、そこまで適当だったとは。
こういうところから社会のルールをちょっとずつ学ぶのが大事なのでは。
「だとしたら俺は今ここにはいないだろうなぁ」
はっはっは、と何かわざとらしい、乾いた笑いとともに瀧崎は言う。
そうなの、と形だけにも見える俺の相槌に、しかし瀧崎は特に何も続けなかった。
「あ、ホチキスの針がない」
備品の棚を物色していた希咲がそう声を漏らす。
希咲はその他の文具の在庫も確認すると、貰って来まーす、と一旦生徒会室を後にした。
「あんなに自発的に動けて凄いねぇ」
紙類を分け終え、用紙をまとめながら、俺はそう感心しながら言う。
ほんとねぇー、と瀧崎も頷いてはいるけど、その声にあまり感情は籠っていなかった。
違和感は抱いたけど、さほど気にはせず、俺は予定表が書かれているホワイトボードを見に行く。
まだ今月の予定をちゃんと確認してなかった。
「加藤って会長とどういう知り合いだったの?」
「え?」
そんな俺の背中に、瀧崎の質問が飛んで来た。
会長、という単語にすぐに反応出来ず、暫し考えた。
あ、篠宮先輩のことか。
俺が生徒会に加入になったの、篠宮先輩の指名だったからな。
「あー、っと……中学が、同じで……」
正直、浜ノ瀬のことから説明した方がいいのかな、と迷ったんだけど、そこは割愛しても通じるな、と思い直した。
簡単な言い方だけど充分通じるし、嘘ではないし。
「学年違うじゃん。部活が一緒だったとか?」