終われなかった「始まり」


「あたしが貰おうか。このまま見殺しには出来ないからね」

 老女からの申し出に、娘は本当に驚いた様子で見返していた。
 おろおろする娘に対し老女は動揺一つせず、自分の懐から巾着袋を取り出す。

「済まないねぇ、今手持ちがこれだけで」

 そう言って、幾らか銭が入ったその巾着袋を娘に持たせようとした。
 しかし娘は反射的に悲鳴のような声を上げ、頂けませんと叫んだ。
 赤子はしかと抱いたまま、首を左右に大きく振り、銭を拒む。

「そんなことしたら……私、そん、そんなことは……」

 その声色には恐怖心が滲み出ているようだった。



――貴方が身籠ったのは次の憂巫女うれいみこなる者だ
  産まれたならすぐ我らに引き取らせてほしい


  我らには憂巫女を監視する義務があるからだ


  何故拒む?
  憂巫女は災いの元だ
  存在するだけで妖怪たちを引き寄せる
  貴方たちの命も保証出来ないのだぞ


  いいから、言う通りにしてくれ
  産まれてくるその子を我らに寄越すんだ



  何故だ
  何故庇う?



――憂巫女が男子おのこだなど聞いたことがないぞ、どうなっている?
  何かの間違いか……いや、あの宣託が外れるなど考えられぬ……


  男子の憂巫女など要らぬ
  この赤子はこの場で殺す

  一日も早い次なる転生を、また二〇〇年後に迎えるために




――殺せ、
  殺すのだ

2/4ページ
スキ