必要条件
「何か最近、まーた嫌がらせ始まったんだって? 大丈夫なの?」
誰に聞いたのか、華倉がそう魅耶に問い掛ける。
魅耶は一瞬どきりとして顔を強張らせたが、黙ったまま頷いて、まだ大丈夫と答える。
そんな魅耶に華倉は苦笑し、優しくも心強い視線を向ける。
「もう前みたくすぐには助けにいけないから、出来ることならそのまま、大丈夫なままでいてよ」
華倉の言葉に、魅耶は嬉しそうな、気恥ずかしそうな曖昧な表情で曖昧に笑い返す。
そろそろ電車来るからと華倉は走って行ってしまう。
それを見送る魅耶の肩を真鬼の手が、力加減を忘れたまま乱雑に掴んだ。
『何だ今のは!? 今の男は誰だ、どういう間柄だ!?』
「え?! えぇ……と??」
急に血相を変えた真鬼に詰め寄られ、魅耶は驚きに言葉に詰まる。
早く答えろと返答を急かす真鬼は本心から焦っていた。
間違いない。
真鬼が間違えるわけがない。
あの男は。
しかし、何故、「男」が。
あの人は幼馴染みで……、と答える魅耶の頬に微かに朱が差す。
真鬼はそれを確認すると眉根を寄せて簡潔に訊いた。
『……惚れているのか?』
真鬼が言い終わった途端、魅耶の顔は更に赤くなった。
だってそれはと勝手に何やら弁解を始めた魅耶の言葉はしかし、真鬼には届いていなかった。
真鬼はこの時、信じられない条件下に自分が置かれていることを知ったのだ。
間違いない、あの華倉という男は「
400年前、献上されながらも
男として産まれる憂巫女など、真鬼は知らなかった。
憂巫女は必ず女として産まれてくる、そう聞いていた。
しかし実際にそれはいた。
あの匂いも滲み出る霊力も、400年前に経験したもの全てを真鬼は覚えている。
憂巫女と、鬼神。
これは何の因果か。
そこまで考えて、しかしふと思い直す。
魅耶から手を離して真鬼は地面を見詰めた。
因果ではない、恐らくこれは好機だ。
死の際に見たあの光景。
このままにしてはおけないという思い。
悔い、願い、未練。
何だっていい、憂巫女に対する感情に名前など必要ない。
今どうしても掴まねばならないのは。
『あの男が欲しいか』
未だごにょごにょと何か言っていた魅耶が静かになる。
魅耶からの視線が向けられたことを確認し、真鬼は真剣な眼差しで続けた。
『俺の話に乗るというなら、必ずあの男を手に入れてやる……どうだ?』
魅耶は華倉を、真鬼は憂巫女を。
手を伸ばせば必ず届くこの距離で掴まねばならないものは、
2026/05/21
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